BMW Z4(G29)は2026年に生産を終えました。ところが、そのZ4をベースにしたロードスター「Bovensiepen Spider」が、わずか99台限定で登場しています。手掛けるのは、長年BMWとともにALPINAを育ててきたBovensiepen家です。なぜ新型車ではなく、生産終了するZ4を選んだのでしょうか。Spiderの成り立ちを追うと、435PSという数字だけでは見えてこない、Bovensiepenがロードスターに込めた狙いが見えてきます。
- ✅️Z4 G29最終期の99台をBovensiepenが確保
- ✅️435PS化と専用足回りでZ4 M40iを再構築
- ✅️正式なALPINAではないがRoadster Sの系譜を想起
Bovensiepen Spiderは生産終了したBMW Z4 G29から生まれた
Bovensiepen Spiderのベースは既に生産が終了しているBMW Z4(G29)のM40iです。3.0リッター直列6気筒ターボを搭載する後輪駆動の2シーターロードスターを、エンジン、足回り、空力、内装まで独自に仕立て直しています。
最高出力は320kW(435PS)、最大トルクは580Nm。0-100km/h加速は4.2秒、最高速度は標準260km/h、Performance Package装着車では295km/hに達します。世界限定99台で、ドイツでの価格は11万5,500ユーロ。最初の納車は2027年第1四半期末に予定されています。
ALPINA創業家のBovensiepenとは何者なのか
ALPINAとBMWの関係は2025年末を境に大きく変わりました。BMW GroupはALPINAの商標権を取得し、それまでの協力契約は2025年12月31日で終了しています。一方で、Bovensiepen家の会社そのものをBMWが買収したわけではありません。
Bovensiepenはブッフローエを拠点に新たな自動車ブランドとして活動を続け、2025年にはBovensiepen Zagatoを発表。その後05 GTを送り出し、Spiderは3台目のモデルです。つまりSpiderはALPINAブランドの新型車ではなく、ALPINAを築いた一族が新しいブランド名で手掛けるロードスターです。
なぜBovensiepenはBMW Z4 G29を選んだのか
Z4の生産終了前に99台を確保していた
Spiderが興味深いのは、生産終了したZ4を後から集めて改造した車ではないことです。アンドレアス・ボーフェンジーペン氏は、Z4の生産が終了する前の最後の4週間に99台を生産してもらい、Bovensiepen用として確保したと話しています。その99台が1台ずつSpiderへと仕立てられています。
消えつつある2シーターロードスターを残す
自動車が大型化、重量化し、SUVの影響を強く受ける一方、軽量な2シーターロードスターは市場から減り続けています。アンドレアス・ボーフェンジーペン氏は1990年代後半にBMW Z8の開発チームに在籍しており、軽く、反応が良く、運転する楽しさを直接味わえるロードスターへの思いを語っています。Z4が終わるタイミングで99台を確保したことからも、Spiderは消えゆくカテゴリーを残すためのプロジェクトという性格が見えてきます。
Bovensiepen Spiderは「ALPINA Z4 G29」と呼べるのか
初代Z4にはALPINA Roadster Sが存在した
出典:nicole-automobiles.com/2024/02/newsletter04/ より
Z4とALPINAには過去にも接点があります。2003年には初代Z4(E85)をベースにしたBMW ALPINA Roadster Sが登場しました。3.4リッター直列6気筒エンジンを搭載し、ALPINA独自の足回りや内外装を与えられたモデルです。その後のZ4では同様のALPINAモデルは設定されず、G29にも「ALPINA Z4」は存在しませんでした。
G29で実現しなかったALPINA版Z4を思わせる存在
Bovensiepen Spiderは正式なALPINAではありません。しかし、その成り立ちを見ると「もしG29にALPINA版Z4が存在していたら」と考えたくなる要素を持っています。
BMW Z4 M40iをベースに、直列6気筒エンジンの出力を高めるだけでなく、吸排気系、サスペンション、ホイール、空力、内装まで独自に手を加え、ブッフローエで少量生産する。これはBMWをベースにしながら、動力性能と乗り味、そして内外装を総合的に作り込んできたALPINAの車作りと重なる部分があります。
