近年、電気自動車(EV)は高価な選択肢とされてきましたが、BMWはEVの価格を大幅に引き下げる新技術を導入し、市場の常識を変えようとしています。
BMWが発表した最新のEVプラットフォームでは、バッテリーやモーターの製造コストを削減し、内燃機関車(ICE)と価格差のないEVを実現することを目標にしています。
本記事では、BMWのEVがどのように安くなるのか、その理由を5つのポイントに分けて詳しく解説します。
バッテリー技術の進化や生産コスト削減の取り組みを通じて、EV市場がどのように変化していくのかを見ていきましょう。
- BMWのEVが安くなる理由5つ:バッテリーやモーターのコスト削減でEV価格が下がる。
- 2025年から価格差が縮小:次世代iX3でEVとガソリン車の価格が近づく。
- EVの価格革命が始まる:BMWの新技術でEVがより手頃な価格に。
理由① バッテリーのコストが最大50%削減
BMWは「Gen6」バッテリーを採用することで、従来の方式よりも生産コストを最大50%削減できると発表しました。
このコスト削減は、新しいバッテリーセルの採用と効率的な製造プロセスによって実現されています。
① 高密度の円筒セルを採用
新型バッテリーは、ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)系の円筒型セルを使用しています。
これにより、エネルギー密度が20%向上し、同じサイズでより多くの電力を蓄えられるようになりました。
従来の角型セルと比べ、より効率的な充電と軽量化が可能になります。
② 「セル・トゥ・パック(CTP)」技術によるコスト削減
BMWは従来のモジュール式バッテリーを廃止し、バッテリーセルを直接パック化する「セル・トゥ・パック(CTP)」技術を導入しました。
これにより、以下のメリットが得られます。
- 製造コスト削減:組み立て工程が減り、製造コストが大幅に低下。
- 軽量化:無駄な構造を排除し、車両全体の重量を削減。
- 高密度化:バッテリーの搭載効率が向上し、航続距離の延長に貢献。
③ 航続距離の向上と価格低下への期待
新バッテリー技術の導入により、航続距離は最大30%向上するとBMWは発表しています。
例えば、BMW iX xDrive60の426マイル(約685km)が、新技術を採用すると約555マイル(約893km)に伸びる可能性があります。
また、バッテリーコストの50%削減がEVの価格低下に直結すると見られており、BMWのEVが今後より手頃な価格で提供される可能性が高まっています。
理由② モーターの新技術で製造コストを20%削減
BMWはEVのコストを下げるため、「電磁誘導同期モーター(EESM)」と「非同期モーター(ASM)」の2種類を採用しました。
この新技術により、モーターの製造コストが20%削減、重量も10%軽量化され、EVの価格引き下げに貢献します。
① 製造コストの削減と軽量化
新モーターは部品点数が減り、組み立ての効率化によって製造コストが20%削減されました。
また、モーターの重量も10%軽量化され、車両全体の効率が向上します。
② エネルギー効率が40%向上
BMWの新型モーターはエネルギー効率が40%向上しており、より少ない電力で高い出力を発揮できます。
これによりバッテリー消費を抑え、大容量バッテリーが不要になるためコスト削減につながります。
③ Mモデルにも採用可能
BMW M部門と共同開発されたモーターは、後輪にEESM、前輪にASMを配置し、最大4モーターのAWD(全輪駆動)も可能です。
これにより、EVの走行性能を向上させつつ、コストを抑えた高性能モデルの展開が期待されます。
結果として、モーター技術の進化がEVの低価格化を後押しし、BMWはより手頃な価格のEVを提供できるようになります。
理由③ 車体設計の見直しでコストダウン
BMWは「一体型バッテリーパック」設計を採用し、車体構造を最適化することでEVの製造コストを削減しています。
従来のEVと異なり、バッテリーを車体の一部として組み込むことで、生産効率を高め、部品コストを削減しました。
① 部品点数を削減し、コスト低減
従来のバッテリーは専用のケースやフレームに収納されていましたが、新設計ではバッテリーが車体構造の一部として機能します。
