MINIが再び“ジャイアントキラー”として名乗りを上げようとしている。話題の中心は、ドイツの名門ラリーチーム「X-Raid」との共同開発による新型オフロードモデル「Countryman U25」。MINIのラリー史を語る上で欠かせないダカールラリー、その舞台で勝利を重ねてきたX-Raidが、今度は市販モデルの開発に本格参入。
2026年にも登場が噂されるこの新型モデルは、単なるデザイン重視のSUVではなく、本気のオフロード走破性を持った“走れるMINI”。果たして、かつてのモンテカルロの栄光を現代に再現することができるのだろうか。
- MINI初の本格オフローダーが登場予定!:X-Raidとdelta4x4が開発した「U25」は、50mmリフトアップと専用シャーシで高い走破性を実現。
- 市販化の鍵はユーザー需要:TÜV認証済みで公道走行可能。反響次第で限定生産の可能性もあり注目を集めています。
- 純正パッケージとは別次元の性能:2026年登場の純正装備とは異なり、U25はハードな悪路を想定した本格仕様です。
MINIと“ジャイアントキラー”伝説:モンテカルロの栄光
MINIの名を世界に知らしめた瞬間、それは1964年のモンテカルロラリーだった。小型車であるにも関わらず、当時のモータースポーツ界では格上とされていたジャガーやポルシェといった大排気量車を相手に、MINI Cooper Sは見事な勝利を収めた。その後も1965年、1967年と連覇を果たし、「ジャイアントキラー(大物喰い)」の異名を取る存在となる。
この成功は、単なるレースの勝利にとどまらず、MINIというブランドが持つ“軽量・機動力・独自性”を象徴する出来事だった。特にジョン・クーパーによってチューニングされたエンジンと、卓越したハンドリング性能は、コンパクトカーの可能性を世界に示すものだった。
以降、MINIは“挑戦する小さな車”というアイデンティティを築き上げ、現代に至るまで受け継がれている。新たに登場が予告されているX-Raid Countryman U25もまた、その遺伝子を正統に継ぐ存在といえるだろう。
X-Raidとは何者か?ダカール常勝チームの実力
X-Raid(エックスレイド)は、ダカールラリーをはじめとするクロスカントリーラリーで数々の勝利を収めてきた、ドイツを拠点とする名門レーシングチームだ。創設者はSven Quandt(スヴェン・クアント)氏で、BMWグループとも関係の深い名門一族の一員でもある。
2002年にX-Raidを立ち上げて以来、BMWおよびMINIとパートナーシップを築き、2012年から2015年にはMINI ALL4 Racingでダカールラリー4連覇を達成。2020年にはJohn Cooper Works Buggyで再び優勝を飾っている。
彼らが注目される最大の理由は、“限界状況での信頼性と対応力”にある。一般的なラリーチームが1勝を夢見る中で、X-Raidは複数年にわたり表彰台の常連となってきた。
その技術と経験が、今度は市販モデルであるCountryman U25の開発に活かされるとなれば、自動車業界だけでなく、アウトドア志向のユーザー層からも注目を集めるのは必然だ。MINIとX-Raidという“異色の名門”が手を組んだこのプロジェクトは、過去と未来をつなぐ象徴となる可能性を秘めている。
X-Raid Countryman U25の全貌:仕様と設計哲学
X-Raid Countryman U25は、従来のMINIカントリーマンの概念を大きく覆す、真のオフロードマシンとして開発されています。その核となるのが、車高を50mmリフトアップし、左右それぞれ10mmずつトレッド幅を広げた専用のラリーシャシーです。これにより、悪路での最低地上高が飛躍的に向上し、段差や凹凸のある地形でも高い走破性を実現します。
この改造には、オフロードチューニングで世界的に評価されているdelta4x4社のパーツが多数使用されています。ホイールには18×9インチの専用設計「Hanma」アルミホイールを採用し、そこに組み合わされるタイヤは255/55 R18サイズのオールテレーンタイヤです。また、サスペンションもdelta4x4のチューニングが施され、伸縮幅と強度を確保しながら、一般道での快適性も損なわない設計になっています。
外観においても、本格的なオフローダーとしての存在感を放っています。ルーフには大型のラックシステムを搭載し、予備ホイールやシャベル、ジェリ缶、サンドプレートといった過酷な旅に必要な装備を搭載可能です。
フロントには76mm径の頑丈なブルバーを装着し、加えてPIAA製の補助LEDライトをフロントおよびルーフ部に配置。これにより、夜間や悪天候下でも安心して走行できます。見た目の迫力と実用性を両立したこの設計は、まさに“走る冒険道具”と呼ぶにふさわしい一台です。
市販化の可能性:限定生産かフル量産か?
