MINIは誕生以来、前輪駆動(FWD)を基本とした設計を貫いてきました。
しかし、BMWの次世代EV技術の導入により、MINIの駆動方式が後輪駆動(RWD)へと移行する可能性が浮上しています。
BMWが開発を進める新世代の電動プラットフォームでは、後輪駆動または四輪駆動(AWD)のみが採用されるため、MINIの電動化戦略にも影響を与えることになりそうです。
本記事では、MINIがなぜ後輪駆動へ移行するのか、その背景にあるBMWの技術革新と戦略を解説します。
さらに、後輪駆動化によるメリット・デメリット、ブランドの将来性についても考察。
MINIのアイデンティティを大きく変えるこの変革は、果たして成功につながるのか。その行方を探ってみます。
- MINIが後輪駆動へ移行:BMWの次世代EV技術導入により、MINIの電動モデルは後輪駆動または四輪駆動へシフトする可能性が高い。
- 運動性能が向上:トルクステアの解消や重量バランスの最適化で、よりスポーティな走行性能を実現。
- ブランドの変化と課題:前輪駆動の利点が失われ、MINIらしさをどう維持するかが今後の焦点。
MINIの駆動方式の変遷と現状
MINIは1959年に初代モデルを発表して以来、一貫して前輪駆動(FWD)を採用してきました。
FWDは、エンジンやモーターを前方に配置することで、車内スペースを有効活用できる点が特徴です。
特にコンパクトカーとしてのMINIにとっては、FWDによる省スペース設計が重要な要素でした。
近年、MINIは電動化を加速させています。
現行の電動MINIには、FAAR(Front Architecture)プラットフォームを使用した前輪駆動のミニクーパー(J01)やエースマン(J05)が存在します。
一方で、SUVモデルであるカントリーマン(U25)には、前輪駆動と四輪駆動(AWD)の両方のバリエーションが用意されています。
しかし、BMWの次世代EV技術の導入により、MINIの駆動方式にも変化が求められています。
特に次世代の電動MINIは、BMWが開発する新しいEVプラットフォームの影響を受けることが確実視されています。
これにより、MINIはこれまでのFWD中心の設計から、後輪駆動(RWD)や四輪駆動(AWD)への転換を迫られる可能性があります。
BMWの次世代EV技術とノイエ・クラッセの影響

BMWは次世代EVの基盤としてNeue Klasse(ノイエ・クラッセ)という新プラットフォームを開発しています。
Neue Klasseは後輪駆動(RWD)または四輪駆動(AWD)のみを採用するという点が大きな特徴です。
この技術の導入により、従来の前輪駆動EVの開発が終了する可能性が高まっています。
BMWがこの方針を採用する理由の一つに、新型の第6世代(Gen6)電動パワートレインがあります。
従来の前輪駆動向けのモーターは、効率や出力面で課題がありました。
しかし、新しいGen6モーターは「電励磁同期(でんれいじどうき)モーター(EESM)」と呼ばれる方式を採用し、高い出力と効率を実現しています。
EESMは後輪に直接配置することを前提とした設計であり、前輪駆動に適した単独モーターの設定はありません。
そのため、BMWのEV戦略では後輪駆動が標準となり、MINIにも影響が及ぶことになります。
また、Neue Klasseは800Vアーキテクチャを採用し、急速充電性能が向上する点も重要です。
これにより、わずか10分間の充電で約300km(186マイル)の航続距離を回復できるとされています。
従来の400Vシステムと比較して、充電時間の短縮や電力損失の低減が期待されます。
この技術革新はMINIの電動化戦略にも影響を及ぼします。
BMWグループはNeue Klasseを幅広い車種に適用する計画であり、次世代の電動MINIもこのプラットフォームを使用する可能性が高いと考えられます。
そのため、MINIは従来の前輪駆動を維持するのではなく、後輪駆動または四輪駆動へと移行する流れが加速しているのです。
BMWがEVにおいて後輪駆動を重視する背景には、「運動性能の向上」「重量バランスの最適化」「トルクステアの解消」といった要素があります。
これらの利点はMINIにも適用される可能性が高く、従来の前輪駆動に比べてよりダイナミックな走行性能を実現することが期待されています。
MINIが後輪駆動に移行する理由
