EV車が修理できない理由とは？

電気自動車（EV）の普及が世界中で加速しています。

ノルウェーでは2024年の新車販売の約89%がEVとなり、中国でも新車販売の半数以上がEVです。

しかし、EVの普及とともに深刻な課題が浮上しています。

それは「修理できない」問題です。

EVはガソリン車とは異なる技術が求められるため、修理できる整備士や修理工場が不足しています。

故障した際に修理できる環境が整っていないことは、今後のEV普及の大きな障壁となる可能性があります。

本記事では、EVの修理が困難な理由について詳しく解説します。

EVの普及状況と修理問題

EVは世界的に急速に普及しています。

ノルウェーでは2025年までにゼロエミッション車（EVまたは水素車）のみを販売する方針を掲げており、すでに市場の大半をEVが占めています。

中国でもEVの販売が伸びており、新車販売の半分以上がEVです。

しかし、EVの普及が進む一方で、修理に関する問題が深刻化しています。

中国では2025年までにEV関連の労働者が120万人必要とされていますが、現状では100万人以上が不足しており、そのうち80%はアフターセールス・サービスに関わる人材が足りていません。

また、中国にはガソリン車を修理する工場が約39万7000軒あるのに対し、EV専門の修理工場は2万軒にも満たない状況です。

これはEV1000台につき1つのサービスセンターしかないことを意味し、多くのEVオーナーが修理の際に長期間待たされる原因となっています。

EV車が修理できない理由

(1) 技術的な違い

EVはガソリン車とは根本的に異なる構造を持っています。

ガソリン車はエンジンやトランスミッション、燃料系統が主要な構成要素ですが、EVはモーター、バッテリー、高電圧システム、電子制御ユニット（ECU）が中心です。

EVの修理には電気系統の専門知識が不可欠であり、従来の自動車整備士のスキルだけでは対応できません。

特にEVは400〜700ボルトの高電圧システムを使用しており、修理の際には特別な安全対策が必要です。

ガソリン車であれば経験のある整備士が「異音」や「振動」から問題を特定できますが、EVの場合、診断には専用のテスト機器や高度な電気知識が求められます。

そのため、従来の修理工場ではEVの修理が難しく、メーカーや専門のEV修理工場に頼らざるを得ないのが現状です。

整備士の不足

EVの修理には新しい知識と技術が求められます。

しかし、EV対応の整備士は不足しており、育成にも時間がかかるのが現実です。

例えば、日本の自動車整備士の平均年齢は46.4歳と高齢化が進んでいます。

また、自動車整備学校の入学者数も減少傾向にあり、2003年に1万2300人いた入学者が2016年には6800人と44.7%も減少しました。

この傾向は現在も続いており、将来的に整備士の不足がさらに深刻化する可能性があります。

加えて、EVの修理には高度な電子制御の知識が求められるため、従来の整備士のスキルでは対応が難しくなっています。

従来の機械系の整備に慣れた整備士が、新しい電気・電子系の技術を学ぶには時間とコストがかかり、結果としてEVの修理対応が進まない要因となっています。

EV修理の現場での問題

(1) 修理工場の設備不足

EVの修理には特別な設備が必要ですが、多くの修理工場はガソリン車向けの設備しか持っていません。

EVのバッテリー診断機、高電圧対応の安全装置、専用のテスト機器などが不足しており、結果として修理を請け負えない工場が多くなっています。

また、EVの修理にはメーカー独自の診断ツールが必要になることが多く、これが一般の修理工場では対応できない要因の一つとなっています。

(2) 修理の長期化とユーザーの不満

EVの修理は長期間かかることが多く、ユーザーの不満につながっています。

例えば、中国のあるEVオーナーは、車の不調でディーラーに持ち込んだものの、原因を特定できず、最終的にメーカーに修理を依頼することになり、1週間以上待たされました。

ガソリン車ならば数日で修理が完了することが多いですが、EVは診断や修理が難しく、結果的に修理時間が長引く傾向にあります。

こうした問題がEVの普及に影響を与える可能性があります。

未来の展望と対策

EVの修理問題を解決するには、整備士の育成と修理工場の設備投資が必要です。

自動車メーカーや専門学校はEV対応の整備士を育成するプログラムを強化しつつありますが、より広範な支援が求められています。

また、修理工場の設備投資を支援するための補助金制度の導入や、ガソリン車修理工場のEV対応化を進めることが重要です。

さらに、EVオーナーも定期点検を怠らず、メンテナンスの重要性を認識することが求められます。

EVの普及が進む一方で、「修理できない」問題が深刻化しています。

主な理由は技術の違い、整備士の不足、修理工場の設備不足です。

EVが普及し続けるためには、整備士の育成や修理環境の整備が不可欠です。

今後、EVのメンテナンス環境が整わなければ、EVオーナーの不安が増し、普及の妨げになる可能性があります。

EVを持続的に発展させるためには、修理環境の改善が急務です。

Reference：courrier.jp