2030年に登場予定の新型EV「BMW i2」は、従来の2シリーズと異なり、セダンボディのみでの展開が予定されている。なぜBMWはあえてクーペを外し、セダン1本に絞ったのか?最新情報と背景を、EV戦略や技術革新とともに解説する。
- セダン限定のBMW i2が2030年に登場予定:実用性と空力性能を重視し、クーペは非採用に。
- 第6世代バッテリーで航続最大700kmを実現:新セル採用で長距離走行と高効率充電を両立。
- ターゲットは都市型ユーザーと若年層:i1と差別化し、エントリーEV層を獲得へ。
BMWのEV戦略と「Neue Klasse」の全体像

Neue Klasseとは何か?次世代EV専用アーキテクチャ
BMWが今後展開する次世代EVの中心となるのが「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」と呼ばれる新アーキテクチャだ。1960年代の名車シリーズに由来するこの名称は、EV時代においてもBMWの再出発を意味しており、プラットフォーム全体をゼロから設計し直すという点で大きな転換を象徴する。従来のICE(内燃機関)車両との共用設計を捨て、EVに最適化された構造を採用することで、空間効率・軽量化・安全性・バッテリー配置の自由度が飛躍的に向上している。
BMWが描くEVシフトの中核戦略
BMWは2030年までに販売台数の50%以上をEVにする目標を掲げており、Neue Klasseはその戦略を支える根幹と位置づけられている。中でもiX3やi3の次に位置付けられるi2は、エントリーモデルとして幅広い層をターゲットとした量産EVとして重要な役割を果たす。BMWは特に欧州市場や中国市場を重視し、環境規制の厳格化に対応しながらもブランドの「駆け抜ける歓び」を維持することを目指している。
i2はBMWの新時代EV群の“入り口モデル”か
i2はBMWの電動化戦略の中でも特に新規ユーザー獲得を担うモデルとして期待されている。i1と並び、比較的手の届きやすい価格帯で提供されることが見込まれており、若年層や都市型ユーザーのEVデビューを後押しする。さらに、Neue Klasseによってもたらされる技術革新により、単なる“廉価モデル”ではなく、プレミアムコンパクトEVとしてのポジション確立が狙われている。
なぜクーペを外してセダンのみ?i2のボディ選択の真意

クーペ不採用の背景:実用性とEV時代の需要
i2でクーペが廃止され、セダンのみとなる理由の一つは「実用性の優先」である。電動化が進む現代においては、航続距離やパッケージング効率が重視される傾向にあり、限られたスペースを最大限活用できるセダン形式が有利とされている。また、SUVやクロスオーバーへの需要が高まる中で、クーペは一部の愛好家向けに留まり、販売台数という観点では効率が悪いと判断された可能性が高い。
車内空間の最適化と空力の観点
電気自動車は空気抵抗をいかに減らすかが性能に直結する。セダンはクーペよりもルーフラインを伸ばしやすく、後席空間と荷室の確保、さらには空気抵抗の低減にも寄与する。BMWはi2を「使えるEV」として位置付けており、日常の使い勝手や長距離移動での快適性を重視した設計が求められた。その意味でもクーペよりセダンの方が合理的といえる。
EV市場での競合比較(テスラ モデル3など)との戦略的ポジション
BMW i2がセダンボディのみとなった背景には、テスラ モデル3やBYD Sealといった直接的な競合の存在もある。これらはいずれもセダン形式であり、価格・航続距離・性能のバランスを重視するユーザーに支持されている。BMWがあえてこの市場にi2を投入するのは、「BMWらしい走り」を武器にEVセダン市場で存在感を示す意図があるからだ。クーペを排除し、セダンに注力することで市場競争に最適化した選択といえる。
BMW i2に搭載される第6世代バッテリーの革新
セル構造変更によるエネルギー密度の向上
BMW i2には、同社が次世代EV向けに開発した「第6世代バッテリー」が搭載される予定であり、これが走行性能や航続距離に大きく寄与する。従来のバッテリーパックと異なり、新型では円筒形セルを採用。従来のプリズム型セルに比べ、パッケージ効率と熱管理性が大幅に向上している。このセル構造の変更により、バッテリー全体のエネルギー密度が最大20%以上向上する見込みであり、軽量化と高出力化を同時に実現する。
航続距離最大700kmが実現する理由
