勉強されている経営者や会社員の方でトヨタ自動車では企画書をA3用紙1枚にまとめて書いている、という話を聞いたことがあると思います。これは本当の話です。私がまだサラリーマン時代にトヨタ自動車系列の会社の部長クラスのOGの方と一緒にお仕事させていただいた時代が数年あったんですが、その際にみっちり仕込まれました。そのおかげで、今でも企画書を書くのはもちろん、文章を買いたり文章を考えたりすることにあまり苦痛を感じることはなくなりました。また、会議や商談での話し方や物事の考え方にも変化があったと思います。

なぜ、A3用紙1枚に企画書をまとめて書くとそういう能力が身につくようになるのか?私の個人的な見解ですが少しお伝えさせていただこうと思います。

企画書をA3用紙1枚にまとめて書く時のコツは結論から書かないことです。多くのビジネスパーソンは企画書は結論から書けと教えられています。理由は簡単です。忙しい上司や決裁者に決裁を短時間でもらうためです。パッと見て趣旨を理解して、その場で判断させるためのもの。これは本当の企画書ではありません。

本来の企画書とは、決裁をさせるためのツールではなく決裁者に自分の提案を聞いてもらい理解してもらうものだと思います。

なので、結論から書くのではなく・・・

1.目的
2.現状分析
3.仮説
4.データ等の裏付け
5.対策(あなたからの提案)
6.スケジュール、コスト

大まかな流れは上記のようになるはずです。

極論を言えば、あなたの提案に対して賛同を得ることが目的ではなくあなたの提案について助言、アドバイスをもらう、または議論をすることが目的。企画書とはあなたの提案をまとめたものであり、その企画書を元にして議論、意見交換し、最適な答えを導くものです。なので、結論も大切ですがそこまでのプロセスが大切です。そのプロセスを分かりやすく見せるためにA3用紙の1枚にまとめて書くのです。

結論に至るまでのプロセスを順番に説明し聞き手の理解を深める。これをまじめにやると膨大な資料と時間が本来は必要になります。

しかし、あなたも上司や決裁者もイチイチそんなことは出来ないので上記のプロセスを出来るだけ凝縮してポイントはきっちりおさえた資料を作る。なので、A3用紙1枚にまとめることが必要になります。パワーポイントでも構いませんがパワーポイントは紙芝居と同じで後ろを(説明済みのシート)振り返ることは苦手です。

シートを進めたり、先に進めたりすることになるのでパッと見て判断が出来ませんが、A3用紙1枚に書くことでひと目で全体を見渡すことが可能です。さらに、限られた用紙の中にポイントをギュッと凝縮して書く必要があるので何を書いて、何をかかないのかを決めながら資料をつくることになりあなたの頭の整理も出来る。

これがA3用紙1枚にまとめて企画書を書かかせる最大のポイントです。

例えば、上記4.データ等の裏付けの部分であれば、企画内容によっては多くのグラフや表が必要になる場合があります。しかし、A3用紙1枚に収めるためには全部は記載できない。なので、必ず必要なデータだけを厳選して記載しなければいけません。なので、グラフなどは細かい数値を記載するのではなく大まかな傾向がわかるように記載するのがコツです。

今後のトレンドとして右肩上がりなのか右肩下がりなのか?現状と対策後ではどの部分に効果があり、どの部分に効果がないのか?それらの比較、傾向が分かればよい。もし、細かい数値が必要なのであればバックデータとして別紙に資料を用意し必要に応じて提示する。

このように結論ありきではなく全体のストーリーを重視するのがあなたが知っている企画書とは違うところです。しかし、この方法をマスターすることであなたの論理的思考力と表現力が向上します。それによって、あなたの仕事のレベルが1段づつレベルアップさせることが可能です。

と、言ってもなかなか最初はうまくまとめることは出来ません。そこで、A3用紙1枚にまとめる際のポイントをいくつかお伝えします。

1.文章は出来るだけ箇条書き、かつ客観的に短く書く
2.各段階の1番伝えたいことは強調する(文字を大きくする、色を変える)
3.表は出来るだけ使わず簡単なグラフや図で大まかな傾向を伝える
4.出来るだけ色は使わない(強調部分のみ可)
5.適度な余白を作り読みやすくする

私がA3用紙1枚に企画書を書く際にはこのようなことを意識して書いていました。あとは話のストーリーが聞き手にすんなりと聞き入れられるように心がける。もちろん、書きながら説明のための話し方も考えます。

たかが企画書1枚ですが日常業務の中で書き手に対して仕事の仕方、考え方の基本を訓練させる。これトヨタ式A3用紙企画書の本質です。日々の改善をもっとうとするトヨタ生産方式は工場だけではなくホワイトカラーの生産性向上、改善を求める最強の教育ツールなのかもしれません。

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