さらに、初代Z4 E85にはALPINA Roadster Sが存在しましたが、その後のZ4ではALPINAモデルは登場しませんでした。G29もALPINAとして販売されることなく生産を終了しています。その最後の99台をBovensiepen家が確保し、独自のロードスターとして仕立てたことを考えると、SpiderはALPINA Z4の後継車ではないものの、約20年途切れていたBovensiepen家とZ4ロードスターの関係を再びつないだモデルと見ることができます。
435PSだけではないBovensiepen Spiderの作り込み
B58は吸排気まで手を入れて435PSへ
Z4 M40iのB58型3.0リッター直列6気筒ターボは、吸気経路の見直しやラムエア用の追加ダクト、吸気サイレンサーの大型化、排気系の最適化によって435PSと580Nmまで高められています。8速ZFオートマチックを組み合わせ、DIN車重は1,585kgです。
足回りとボディも専用に仕立てる
20インチ鍛造ホイールにはMichelin Pilot Sport 4 Sを装着し、ダンパーとリアの補助スプリングも専用設定です。Performance Packageではリアデフの冷却性能を高めるアルミ製カバーとVブレースが追加されます。外装はFrank Stephensonとの共同開発で、フロントスプリッター、フェンダーベント、サイドスカート、リアディフューザー、リアスポイラーを変更。内装にはVernascaレザーやAlcantara、Lavalinaレザーが使われます。
99台のBovensiepen Spiderが意味するもの
BMWはZ4 G29の生産を終えましたが、Bovensiepenはその最後の時期に99台を確保し、別の形でロードスターを残しました。SpiderはZ4の後継車でも、正式なALPINAでもありません。しかし、Z4が持つ直列6気筒、後輪駆動、2シーターという構成を使い、Bovensiepen家が再びロードスターを作るための素材として選んだ車です。
私は、99台という台数以上に「Z4が終わる前に確保してまで作った」という事実にSpiderの意味があると考えます。Bovensiepenが掲げる「Fine Driving」を、消えつつある2シーターロードスターで表現したモデル。それがBovensiepen Spiderです。
Bovensiepen Spider 主要諸元
| 項目 | Bovensiepen Spider |
|---|---|
| ベース車 | BMW Z4 M40i(G29) |
| エンジン | 3.0L 直列6気筒ターボ |
| 最高出力 | 320kW(435PS) |
| 最大トルク | 580Nm |
| トランスミッション | ZF 8速AT |
| 駆動方式 | 後輪駆動 |
| 0-100km/h加速 | 4.2秒 |
| 最高速度 | 260km/h |
| 最高速度(Performance Package) | 295km/h |
| DIN車両重量 | 1,585kg |
| パワーウェイトレシオ | 3.6kg/PS |
| 全長 | 4,334mm |
| 全幅 | 1,864mm |
| 全高 | 1,304mm |
| トランク容量 | 281L |
| 生産台数 | 世界限定99台 |
| ドイツ価格 | 115,500ユーロ |
| 納車開始予定 | 2027年第1四半期末 |
BMW Z4 M40iからカスタマイズされた主な部分
| 部位 | 変更内容 |
|---|---|
| 吸気系 | 吸気経路を低抵抗化し、追加のラムエアダクトを装備 |
| インテーク | 吸気サイレンサーを大型化し、エアフローを最適化 |
| 排気系 | 専用スポーツエキゾースト、4本出しテールパイプ |
| エンジン | 最高出力435PS、最大トルク580Nmへ強化 |
| 冷却系 | 1,000W電動ファンなどで冷却性能を強化 |
| ダンパー | Bovensiepen専用セッティング |
| リアサスペンション | 補助スプリングを延長 |
| ホイール | 20インチ軽量鍛造ホイール |
| フロントタイヤ | Michelin Pilot Sport 4 S 255/35 ZR20 |
| リアタイヤ | Michelin Pilot Sport 4 S 295/30 ZR20 |
