2025年9月、ドイツ・ミュンヘンで開催されたIAAモビリティにて、MINIとライフスタイルブランドDeus Ex Machinaの夢のコラボレーションが実現しました。
サーフィン文化とモータースポーツという対極の世界から生まれた2台の特別なジョン・クーパー・ワークスの全貌をお伝えします。
- 電動×ガソリンの対照的コラボ:サーフとレースをテーマにした258馬力電動と231馬力ガソリンモデルの詳細仕様
- 革新的カスタム技術の融合:ファイバーグラス軽量化とレーシング技術によるDeus Ex Machina職人技の結晶
- MINI電動化戦略33%の実現:New MINI Family 4モデル展開と世界初公開コラボの戦略的意義を解説
IAA 2025で注目を集めたMINI×Deus Ex Machinaコラボの背景
2025年9月8日、ドイツ・ミュンヘンで開催された世界最大級のモビリティ展示会「IAAモビリティ2025」において、BMWグループは次世代戦略の発表を行いました。
その中でも特に注目を集めたのが、MINI販売担当取締役のJochen Goller氏が発表したDeus Ex Machinaとの革新的なコラボレーションです。
Goller氏は「MINIは昨年、完全に新しい製品ラインナップの導入により、ゲームチェンジングな瞬間を迎えた」と述べ、現在展開中の「New MINI Family」が4つの魅力的なモデル
- Convertible
- Cooper
- Aceman
- Countryman
で構成されていることを強調しました。
そして、その中核となる発表として、カスタマイゼーションと型破りな発想で知られるDeus Ex Machina(デウス エクス マキナ)とのパートナーシップを明らかにしたのです。
このコラボレーションから誕生した2台のジョン・クーパー・ワークスモデル
- The Skeg(ザ・スケッグ)
- The Machina(ザ・マキナ)
は、それぞれサーフィン文化とモータースポーツという異なる世界観を表現した兄弟車として設計されています。
Goller氏は「個性的なライフスタイルと最大限の運転興奮を体現している」と両車の特徴を説明し、駆動方式に関わらず真のMINIスピリットを追求したと述べています。
Deus Ex Machinaとは?ブランドの特徴と哲学
オーストラリア発の革新的ライフスタイルブランド
Deus Ex Machinaは2006年にオーストラリア・シドニーで誕生したユニークなライフスタイルブランドです。
「神の機械」を意味するこの名前の通り、ブランドは機械と人間の創造性が融合した時に生まれる美しさを追求しています。
創設者のDare Jennings氏は、単なるアパレルブランドではなく、カルチャーそのものを創造することを目指してこのブランドを立ち上げました。
ブランドの中核となるのは「カスタムビルド」の哲学です。
バイク、サーフボード、アパレルなど様々な分野で、既成概念にとらわれない独創的な作品を生み出し続けています。
特にカスタムバイクの分野では、ヴィンテージバイクを現代的にアレンジした作品で世界的な評価を得ており、その技術力と美的センスは業界内でも高く評価されています。
サーフ・バイク・ストリートカルチャーの融合哲学
Deus Ex Machinaが他のブランドと一線を画すのは、サーフィン、モーターサイクル、ストリートアートという3つの異なる文化を自然に融合させている点です。
オーストラリアのビーチカルチャーをベースに、バイカーの職人気質、そしてアーティストの創造性を組み合わせることで、独自のライフスタイルを提案しています。
ブランドの店舗はただの販売拠点ではなく、ワークショップ、カフェ、ギャラリーの機能を併せ持つコミュニティスペースとして機能しています。
世界各地のDeus店舗では、実際にバイクのカスタムビルドが行われており、職人たちの技術を間近で見ることができます。
この「作る過程を見せる」姿勢が、ブランドの透明性と信頼性を高めています。
MINIとの理想的なパートナーシップの理由
今回のMINIとのコラボレーションは、両ブランドが共有する価値観があったからこそ実現しました。
MINIが66年間大切にしてきた「個性的な移動体験」の提供と、Deus Ex Machinaが追求する「機能美と創造性の融合」は、まさに理想的な組み合わせです。
特に重要なのは、両ブランドが「大量生産による均質化」に対するアンチテーゼとして機能している点です。
MINIの
- Only MINI Can Do(MINIにしかできないこと)
というモットーと、
Deus Ex Machinaの
- Address the Impossible(不可能に立ち向かう)
という哲学は、どちらも既成概念を超越した価値創造を目指しています。
このコラボレーションにより、自動車業界における新しいカスタマイゼーションの可能性が示されることになりました。
『The Skeg』- サーフカルチャーが生んだ電動カスタムカーの詳細
外装デザインとコンセプト
「The Skeg(ザ・スケッグ)」は、サーフィン文化からインスピレーションを得た革新的な電動カスタムカーです。