この変更により、不要な部品が削減され、生産コストが引き下げられます。
② 室内空間の拡大と低重心化
バッテリーの位置を最適化したことで、室内空間が広くなり、車内の快適性が向上しました。
また、バッテリーがシャシーの一部となることで、車体剛性が向上し、低重心化による安定した走行性能も実現しています。
③ 軽量で安価なEVへ進化
一体型バッテリーパックの導入により、BMWのEVは「軽くて安いEV」へと進化します。
製造コストの削減に加え、車体剛性の向上と軽量化によって、価格を抑えつつ高性能なEVを提供できるようになります。
次章では、BMWがさらに価格を下げるために進める「内製化」の取り組み」について詳しく解説します。
理由④ 内製化によるコスト削減
BMWはEVの価格を引き下げるために、バッテリーとモーターの生産を内製化し、外部調達コストの削減を進めています。
これにより、競争力のある価格でEVを提供できるようになります。
① 5つの工場でバッテリーとモーターを内製化
BMWは、ヨーロッパ、アメリカ、中国を含む5つの拠点でバッテリーとモーターの生産を行う体制を構築しました。
これにより、サプライヤーへの依存を減らし、コストの最適化を実現しています。
② 価格競争力の強化
テスラやBYDなど、中国メーカーが価格競争を激化させる中、BMWは内製化によって競争力を向上させます。
自社工場での生産によって、EV価格をより手頃な水準に抑えることが可能になります。
③ サプライチェーンのリスク回避
原材料価格の変動や、地政学的リスクに対応するため、BMWは生産拠点を分散させています。
特定の地域に依存しない体制を整えることで、供給の安定性を確保し、コスト増加のリスクを抑えています。
BMWの内製化戦略により、EVの価格低下がさらに加速すると期待されています。
理由⑤ EVとガソリン車の価格差が縮小
BMWは、EVの価格をより多くのユーザーが手に取りやすいものにするため、「EVと内燃機関車(ICE)の価格差をなくす」という目標を掲げています。
バッテリーやモーターのコスト削減が進むことで、EVとガソリン車の価格が近づいていくと見られています。
① バッテリーとモーターのコスト低下が鍵
新しい「Gen6」バッテリーの導入で、生産コストが最大50%削減され、モーターの新技術によって製造コストも20%低減されます。
これにより、EVの販売価格も引き下げられる可能性が高まります。
② BMW iX3 NA5が価格低下の第一歩
BMWは2025年に発売予定の次世代BMW iX3 NA5から、新プラットフォームを採用します。
この新型EVは、価格競争力を高めるための試金石となるモデルであり、EVの普及を促進する役割を担います。
③ 今後の価格発表に注目
現時点では、具体的な価格設定は発表されていませんが、EVとガソリン車の価格差が縮まることは確実です。
BMWが目指す「EVとICEの価格差ゼロ」が実現すれば、EV市場は大きく変化するでしょう。
今後の価格動向に注目が集まっています。
まとめ:ポイントはモーターとバッテリー
BMWは、EVの価格を大幅に引き下げるための新技術と戦略を導入しています。
本記事では、BMWがEVのコストを抑える5つの理由を解説しました。
特に重要なのが、「バッテリーコスト50%削減」と「モーターコスト20%削減」です。
新型「Gen6」バッテリーの採用や、一体型バッテリーパック設計により、生産コストを大幅に削減しながら航続距離を向上させることが可能になります。
また、モーター技術の進化によって、エネルギー効率が向上し、大容量バッテリーが不要になることで、さらなるコストダウンが実現します。
2025年から登場する次世代BMW iX3 NA5を皮切りに、EVとガソリン車の価格差が縮小する見込みです。
これにより、「EVは高価」という常識が覆る可能性があります。
しかし、BMWがどこまで価格を下げるのかは今後の市場動向次第です。
「BMWのEVは本当に安くなるのか?」今後の正式な価格発表に注目が集まっています。
Reference:autocar.co.uk
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