私は二代目経営者として実質10年近く仕事をしてきました。比較的上手に事業継承ができた方だと思います。そこで、二代目経営者の私が考える正しい事業継承の方法をお伝えします。

そもそも世襲は悪いのか?


こちらの記事はジャパネットたかたの高田元社長の講演の記事ですが、このfacebookのコメントに世襲に関する否定的なコメントが書かれていました。

今回はこの世襲に否定的なコメントを見て記事を書こうと思ったのですが、結論から言えば世襲でも非世襲でもどちらでも構わない。会社を適切にかつ継続的に繁栄させられると思った人を後継者に指名すればよい。

これは上場、未上場に関係なくどんな会社でも当たり前なことです。一番ダメなのは実子であっても会社を適切的に継続的に反映させることができない人間を後継者に指名することです。

私は高田元社長のご子息のことはあまり知りませんのでここでは論評はできませんが、高田元社長は講演の中でこういうことをおっしゃっています。

今1800人くらい(社員が)いる中で、もっとも戦って、もっともぶつかって、もっとも議論をして本音でぶつかってきた仲間なんです。

そういう中で私は「この人に託せば、企業を100年200年(続くように)やってくれるかな」と。1800人の中から選んだトップがたまたま長男だったと、それだけのことなんです。

この言葉が全てだと思います。そう思ったのであればそうする。判断が正しかったのか間違っていたのかは数年後にしか分かりませんので。

世襲の際に先代社長がするべきこと(任せる)

今回の高田元社長は講演の中でこうも述べられています。

実は私は今年の1月15日に社長を退任いたしました。今はまったく役職が付いていませんので、ジャパネットたかたからのお給料は1円もないです。

私は今「株式会社A and Live」の代表取締役となりまして、実はそこもパートの人を含めて3人しかいないんです。何をやるかっていうのもまだ決めてないです。

これが一番先代社長が世襲でもそうでない場合でも必ず行わなければいけないことです。

バトンタッチの際にどのような状態でどのようなストーリーでバトンを渡すかにもよりますが、代表取締役を引き継いだのであれば、経営には一切タッチしないことです。

引き継いだ方は代表取締役の責任を理解した上で覚悟を決めて経営を行うのが筋です。今までの良い部分も悪い部分も生かすか殺すかは引き継いだ人の判断です。

しかし、実際には会長職に就かれた先代社長が心配になってあれこえ指示を出す。こうなったら一番困るのは従業員です。ワンマンツーボスでは指揮命令系統が混乱します。

そもそも心配なのであれば、代表取締役を引き継いではいけません。少なくても2人で代表取締役を務めるべきです。そうすれば、両者はつねに牽制しながら、かつ情報共有しながら経営を行うことになります。

代表取締役を引き継ぐことはイコール全て任せるということ。少なくても引き継ぐ方はそう思っています。思っていないのは引き継いだ方だけということを理解してください。

世襲の際に先代社長がするべきこと(参謀役も引退)

多くの場合、経営者には参謀役(番頭さん)がいる、または古参の役員、部長クラスの方々いる場合が多いです。

大抵の場合、参謀役、古参の社員と新しい社長は喧嘩します。これは先代社長の意向に関係なく喧嘩します。自分たちの既得権益を守るためです。

なので、先代社長が第一線を退く場合はそれらの役員、社員も引退させるべきです。もし辞めさせることが彼らの年齢や経済的な理由でできない場合は、役職を下げるか子会社などに出向させるなどして新しい社長と直接ぶつからないように配慮が必要です。

もちろん、後継者が長年それらの人たちと円滑に仕事が出来ているのであれば問題がありませんが、そうでない場合はできるだけ遠ざけることが得策です。

参謀役になる人は他人が決めれるものではありません。本人にしか決めることができないものです。もちろん、意見を求められればアドバイスは必要ですが、必要に干渉してはいけません。

私がうまく世襲できた理由

私がもめること無く二代目として会社を引き継ぐことができたのは・・・

1.先代の社長が一切仕事に口出しをされなかったこと
2.参謀役、古参の社員がほぼ全員辞めていたこと
3.自分で参謀役を見つけて二人三脚で仕事をしたこと

これらの要素がそろったことでうまく会社を引き継ぐことができました。会長も代表取締役会長の肩書は捨ててはいませんが、私が代表取締役を拝命した際にハッキリと言われました。

「これからは自分で全て判断しなさい」

これはその立場にならないと分からないですが、非常に責任と覚悟が必要だと自覚させられる言葉です。もちろん、今でもたまに報告を兼ねて相談にはいきますが、その際は自分の意見を伝えればほぼ追認してもらっています。

このぐらいのことができなければ後継者としては失格であると同時に、先代も安心できません。後継者として先代に口出しをされたくないのであれば、報連相をしっかり行っておくことが大切です。

幸いにして私の会社は実質無借金でしたので連帯保証などの問題が無かったことはラッキーでした。しかし、若干の先代が連帯されていた個人保証は全て私の名義に変更しています。

それが代表取締役としての責任であると同時に義務だと思っています。その分、業績にあった報酬を堂々ともらう。これが経営者として当たり前のようにできるためにも必要だと思っています。