最大出力190kW(258馬力)を誇る電動パワートレインを搭載し、「波と共鳴する自由の象徴」として設計されています。
最も印象的なのは、鮮やかな黄色と銀色のツートンカラーです。
このカラーリングは、MINIの電動化への取り組みを表現しており、海と太陽を連想させるサーフカルチャーの美学を体現しています。
ワイドフェンダーと光るフロントグリルにより、従来のMINIとは一線を画する存在感を放っています。
技術的な革新として注目すべきは、半透明のファイバーグラスパネルの採用です。
これにより車重を15%軽量化し、同時に空力性能の向上を実現しています。
この軽量化技術は、サーフボード製造で培われたファイバーグラス加工技術を自動車分野に応用した画期的な試みです。
内装とサーフ文化の融合
「The Skeg」の内装は、「サーフ文化が機能性を重視する」というコンセプトで統一されています。
レーシングバケットシートには、ウェットスーツと同じネオプレン素材を使用し、柔軟性、撥水性、快適性を同時に実現しました。
特にユニークなのは、ウェットスーツ専用の収納トレイです。
サーフィン後の濡れたウェットスーツを安全に保管できる実用的な設計となっており、真のサーファーのニーズに応えています。
ダッシュボードには、サーフボード製造技術を応用したファイバーグラス製パネルを採用し、軽量性と独特の質感を両立させています。
操作系は意図的にアナログ志向で設計されており、シンプルで直感的な操作を重視しています。
ステアリングホイールの6時位置にはテンションストラップのアクセントが配され、サーフボードの固定ストラップを彷彿とさせるデザイン要素となっています。
『The Machina』- モータースポーツDNAを継承したガソリンモデル
レーシングスピリットあふれる外装
「The Machina(ザ・マキナ)」は、最高出力170kW(231馬力)のガソリンエンジンを搭載し、MINIのモータースポーツ遺産を現代的に解釈したモデルです。
「サーキットの鼓動を受け継ぐヘリテージ」というコンセプト通り、あらゆる部分にレーシングDNAが刻み込まれています。
外装の特徴は、象徴的な赤・白・黒のレーシングカラーリングです。
この配色にはDeus Ex Machinaのロゴが巧みに配され、両ブランドの融合を視覚的に表現しています。
ワイドフェンダーは機能性と美しさを両立させ、ラリーカーの力強さを現代的にアレンジしています。
最も印象的なのは、ボンネットに追加された4灯のヘッドライトです。
これは1960年代のMINIラリーカーへのオマージュであり、各ライトポッドには控えめながらもDeus Ex Machinaのブランディングが施されています。
リアには、ニュルブルクリンクを駆け抜けたJohn Cooper Worksレーサーからインスピレーションを得たディフューザーが装備されています。
本格レーシング仕様の内装
「The Machina」の内装は、外装と同じく赤・白・黒のカラーパレットで統一されています。
機能性を追求した設計により、レーシングカーとしての本質を表現しています。
5点式レーシングハーネスは、ドライバーと車両を一体化させ、究極のドライビング体験を提供します。
露出したロールケージとアルミ製フロアプレートは、安全性と軽量化を同時に実現する実用的な装備です。
これらの要素により、ストリートカーでありながら本格的なレーシングカーの雰囲気を醸し出しています。
操作系には、トグルスイッチを多用したシンプルで直感的な設計を採用しています。
これは「機能性が美しさに勝る」というDeus Ex Machinaの哲学を体現しており、無駄を排除した純粋な操作感覚を提供します。
中央に配置された排気システムは、機能的でありながら美的な焦点となっており、エンジンの力強い鼓動を感覚的に伝える設計となっています。
技術仕様とパフォーマンス比較
「The Skeg」と「The Machina」は、同じMINI John Cooper Worksプラットフォームをベースとしながらも、全く異なるパワートレインと性格を持つ兄弟車です。
電動モデルである「The Skeg」は最高出力190kW(258馬力)を発揮し、静寂性と瞬発力を兼ね備えています。
一方、ガソリンエンジンを搭載する「The Machina」は170kW(231馬力)を発生し、内燃機関ならではの官能的なサウンドと躍動感を提供します。
両車の最も象徴的な共通要素は、ルーフに描かれた大型の白い「X」マークです。
このデザインは「重要なデザインと共創を示す接続要素」として機能し、MINIとDeus Ex Machinaの革新的なパートナーシップを視覚的に表現しています。
カスタマイズ技術の革新性において、両車は従来の自動車カスタムの概念を大きく超越しています。
「The Skeg」のファイバーグラス技術は、15%の軽量化を実現し、同時に半透明パネルによる独特の光の演出効果を生み出しています。
「The Machina」では、レーシングカー由来の軽量化技術とエアロダイナミクス向上により、サーキットでの性能向上を追求しています。
両車ともに「無駄を徹底的に省いた、触れて分かる直感的な操作感と、本来の機能だけを追求したアナログ操作系」を採用し、デジタル化が進む現代において、純粋な操作感覚の重要性を改めて提示しています。
