EUでは2024年7月から、すべての新車にISA(Intelligent Speed Assistance:インテリジェント・スピード・アシスタンス)の搭載が義務化されています。制限速度を認識し、速度超過をドライバーに知らせる安全装備ですが、ダチアではADASの警告をまとめて変更できる「My Safety」ボタンが非常によく使われています。
BMWにも制限速度を表示するSpeed Limit Info(SLI)があり、仕様によって速度超過時の警告を設定できます。安全のための運転支援が、なぜOFFにしたくなる装備になるのでしょうか。ダチアとBMWを手掛かりに、「支援」と「介入」の境界を考えます。
- ✅️ダチアではADAS設定変更ボタンが頻繁に使われる
- ✅️BMW SLIとEUのISAは制限速度支援の仕組みが異なる
- ✅️運転支援は安全性と過度な介入の両立が重要
日本では馴染みが薄い「ダチア」とはどんな自動車メーカーなのか
ダチアはルーマニアで生まれ、現在はルノーグループに属する自動車ブランドです。日本では正規販売されていないため馴染みは薄いものの、欧州ではサンデロ、ダスター、ジョガー、ビッグスターなどを展開しています。
特徴は、必要な機能を見極めながら価格を抑える「手頃でシンプルなクルマ」という考え方です。2004年以降の販売台数は1,000万台を超え、2025年にはサンデロが欧州販売首位となりました。
価格を重視するダチアにとって、安全規制によって装備や開発コストが増えることは大きな問題になります。
ダチアで最も使われる「ADASをOFFにするボタン」とは?
出典:newsauto.itより
ダチアCEOのカトリン・アット氏は、同社のクルマで最も使われているボタンが、ADASの警告音を止める、いわゆる「マジックボタン」だと話しています。
ダチアの「My Safety」は、安全装備そのものをすべて無効にするスイッチではありません。車種によって異なりますが、速度超過の音声警告、車線逸脱防止、ドライバー注意警告など、設定可能な運転支援機能を「Perso(個人設定)」として登録し、まとめて切り替えられる仕組みです。
通常は始動時に「All on」となり、対象となる支援機能が有効になります。そのため不要と感じる警告があるドライバーにとって、My Safetyは乗るたびに好みの設定へ戻すためのボタンにもなります。
EUで義務化されたISAとは?なぜエンジン始動のたびにONになるのか
ISAは速度を強制的に制限する装置ではない
ISAは、道路標識や車載カメラ、地図データなどから制限速度を把握し、速度を超えた場合にドライバーへ知らせるシステムです。EUでは新型車への適用を経て、2024年7月7日から販売されるすべての新車に搭載が求められています。
名称から速度リミッターのように感じますが、EUの規則ではドライバーがシステムをOFFにすることも、システムが示す速度を超えて走行することも可能です。あくまで運転を補助する装置という位置付けです。
OFFにしても次の始動時には再び作動する
特徴的なのは、ISAをOFFにしても、車両を再始動すると通常の作動状態に戻ることです。警告を必要としないドライバーは、乗車するたびに設定を変更することになります。
ダチアがMy Safetyを用意している背景には、この安全規制と、ドライバーが自分の好みに合わせて運転支援を設定したいという事情があります。
BMW Speed Limit Info(SLI)とは?ISAとの共通点と違い
BMW SLIは現在の制限速度をメーターやHUDに表示する
BMWのSpeed Limit Info(SLI)は、フロントカメラで道路標識を認識し、車載データやナビゲーションの地図情報と組み合わせて、現在の制限速度をメーターパネルやヘッドアップディスプレイに表示する機能です。
モデル、販売地域、OSによって仕様は異なりますが、制限速度を超えた際の視覚・音による警告を備える仕様もあり、iDriveから表示や警告に関する設定を変更できます。
SLIとISAは同じものではない
SLIとISAは、制限速度を認識してドライバーへ知らせる点では共通しています。ただしSLIはBMWが採用する機能名で、ISAはEU法規で定められた速度支援システムの要件です。