MINIが後輪駆動(RWD)へ移行する最大の理由は、ブランドの方向性と技術的な必然性の両方が後押ししているためです。
MINIは従来、前輪駆動を基本とした設計で「ゴーカートフィーリング」と呼ばれる軽快なハンドリングを特徴としてきました。
しかし、電動化が進む中で、前輪駆動では高出力EVの制御が難しくなるという課題が浮上しています。
前輪駆動のEVでは、高トルクによるトルクステア(加速時のハンドルのブレ)が発生しやすくなります。
特に、高出力化が進む電動車両では、前輪のみで駆動力を制御することが難しく、安定した加速性能を確保するには後輪駆動のほうが有利です。
そのため、BMWグループ全体として、シングルモーター車は後輪駆動、デュアルモーター車は四輪駆動という構成を標準化しつつあります。
さらに、MINIはよりBMWに近いドライビングダイナミクスを持つブランドへと進化しようとしています。
BMWの後輪駆動設計を受け継ぐことで、MINIも走行性能を重視した設計へと移行し、新たなスポーティなキャラクターを確立できる可能性があります。
加えて、後輪駆動化によってBMWのEVプラットフォームをMINIと共有できる点も重要です。
BMWはすでにiX1やiX2をNeue Klasseへ移行する計画を発表しており、次世代のMINI カントリーマン(NB5)もこのプラットフォームを採用することがほぼ確実視されています。
これにより、開発コストの削減や生産の効率化が期待できるため、MINIの後輪駆動化は技術的・経済的に合理的な選択となるのです。
このように、運動性能の向上、トルク制御の最適化、BMWの技術との統合という要素が、MINIを後輪駆動へと移行させる大きな理由となっています。
後輪駆動MINIのメリット・デメリット
メリット
運動性能の向上
後輪駆動は前後の重量バランスが適切に保たれ、旋回時の安定性が向上します。
特にスポーツ走行では、よりBMWに近いダイナミックなハンドリングを実現できる可能性があります。
トルクステアの解消
前輪駆動のEVでは、高出力時にトルクステアが発生しやすくなりますが、後輪駆動ではこの問題が解消されます。
加速時の安定感が増し、特に高性能モデルではその効果が顕著になります。
BMWの技術との統合
BMWのNeue Klasseを採用することで、MINIもBMWの最新EV技術を活用でき、開発コストの削減や効率化が可能になります。
デメリット
コストの上昇
後輪駆動向けの設計は、前輪駆動に比べて部品点数が増え、コストが上昇する傾向があります。
価格設定によっては、エントリーモデルの競争力が低下する可能性があります。
前輪駆動の特徴が失われる
MINIはコンパクトなFWD車としての機動性を活かした設計が特徴でした。
後輪駆動にすることで、このキャラクターが変化し、従来のMINIファンに受け入れられるかは不透明です。
スペース効率の低下
前輪駆動はエンジン(またはモーター)をコンパクトにまとめやすく、室内スペースを確保しやすい利点がありました。
後輪駆動になると、リアアクスル周りのスペースが増え、キャビンや荷室の設計に影響を与える可能性があります。
BMWの技術革新により後輪駆動化が進むMINIですが、従来のブランドアイデンティティとのバランスをどのように取るかが課題となるでしょう。
まとめと今後の展望
MINIの後輪駆動化は、単なる技術的な変化ではなく、ブランドの方向性を大きく変える可能性がある重要な決断です。
BMWの次世代EV技術であるNeue Klasseの採用により、MINIは前輪駆動から後輪駆動へ移行し、これまでとは異なる走行特性を持つモデルへと進化することが予想されます。
後輪駆動化によってトルクステアが解消され、よりダイナミックな走行性能が実現できる一方、従来の前輪駆動の利点であったコストやスペース効率の良さが失われる可能性もあります。
そのため、MINIの新しい駆動方式が既存のファンにどのように受け入れられるのかが今後の課題となるでしょう。
また、MINIがBMWのEV戦略に統合されることで、ブランドの個性が薄れる懸念もあります。
BMWは「MINIらしさ」を維持しつつ、後輪駆動化による新たなドライビング体験をどのように提供するのかが鍵となります。
今後の発表や新型モデルの動向に注目が集まります。
Reference:motoringfile.com
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