第6世代バッテリーの最も注目すべき進化点は、航続距離の飛躍的な延長だ。BMWの発表によれば、i2にはこの新バッテリー技術を採用することで、最大700kmの航続距離(WLTP基準)が可能になるという。これは従来のEVと比べて約30%の向上に相当し、実用性が格段に高まる。特に、長距離移動や寒冷地での使用にも耐える性能は、プレミアムEV市場での競争力を一層強化する。
充電速度と環境負荷低減も両立
この第6世代バッテリーは、急速充電性能にも優れている。BMWは、新開発セルによって充電速度を最大で30%高速化できるとしており、ユーザーにとっての待機時間の短縮は大きな利点だ。また、製造段階においてもCO₂排出量を抑えるための工夫が施されており、リサイクル材の使用率向上や製造エネルギーの再生可能化など、持続可能性を重視した設計となっている。このように、性能と環境配慮の両立がBMWの次世代EV戦略の柱となっている。
走りに妥協なし:RWD/AWD対応とBMWらしさ
EVでも“駆け抜ける歓び”を継承できるのか?
BMWが掲げるブランド理念のひとつに「駆け抜ける歓び(Freude am Fahren)」がある。i2はEVでありながらも、この走行性能の哲学を忠実に継承することが期待されている。従来の小型EVは実用性重視で、運転の楽しさを犠牲にする傾向があったが、BMWはi2でそれを覆そうとしている。これは特に、駆動方式にRWD(後輪駆動)やAWD(四輪駆動)を採用する方針に顕著に表れている。
前輪駆動から脱却したドライビングダイナミクス
BMW i2の先代モデルにあたる2シリーズ グランクーペは、前輪駆動(FF)を採用していたが、i2ではあえてRWDを標準に戻す見込みとなっている。これは、ハンドリングの安定性や旋回性能を重視するBMWの思想をEVにも適用した結果だ。特に、高速域や山岳路での操縦性において、RWDのメリットは顕著であり、ドライバーにとってより自然な操作感が得られる。
小型EVながらもスポーティさを失わない設計
i2はコンパクトセダンというカテゴリに属するが、その設計にはスポーツモデル並みの剛性やシャシー設計が投入される可能性が高い。BMWはモーターのトルク特性を活かしたスムーズな加速と、高精度な車体制御によって、単なる“静かなEV”にとどまらないドライビング体験を提供しようとしている。車両重量のバランス、低重心化されたバッテリー配置、そしてAWDモデルでのトラクション性能など、走行性能に一切の妥協を許さない姿勢が垣間見える。
i2のターゲット層とi1との市場戦略的すみ分け

若年層・都市部ユーザーを狙う背景
BMW i2は、価格帯と車体サイズから見ても、明らかに若年層や都市型ライフスタイルを持つユーザーを主なターゲットとして設計されている。特に欧州や中国などの都市部では、駐車スペースや交通事情を考慮したコンパクトカーの需要が根強く、BMWはそのニーズに応える形でi2を開発している。また、EVに対する社会的意識が高いミレニアル世代やZ世代を取り込むことで、ブランドの将来性と持続可能な価値の訴求にもつながる。
i1(ハッチバック)とi2(セダン)の戦略的ラインナップ
i2とともに投入が予定されている「BMW i1」は、コンパクトハッチバックとしての役割を担う。i1が機動性や都市部での扱いやすさに特化する一方で、i2はセダンとしてより高級感や快適性を提供するモデルとなる。ボディ形状の違いによって、両者は明確なターゲットと用途を分けることが可能となり、BMWはこの2モデルを軸に、小型EVセグメントでの顧客層のすみ分けを図っている。
プレミアム小型EVセグメントでの差別化
BMW i2の最大の競合は、Tesla Model 3やBYD Dolphinのようなプレミアム小型EVである。こうした競合に対してBMWは、単なる性能や価格だけではなく、「走りの楽しさ」や「高品質な内装」などのブランド価値によって差別化を図っている。また、Neue Klasseプラットフォームによる先進的な設計や、独自のバッテリーテクノロジーなど、機械的・構造的な優位性もポイントとなる。これによりi2は、コストパフォーマンスだけでなくプレミアム志向のユーザーにも訴求可能なポジションを築いている。
2030年発売の展望とBMW EVラインの未来
BMW i2の発売スケジュールと生産体制
BMW i2の市販モデルは、現在の計画では2030年の発売を予定しており、開発コード「NB8」の名で進行中とされている。生産はNeue Klasseベースの新設計により、ミュンヘンやハンガリーの拠点で行われる可能性が高い。BMWはこのi2を皮切りに、今後数年で6車種以上のNeue KlasseベースEVを展開するとしており、その中でもi2は量販モデルとして中核を担うことになる見込みだ。
2シリーズはEV専用モデルに完全移行するのか?