X-Raid Countryman U25の最大の注目点は、そのオフロード性能もさることながら、実際に公道走行が可能なTÜV(ドイツ技術検査協会)認証を受けた車両として設計されている点です。
これにより、ドイツ国内では法的にも完全な「ストリートリーガル」車として使用でき、純正に近い感覚でナンバー取得が可能です。これは単なるコンセプトカーではなく、量産化を視野に入れた“実用的な特装車”としての価値を示しています。
生産については、X-Raidとdelta4x4の協力体制のもと、小規模ながら受注生産に対応可能な体制が整いつつあります。delta4x4は長年にわたりカスタムオフロード車両の製造を行っており、その製造ノウハウと品質管理は高く評価されています。
また、X-Raid側もレースで得た知見を活かした部品供給と組立工程に関与するとされており、信頼性の面でも期待が持てます。
さらに、今回のプロジェクトはファンの声に大きく後押しされている点も特徴です。初期コンセプト発表時にはSNSやフォーラムで高い反響を呼び、限定モデルでも購入したいという声が相次ぎました。
このような状況を踏まえ、需要が一定数を超えた場合には、予約販売やパーツセットとしての展開が具体化する可能性が高いと見られています。つまり、このモデルはユーザーの熱意によって誕生する“共創型プロダクト”とも言えるのです。
MINI公式オフロードパッケージとの違い
MINIは2026年を目途に、U25型カントリーマン向けに純正の「オフロードパッケージ」を導入する予定です。
このパッケージは主に都市部ユーザーを対象にした“ライトオフロード志向”の内容で、サスペンションの小規模リフトアップや225/55 R18サイズのオールテレーンタイヤ、専用ホイールなどが装備されると予想されています。
また、外観にも専用のデザインアクセントが追加されることで、アウトドア志向を持ったユーザーにアピールする仕組みとなっています。
これに対し、X-Raid Countryman U25は“本格悪路向け”として設計されており、走破性能・補強パーツ・実地テストのレベルにおいて純正パッケージとは一線を画しています。delta4x4製の強化サスペンション、255幅のワイドタイヤ、ラリー用シャーシの採用など、性能面でも明確な差別化がなされています。
両者は競合関係というよりも、むしろ補完関係にあると言えるでしょう。純正パッケージは日常使いの延長としてアウトドアを楽しみたい層に向けて、R25はハードな使用を想定した冒険志向の強い層に応えるモデルです。ユーザーのニーズに応じた多様な選択肢を提供することで、MINIブランド全体の価値が高まっているのです。
ライバル比較:ジムニー

オフロード市場で人気の高いスズキ・ジムニーと比較すると、MINI Countryman U25は明確な個性と異なる立ち位置を確立しています。ジムニーは本格的なラダーフレーム構造とコンパクトな取り回しで知られています。しかし、デザイン性や日常性とのバランスには限界があります。
一方でU25は、MINIブランドが持つデザイン性や上質さ、遊び心を失うことなく、本格的なオフロード性能を融合させている点が最大の特長です。
delta4x4とX-Raidによる本格装備を備えながらも、MINIらしいカスタム性やライフスタイル志向を保っている点が、多くのユーザーに刺さる理由と言えるでしょう。
このように、U25は単なるSUVではなく、“コンパクト高性能SUV”という新しい価値を提案するモデルです。
ジムニーほどの極端さもなく、XVのような万人向けでもない絶妙なポジションは、個性と実用性の両立を求める新しい購買層にとって非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
日本市場への導入はあるのか?課題と可能性
