2027年に登場予定のBMW M3 EV(コードネーム:ZA0)は、BMW Mの新時代を象徴するモデルです。BMW M初の完全電動スポーツセダンとして、高性能と革新性を両立しながら開発が進められています。
本記事では、最新のスクープ情報をもとに、この新型M3 EVの外観、スペック、技術的進化、そして運転体験に至るまで、詳細に解説していきます。
- MTがないEV時代のMが始動:BMW M3 EVはマニュアル非搭載。EV専用制御で走行フィールを再構築。
- 4モーター×独立駆動で超高性能:各輪を制御する4モーターとトルクベクタリングで正確な挙動を実現。
- Neue Klasse採用で全方位進化:EV専用設計「Neue Klasse」プラットフォームで効率・剛性・自由度が向上。
プロトタイプに見るデザイン進化とM3らしさの継承

迫力のワイドフェンダーと20インチタイヤで視覚的インパクトを強調
2025年6月時点で目撃されたBMW M3 EV(ZA0)のプロトタイプは、外観デザインにおいて従来のM3らしさをしっかりと受け継いでいます。最も目を引くのは、張り出したワイドフェンダーと20インチの大径ホイールです。特にリアフェンダーは大きく張り出しており、明確なスポーツ志向を視覚的に伝えています。
タイヤは前後異サイズで、フロントは275/35、リアには295/35という極太サイズを採用。これは、モーター出力を最大限路面に伝えるためのセッティングと考えられます。
加えて、プロトタイプには大型のドリルドブレーキローターが装備されており、高速域でのブレーキング性能にも期待が持てます。
M3の伝統を継承しつつ電動化に対応した新ボディライン
プロトタイプのシルエットは、フロントからリアにかけて流れるようなスポーティなラインが印象的です。低く構えたノーズと短いリアオーバーハング、そしてワイドなトレッドは、まさにM3のアイデンティティそのものです。
エアインテークの面積こそ内燃モデルに比べて控えめですが、電動化に伴う冷却ニーズを考慮した最適化が行われていることがわかります。
また、リアには空力を考慮したディフューザーも搭載されており、デザインと機能の両立が図られています。
このように、EVであっても“見た目で語れる”Mモデルであることが、新型M3 EVの開発における重要な哲学であると見受けられます。
マニュアルMT非搭載の理由と電動Mの新しい操作感
BMW M部門CEOが語る「マニュアル非搭載」の真意

2025年、イタリアで開催された「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」にて、BMW M部門のCEOであるフランク・ファン・ミール氏が明言したのは、
新型M3 EV(ZA0)にマニュアル・トランスミッション(MT)が搭載されない
という事実です。
彼は「EVの構造と制御論理において、伝統的なMTはもはや合理的ではない」と述べました。EVはそもそもトルクの出方や回転制御の仕組みが内燃エンジンとは異なるため、物理的にMTとの整合性が難しいのです。
EV構造がもたらす新しい“走り”とその制御思想
電動パワートレインはギアチェンジを必要とせず、スムーズで即応性の高い加速が可能です。
この特性は、ドライバーにとっては直感的で気持ちのよい走行感覚につながる一方、MTを介した人間主導の操作体験が希薄になることを意味します。
従来のMモデルで重要視されてきた“ドライバーとクルマの対話”がEV化により失われる懸念もありました。
「Heart of Joy」:感覚の再構築を目指す次世代制御技術

そこでBMWが開発しているのが、車両制御の中枢となる「Heart of Joy」と呼ばれる統合制御ユニットです。
この技術は、各モーターの出力やトルクを瞬時に最適配分するだけでなく、加速時やコーナリング時の“フィーリング”までを演出することを目的としています。
また、内燃エンジン特有のサウンドや振動をデジタル処理で再現する試みも進められており、視覚・聴覚・触覚すべてでドライバーの没入感を保とうという哲学が貫かれています。
Neue KlasseとBMW Mの融合で実現する性能哲学
Neue Klasseとは何か?次世代EVのための新アーキテクチャ
BMWの次世代車両戦略において中核をなす「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」は、電動化とデジタル化を前提に設計された新アーキテクチャです。
新型M3 EV(ZA0)もこのプラットフォームを採用しており、シャシー構造から電気制御システムまで、従来の内燃ベース設計とは一線を画しています。
パワートレインにはリアに高出力・高応答性のEESM(励磁同期モーター)、フロントには効率重視のASM(誘導モーター)が採用されると見られ、状況に応じた駆動力制御が可能となります。
モジュール構造で生まれる「パフォーマンスの自由度」
Neue Klasseの強みは、車種やモデルに応じてフレキシブルにパーツを最適化できるモジュール構造にあります。
これにより、新型M3 EVでは4モーターによる全輪駆動システムが実現され、最大850馬力に達する可能性も報道されています。
高効率でコンパクトなバッテリーパックとの組み合わせによって、長距離走行とハイパフォーマンスの両立が可能になります。
M専用の最適化とその哲学
BMW Mは単なる高出力仕様ではなく、“操る歓び”を重視する専用チューニングが施されます。
シャシー剛性、サスペンション特性、ブレーキ応答など、すべてがM基準で設計されることで、Neue Klasseという最新技術の上に、BMW Mならではの一体感とダイナミズムが融合されているのです。
4モーター+トルクベクタリングがもたらす次世代の駆動体験
各輪を独立制御する4モーター構成が可能にする新次元の走行性能
BMW M3 EV(ZA0)では、各車輪に専用モーターを搭載する4モーター構成が採用される予定です。これにより、従来の内燃エンジンや2モーター式のEVでは実現できなかった、ミリ秒単位での駆動力配分が可能になります。
車両の挙動に対する応答性が飛躍的に向上し、加速・旋回・減速のすべてにおいて極めて高い安定性と制御精度を実現します。
従来のM xDriveを超える精密な制御とMらしい“味付け”
BMWの4輪駆動システム「M xDrive」は、内燃モデルのM3やM5で高く評価されてきましたが、新型M3 EVではこれを超える次元の制御が期待されます。
4つのモーターは完全に独立してトルクを供給できるため、物理的なデフやクラッチを介さずに、滑りやすい路面でも最適なトラクションを瞬時に確保できます。
さらに、BMW M独自の制御ロジックにより、「リア寄りの駆動フィール」や「リニアなアクセル応答」といった“らしさ”も継承。物理的な構造が変わっても、ドライバーが感じる挙動の本質を変えない、という姿勢が貫かれています。
M流トルクベクタリングとは何か?
トルクベクタリングは、各車輪に異なる駆動力を与えることで、旋回性能や安定性を向上させる技術です。M3 EVではこの技術が新たなステージへと進化し、前後・左右の各輪に最適なトルクを配分することで、車両の動きを「意図通りに動かす」制御が可能となります。
これは単なるテクノロジーではなく、BMW Mが追求してきた“人車一体”の再構築とも言えるものです。
内装&デジタル体験の進化|iDrive Xとパノラマビジョン
次世代UI「iDrive X」がもたらすインターフェースの進化