BMWのSLIがISAの機能を構成する場合はありますが、「SLI=ISA」ではありません。日本仕様とEU仕様では警告方法や設定条件が異なる場合もあり、同じBMWでもユーザーが受ける印象は変わります。
なぜドライバーは運転支援システムをOFFにしたくなるのか
運転支援システムは事故を減らすために重要な装備です。自動ブレーキ、車線逸脱警告、死角監視など、ドライバーだけでは気づけない危険を補う機能には明確な役割があります。
一方、速度警告は危険そのものを検知する機能とは少し性格が違います。基本的には制限速度を基準に作動するため、わずかな超過でも条件を満たせば警告対象になります。また、標識や地図情報を使う以上、実際の道路状況と表示が一致しない可能性もあります。
問題は安全装備があることではなく、ドライバーが必要性を感じない警告まで繰り返されることです。ダチアでMy Safetyが頻繁に使われているという事実は、運転支援の機能だけでなく、その伝え方や設定方法も重要であることを示しています。
運転支援はどこまで介入すべきなのか?「支援」と「強制」の境界
私がBMWのSpeed Limit Info(SLI)をOFFに、そしてダチアユーザーがADASの警告を変更するボタンを頻繁に使用することは、運転支援そのものが不要という意味ではありません。必要な安全装備であっても、警告や介入の方法によってはドライバーがOFFを選ぶということです。
私は運転支援システムにとって重要なのは、機能を増やすことだけではなく、「必要なときには確実に助け、普段は過度に運転へ介入しない」というバランスだと考えます。
また、過度な運転支援装置の強制的な装備も車両価格の上昇を招き、車の販売台数にも影響が現れています。運転支援装置を否定するつもりはありませんが、ドライバーにとって本当に効果がある装備なのか?という点が見逃されているようにも感じます。このあたりもバランスが必要なのではないでしょうか?
※本記事は、ADASをはじめとする安全運転支援システムそのものを否定するものではありません。自動ブレーキや車線逸脱警告など、事故の防止や被害軽減に役立つ機能は重要な装備です。本記事では、安全装備の必要性を前提としたうえで、警告や介入の方法、ドライバーが任意に設定できる範囲について考えています。
Reference:autocar.co.uk
よくある質問(FAQ)
Q1. BMWのSpeed Limit Info(SLI)とは何ですか?
Speed Limit Info(SLI)は、道路標識や地図データなどから現在の制限速度を認識し、メーターパネルやヘッドアップディスプレイに表示するBMWの運転支援機能です。車種や仕様によっては、制限速度を超えた際に視覚や音で警告する機能も備えています。
Q2. ISAとBMWのSLIは同じ機能ですか?
同じものではありません。SLIはBMWが採用している制限速度表示機能の名称で、ISA(Intelligent Speed Assistance)はEUの法規で定められた速度支援システムです。制限速度を認識してドライバーへ知らせる点では共通しますが、ISAには警告や速度支援に関する要件が定められています。
Q3. ダチアのMy SafetyはADASをすべてOFFにするボタンですか?
My SafetyはADASをすべて無効にするためのボタンではありません。速度超過警告や車線逸脱警告など、設定可能な運転支援機能を「Perso(個人設定)」として保存し、ドライバーが選んだ設定へまとめて切り替えるための機能です。
Q4. EUではISAをOFFにできないのですか?
ISAはドライバーがOFFにすることができます。また、ISAが示す制限速度を超えて走行することも可能です。ただしEUの規則では、車両を再始動するとISAが通常の作動状態へ戻る仕組みが求められています。
Q5. ADASをOFFにすることは安全運転支援システムを否定することになりますか?
ADASの一部をOFFにすることと、安全運転支援システムそのものを否定することは別です。自動ブレーキや車線逸脱警告などには事故防止や被害軽減の役割があります。一方で、警告の頻度や介入方法によってはドライバーが不要と感じる場合があり、機能と使いやすさのバランスも重要になります。




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