現時点でBMWは、i2が既存の2シリーズクーペを直接的に置き換えることはないと明言しているが、ICE(内燃機関)搭載モデルの新規開発は予定されていないとも報じられている。この流れを見る限り、2シリーズは今後徐々にEV専用シリーズへとシフトする可能性が高く、i2はその先駆けとなる。特に環境規制の厳しい欧州市場では、電動化への一本化が避けられない状況であり、BMWの判断は現実的な対応といえる。
BMWが描く2030年以降の持続可能なモビリティ戦略
BMWは2030年以降においても「持続可能性」と「走行性能」の両立を軸にした製品展開を加速させる方針だ。i2はその象徴的モデルであり、リサイクル素材の活用、工場のカーボンニュートラル化、再生可能エネルギー導入など、環境面での配慮が徹底されている。また、EV市場の拡大と同時に、デジタルサービスやOTA(Over The Air)アップデート機能の拡充も進め、クルマの価値がハードウェアだけでなく、ソフトウェアでも評価される時代への対応も視野に入れている。
まとめ
BMWはEVモデルに関してはクーペモデルの開発を中止、または先延ばししています。これはスペース効率の問題、そしてクーペモデルを好む顧客がEVを考えしていないと考えているためと思われます。クーペを望む顧客には引き続きICEモデルで対応するのでしょう。
また、EVモデルのポイントは空気抵抗であることは、日本であればプリウス(HVだが考え方は同じ)を見れば分かるようにリアの造形はセダンというよりクーペ、ハッチバックです。つまり、あえてクーペモデルを用意する必要がなくなると考えているのかもしれません。
そして、BMW i2は、単なる新型EVではなく、BMWが次世代に掲げる価値観と技術を集約したモデルだ。クーペからセダンへのシフトも含め、走行性能・環境性能・デジタル化を三位一体で追求したその姿勢は、EV時代のBMWがどこへ向かうのかを明確に示している。i2の登場は、単なる製品ではなく、プレミアムEV市場におけるBMWの方向性そのものである。
Reference:ridebuy.ph
よくある質問(FAQ)
Q1. BMW i2の発売時期はいつですか?
A1. BMW i2は2030年に発売が予定されており、次世代EV専用プラットフォーム「Neue Klasse」に基づいて開発が進められています。
Q2. BMW i2はなぜセダンのみでクーペがないのですか?
A2. 航続距離や室内空間、空力性能を最適化するため、BMWはi2をセダンのみに絞りました。これはEV時代に適したボディ選択といえます。
Q3. BMW i2の航続距離はどれくらいですか?
A3. BMW i2は第6世代の新型バッテリーを搭載し、最大で約700km(WLTP基準)の航続距離を実現する見込みです。
Q4. BMW i2とi1の違いは何ですか?
A4. i1はコンパクトなハッチバック型で都市部向け、i2はセダン型で快適性とプレミアム性を重視したモデルです。
Q5. BMW i2の駆動方式はどうなりますか?
A5. i2は後輪駆動(RWD)と四輪駆動(AWD)に対応予定で、BMWらしい走りの性能をEVでも継承します。
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