新型BMW M3 EV(ZA0)には、最新世代のインフォテインメントシステム「iDrive X」が搭載されます。このシステムは、物理ボタンの削減とタッチ操作・音声操作を中心としたUI設計が特徴で、直感的かつ高機能な操作性を実現しています。
ディスプレイレイアウトやメニュー構造も一新されており、従来のiDriveとは一線を画しています。
パノラマビジョンディスプレイが描く未来のドライバー体験

加えて注目すべきは、「パノラマビジョンディスプレイ」と呼ばれる新型HUD(ヘッドアップディスプレイ)の存在です。
このディスプレイはフロントウィンドウ下部全体にわたって情報を表示でき、従来のメーター表示を拡張する役割を担います。視線移動を最小限に抑えつつ、ナビゲーションや車両情報、パフォーマンスメーターなどをリアルタイムで確認できます。
Mモデルらしさを残すインターフェースの工夫
デジタル化が進む中でも、Mモデル特有の「走りを操るための情報設計」は継承されています。
ドライブモードの切替、トルク配分の表示、加速度情報など、パフォーマンス走行に必要な情報がわかりやすく整理されており、単なるEVではなく“MのためのEV”であることが強く感じられます。
まとめ:BMW M3 EV(ZA0)は新しい「M」の始まり
2027年に登場予定のBMW M3 EV(ZA0)は、マニュアルミッション非搭載や4モーター採用など、電動時代にふさわしい進化を遂げたMモデルです。従来のM3とは異なる構造を持ちながらも、操作感や走行フィールにはMらしさがしっかりと息づいています。
今回のM3 EVは、内燃機からの決別ではなく、新たなMの在り方を提案する新しい「M」の始まりと言えるでしょう。
しかし、EV版 M3 ZA0 とは別にICE版 M3 G84も開発されていることから、正常進化版のM3と全く新しいEV版M3の2台が登場することはBMWの歴史上初めての出来事になります。
その歴史的なできごとを体験できる私たちは、この2台のM3を堪能することが今から待ち遠しく感じます。
Reference:bimmertoday.de
よくある質問(FAQ)
BMW M3 EV(ZA0)はいつ発売されますか?
BMW M3 EV(コードネーム:ZA0)は、2027年に正式な市販モデルとして登場する予定です。現時点ではプロトタイプの公道テスト段階にあり、今後さらに詳細な情報が公開されていくと見られています。
新型M3 EVにはマニュアル・トランスミッションの設定はありますか?
いいえ。BMW M部門の公式発表により、新型M3 EVにはマニュアルMTは搭載されません。EVの構造上、マニュアル操作が効率的でないことが理由とされています。
どのようなモーター構成が採用されていますか?
BMW M3 EVでは、前後にそれぞれ2つずつ、合計4つのモーターを搭載する構成が予定されています。この4モーター設計により、各輪を独立して制御する高精度なトルク配分が可能になります。
Neue Klasseプラットフォームとは何ですか?
Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)は、BMWが電動化とデジタル化を前提に開発した次世代EV専用アーキテクチャです。M3 EVもこの新プラットフォーム上で設計されており、軽量化・最適な重量配分・モジュール構成が特徴です。
従来のM3と比べて走行性能に違いはありますか?
従来の内燃エンジン搭載M3に比べ、新型M3 EVはトルクベクタリングや4モーター制御によって、より精密で瞬時のトラクション制御が可能になります。走行フィールは異なるものの、BMW Mらしい“操る歓び”を新たな形で体感できる設計となっています。
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