X-Raid Countryman U25のような本格カスタムSUVが日本で販売される場合、最大の課題となるのが保安基準への適合です。特に車幅の拡大やサスペンションリフト、ブルバーの装着といった改造は、日本の道路運送車両法における厳しい制限に直面します。
しかし、TÜV認証を取得している点は大きな強みであり、適切な申請と調整によって、日本でも合法的に登録できる可能性は十分にあります。
インポーターにとっても、このモデルは新しい市場への扉を開くチャンスです。アウトドア志向やカスタム文化が盛んな日本では、個性あるオフロードモデルへの需要が確実に存在します。
近年は軽キャンパーやリフトアップ車両の人気も高まっており、MINIというブランドがこうした流れに本格的に参入すれば、これまでにない新規顧客層を取り込めるでしょう。
特に都市部在住ながら週末はアウトドアを楽しむ層、カスタムに理解のある若年層やライフスタイル志向の高いユーザーにとって、R25は強く訴求する商品となるはずです。
とは言え、X-Raidとdelta4x4の協力体制のもと、小規模な受注生産体制ということを考えると、日本へ正規インポーターが輸入するよりは、パーツのみ、または車両を並行輸入されるのが現実的ではないでしょうか?
まとめ:U25が切り拓くMINIの未来像
X-Raid Countryman U25は、単なるスペシャルモデルではなく、MINIブランドの再定義とも言える存在です。これまでの都会的・コンパクトなイメージに加え、“本気で走れる”という新たな属性を持ち込むことで、ブランド価値を一段と高めることにつながります。
また、モータースポーツの技術とアウトドアライフスタイルを融合させたこのモデルは、今後のMINIにとって重要な戦略的象徴となるでしょう。時代の変化に対応しながらも、MINIが持つ独自の個性を深化させる鍵、それがR25なのです。
次世代のMINIファン層に向けて、U25は“MINIは小さくても自由に走れる”という原点回帰と未来への進化の両方を体現するモデルとして、強いメッセージを発信しています。
Reference:motoringfile.com
よくある質問(FAQ)
Q1. MINI X-Raid Countryman U25は市販される予定ですか?
A1. 現時点では量産は未定ですが、X-Raidとdelta4x4が受注生産や限定モデルとして販売する可能性を検討しています。需要次第で市販化される可能性が高まるため、公式発表に注目が集まっています。
Q2. MINIの純正オフロードパッケージとU25の違いは何ですか?
A2. 純正パッケージはライトユーザー向けに開発された装備で、小規模な車高リフトやタイヤ強化が中心です。一方、R25はX-Raidとdelta4x4の共同開発による本格的な悪路走破仕様で、専用シャーシやオフロードパーツが多数採用されています。
Q3. U25のような車両は日本でも公道走行できますか?
A3. ドイツでTÜV認証を取得しているため、条件を満たせば日本でも公道走行が可能です。ただし、日本の保安基準に適合するように一部仕様変更や個別認証が必要になる場合があります。
Q4. U25はスズキ・ジムニーと比べてどうですか?
A4. U25は本格オフロード性能とMINIならではのデザイン性・個性を兼ね備えたモデルで、ジムニーとは異なる価値を提供します。都市型ライフスタイルと冒険心を両立させたいユーザーに最適です。
Q5. U25はどのような人におすすめですか?
A5. アウトドアやキャンプが好きで、街乗りでも映えるデザイン性を求める方におすすめです。また、既存のMINIユーザーでよりアクティブな使い方をしたい方や、人とは違う特別なモデルを所有したい方にも適しています。
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