中国市場におけるBMWの成長潜在性
BMWは、中国市場での収益の約30％をEVの販売から得ています。
中国では、上昇中の中流階級と政府主導のEV普及政策により、EV市場が急速に成長しています。
市場は国内の大手EVブランドとの競争を懸念していますが、BMWはプレミアムセグメントに焦点を当てており、価格引き下げを回避しています。
その結果、BMWは価格競争に巻き込まれず、中国市場でのEV販売を順調に伸ばしています。
中国国内のEV（電気自動車）メーカーは、価格の安さと国からの補助金などに頼った販売を行っているのに対して、BMWはプレミアムなブランド力を活かした価格戦略を行うことで、中国国内のEV（電気自動車）メーカーとの差別化に成功しています。
ICE（内燃機関車）セグメントへの需要見落とし
一方で、市場は主にEVへの移行に焦点を当てており、内燃機関車（ICE）の需要を見落としていると指摘されています。
BMWは急激なICEからEVへの移行には慎重なアプローチを取り、需要がある方向に柔軟に対応できる混合プラットフォームを開発しています。
これにより、EVとICEの需要の両方を捉えることが可能となり、競合他社よりも柔軟な立ち位置を築いています。
多くの欧州自動車メーカーはEV専門のブランドを立ち上げたり、将来的にはEVの生産に特化することを表明しています。
しかし、昨今欧州を中心とした急激なEVシフトへの懸念が広まる中で、BMWが現在行っているEVとICEのシャシーを共有化する戦略はEV、ICEのどちらにも依存すること無く柔軟に市場の需要に対応できる点は評価に値する戦略と言えます。
新たなリスク：ヨーロッパでの中国製大量市場EVの流入
これにより、BMWがヨーロッパで展開する両方のセグメント、すなわちプレミアムと大量市場において競争が激化しています。
MGやPolestarなどの中国系欧州ブランドが、価格とテクノロジーの面でヨーロッパの市場でBMWに対抗しています。
BMWのブランド力は中国ではプレミアムブランドとしての地位を確率していますが、欧州におけるBMWのブランド力はプレミアムブランドのみではなく大衆自動車メーカーという側面も持ち合わせています。
特にBMWの1シリーズ、2シリーズ、BMW MINIに関しては、この大衆車という側面が強く、現在この部分においてBMWのEV対応が遅れていることも、中国製の低価格なEVが大量に欧州に輸出され販売台数が増えている原因であるとも考えられます。
BMWの評価と今後の展望
BMWの評価はSOTP（Sum of the Parts）アプローチに基づいており、これによりBMWの異なるセグメントごとに評価が行われています。
ただし、ヨーロッパ市場における中国製EVの急速な進出により、BMWのEVとICEの両対応の戦略が損なわれている可能性が浮上しています。
BMWは中国市場において強力なポジショニングを持ちつつも、ヨーロッパ市場での新たな競争に対処するために柔軟な戦略を展開することが求められています。
未来の展望においては、技術革新と市場認知度の向上がBMWの成功に寄与することが期待されます。
BMWではBMW MINIブランドにおいて2025年に小型車のEV市場に本格参入することが決まっています。
今後はBMW MINIだけではなくBMW1シリーズ、2シリーズでもEV化が進むことで、中国製低価格EVとどのように戦うのか？が今後の欧州でのEV市場での優劣を決めることになると思われます。
Reference：seekingalpha.com