| フロント | 専用グロスブラック・スプリッター |
| フロントフェンダー | 大型ホイールアーチベント |
| サイド | 専用サイドスカート |
| リア | 専用ディフューザー、大型リアスポイラー |
| エクステリアデザイン | Frank Stephenson Designと共同開発 |
| ステアリング | Lavalinaレザー仕上げ |
| シート | Vernascaレザー+Alcantara |
Bovensiepen Spiderのオプション・カスタマイズ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Performance Package | 最高速度を295km/hへ引き上げ |
| デフ冷却 | 冷却フィンを大型化したアルミ製リアデフカバー |
| ボディ補強 | アンダーボディにVブレースを追加 |
| 高性能ブレーキ | フロント4ピストン固定キャリパー |
| ブレーキディスク | フロント395mm/リア345mm |
| フルレザー内装 | 自社サドラーによるLavalinaレザー仕上げ |
| ダッシュボード | レザー張りを選択可能 |
| Aピラーなど | Alcantara張りを選択可能 |
| フットウェル/トランク | Alcantara仕上げに変更可能 |
| ヘッドレスト | 個別エンボス加工に対応 |
| 内装刺繍 | オーナー指定のデザインに対応 |
| ボディカラー | 標準5色に加え、希望色への特注塗装も可能 |
Bovensiepen Spiderの標準ボディカラーと台数
| ボディカラー | 標準設定台数 |
|---|---|
| Sapphire Black | 40台 |
| Sanremo Green | 25台 |
| Skyscraper Grey | 20台 |
| Thundernight | 9台 |
| Frozen Grey II | 5台 |
Reference:bovensiepen.com
よくある質問(FAQ)
Q1. Bovensiepen Spiderとはどのような車ですか?
Bovensiepen Spiderは、BMW Z4 M40i(G29)をベースにBovensiepenが開発した2シーターオープンカーです。3.0L直列6気筒ターボを435PS、580Nmまで強化し、専用の吸排気系やサスペンション、エクステリア、内装などが与えられています。世界限定99台で生産されます。
Q2. Bovensiepen Spiderのベース車はBMW Z4 G29ですか?
ベース車はBMW Z4 M40i(G29)です。アンドレアス・ボーフェンジーペンは、Z4の生産終了前の最後の4週間に99台を生産してもらい、Spiderのベース車として確保したと話しています。中古車を改造するのではなく、新車のZ4をベースに1台ずつ仕立てられます。
Q3. なぜBovensiepenは生産終了するBMW Z4 G29を選んだのですか?
Bovensiepenは、大型化や重量化が進む自動車市場で減少している軽量な2シーターロードスターを残すことをSpiderの目的として掲げています。アンドレアス・ボーフェンジーペン自身もBMW Z8の開発に携わった経験があり、運転する楽しさを直接味わえるロードスターへの思いを明らかにしています。
Q4. Bovensiepen SpiderはALPINA Z4 G29なのですか?
Bovensiepen Spiderは正式なALPINAではなく、Bovensiepenブランドの車です。ただし、BMWをベースにエンジン、シャシー、空力、内装まで独自に作り込み、ブッフローエで少量生産する手法にはALPINAとの共通点があります。初代Z4 E85にはALPINA Roadster Sが存在しており、Bovensiepen家とZ4のロードスターという組み合わせが約20年ぶりに復活した形になります。
Q5. Bovensiepen Spiderの価格と生産台数は?
Bovensiepen Spiderは世界限定99台で、ドイツでの価格は11万5,500ユーロです。最高出力435PS、最大トルク580Nm、0-100km/h加速4.2秒、最高速度260km/hを実現し、Performance Package装着車では最高速度が295km/hに引き上げられます。最初の納車は2027年第1四半期末の予定です。









コメント