MINIの電動化戦略とNew MINI Familyの位置づけ
現在のMINIブランドにおいて、電動化は単なるトレンドではなく、ブランドの未来を決定づける重要な戦略となっています。
BMW GroupのJochen Goller氏が発表したデータによると、「現在、販売されるMINIの3台に1台が電気自動車となっている」という状況にあり、この電動化率33%は業界でも注目すべき数値です。
「New MINI Family」は、
- Convertible(コンバーチブル)
- Cooper(クーパー)
- Aceman(エースマン)
- Countryman(カントリーマン)
の4つのモデルで構成されています。
これらすべてのモデルで、顧客はEVまたはガソリンエンジンの選択が可能となっており、多様化するニーズに対応しています。
MINIが「世界で最も成功したプレミアム小型車ブランド」としての地位を築けた理由は、
「限られた空間を巧みに活用し、四輪を車体の四隅に配置することで生まれるゴーカートのような軽快感、そして本物の英国らしさと他にはない個性を兼ね備えている」
にあります。
今回のDeus Ex Machinaとのコラボレーションは、この66年間培われた「Only MINI Can Do(MINIにしかできないこと)」という哲学の現代的な表現として位置づけられています。
電動化時代においても、MINIらしいユニークな個性と運転する喜びを追求し続ける姿勢を明確に示しています。
まとめ:コラボレーションが示すカスタムカルチャーの未来
MINIとDeus Ex Machinaのコラボレーションは、単なる限定モデルの発表を超えた、自動車業界における新しいカスタムカルチャーの方向性を示しています。
「駆動方式の違いを超えて、唯一無二のライフスタイルと最高峰の運転体験を提供」という両車のコンセプトは、現代の消費者が求める多様性と個性重視のトレンドと完全に合致しています。
Deus Ex Machinaの
- Address the Impossible(不可能に立ち向かう)という哲学と
MINIの
- Only MINI Can Do(MINIにしかできないこと)というモットーの
融合により、従来の自動車カスタムの枠組みを大きく超えた創造性が実現されました。
サーフボード技術の自動車への応用、レーシング技術の日常車への移植など、異業種間のクロスオーバーによる革新は、今後のカスタムカルチャーの新たな可能性を切り開いています。
このコラボレーションが示す最も重要なメッセージは、「大量生産による均質化」に対するアンチテーゼとしての個性追求です。
デジタル化と効率化が進む現代において、人間の感性と創造性を重視したモノづくりの価値を改めて提示しており、今後の自動車業界におけるカスタマイゼーションの方向性に大きな影響を与えることが予想されます。
真の意味での「オンリーワン」を追求する姿勢こそが、これからのプレミアムブランドに求められる条件なのかもしれません。
Reference:driving.ca
よくある質問(FAQ)
Q1. The SkegとThe Machinaは市販される予定はありますか?
残念ながら、この2台は完全なワンオフモデルとして製作されており、市販の予定はありません。IAA 2025での展示とMINIパビリオンでのショーケースのみとなっています。ただし、MINIとDeus Ex Machinaのライフスタイルコレクションは販売されています。
Q2. 通常のMINI JCWとこのコラボモデルの違いは何ですか?
最大の違いはカスタマイズの方向性です。The Skegはサーフカルチャーを反映したファイバーグラス製パネルと15%の軽量化、The Machinaはレーシング仕様の4灯ヘッドライトとロールケージを装備。両車ともDeus Ex Machinaの職人技術が随所に施されています。
Q3. MINIの電動化率33%はどのような意味ですか?
現在販売されているMINIの3台に1台が電気駆動を採用していることを示します。New MINI Familyの4モデル(Cooper、Convertible、Aceman、Countryman)すべてで電動とガソリンの選択が可能で、顧客のニーズに応じた選択肢を提供しています。
Q4. Deus Ex Machinaはどのようなブランドですか?
2006年にオーストラリア・シドニーで創設されたライフスタイルブランドです。サーフィン、モーターサイクル、アートを融合し、「Address the Impossible(不可能に立ち向かう)」を哲学とするカルチャーブランド。日本では原宿に直営店を構えています。
Q5. IAA 2025以外でこの車両を見ることはできますか?
IAA 2025期間中(9月9日〜14日)は、ミュンヘン市内のMINIパビリオン(レンバッハプラッツ)とオープンスペース(マックス・ヨーゼフ・プラッツ)で展示されました。今後の展示予定については、MINI公式サイトで最新情報をご確認ください。
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