BMWが発表した「スピードトップ(Speedtop)」は、世界限定70台のみの生産が予定されている非常に希少なモデルです。2025年のコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステで初披露されたこのモデルは、BMWのフラッグシップであるM8をベースに、2ドアのシューティングブレークとして新たな美学を提示しました。
「シューティングブレーク」とは、もともと英国で使用されていた用語で、スポーツクーペとステーションワゴンを融合させたスタイルを意味します。高速走行性能とラゲッジスペースの実用性を両立したこのジャンルは、特に欧州の自動車ファンから高い人気を集めています。
この記事では、BMWスピードトップについて寄せられる7つの主な疑問に対して解説していきます。発売背景、デザインのこだわり、スペック、購入方法までを網羅的に紹介し、BMWファンはもちろん、車好きなら誰もが楽しめる内容になっています。
- 限定70台!BMWスピードトップの希少性:2025年発表の「スピードトップ」は、世界限定70台の超希少モデルとして注目を集めています。
- スカイトップとの違いを徹底解説:Skytopとは前半共通ながら、Speedtopは固定ルーフとリアゲートを備えた2ドアワゴン構造が特徴です。
- アートとパワーを両立した究極のグランドツアラー:M8ベースの617馬力エンジンと高級素材の内装で、走りと美しさを兼ね備えています。
Q1. スピードトップとはどんな車?
スピードトップは、BMWが2025年に発表した限定生産モデルであり、2ドアのシューティングブレークというユニークなスタイルを採用しています。このモデルは、2024年に話題を集めた「スカイトップ(Skytop)」の派生形として開発されましたが、オープンカーではなくクーペ風の固定ルーフと、リアゲートを備えたワゴン風の設計が大きな特徴です。
エクステリアのデザインは、BMWの伝統と革新を融合させたものとなっており、シャークノーズと呼ばれる前傾したフロントマスクがダイナミズムを強調しています。また、車体の中央を貫くように伸びる「スパイン(脊柱)」の存在は、ボンネットからルーフ、リアスポイラーへと視線を誘導し、一体感と造形美を兼ね備えています。
サイドビューでは、特徴的な「ホフマイスターキンク」と呼ばれるCピラーの折り返しラインをよりシンプルかつ力強く仕上げることで、従来のBMWツーリングモデルにはない躍動感とエレガンスを両立しています。ボディカラーには「フローティング・サンストーン・マルーン」から「フローティング・サンダウン・シルバー」へと変化する美しいグラデーションが施されており、見る角度によって異なる表情を楽しめます。
全体としてスピードトップは、BMWが今後のデザイン言語を示すと同時に、「走る芸術品」としての価値をも体現する存在と言えるでしょう。
Q2. なぜスピードトップが生まれたの?
スピードトップの誕生には、2024年に発表された「スカイトップ(Skytop)」の成功が大きく関係しています。Skytopは、BMW 8シリーズをベースとした2シーターのオープンモデルで、美しいプロポーションと洗練されたディテールで多くのファンを魅了しました。コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ2024での初披露後、Skytopへの熱狂的な反響がBMW内部に強く響いたのです。
この熱気を受けて、BMWはSkytopの持つ美的価値をベースに、より実用的で個性的なモデルを模索し始めました。その結果生まれたのが、2ドアワゴンという珍しいフォーマットの「スピードトップ」でした。
BMWグループのデザイン責任者であるアドリアン・ファン・ホーイドンク氏は、「スピードトップは私たちのツーリングモデル全体に対する感嘆符だ」と語っています。彼は、スタティックな状態でもダイナミズムを感じられるデザインこそがBMWの本質であり、それを体現する象徴がSpeedtopであると強調しています。
また、Speedtopの外装・内装デザインを担当したセバスチャン・ジム氏は、「当初はスカイトップのクーペ版を想定していたが、結果として最もエレガントなツーリングの形に到達した」と語っています。こうしたクリエイティブな進化の背景には、単なる派生モデルを超える強い意志と、ユーザーの声を尊重する姿勢があったのです。
Q3. どんなデザインやカラーが特徴?
スピードトップの最大の魅力のひとつは、その唯一無二のボディデザインとカラーリングにあります。まず注目すべきは、ボディカラーに採用された「フローティング・サンストーン・マルーン」から「フローティング・サンダウン・シルバー」へのグラデーションです。このカラーは、車体上部を中央から両端へ流れるように彩り、エレガントで幻想的な印象を与えます。
リアセクションには、シューティングブレーク特有のスタイリングが取り入れられています。なかでも後部のテールゲートは、前方に傾斜する角度で設計されており、走行中の空力性能と静止時のスタンスの両方を高めています。さらに、リアルーフの端には鋭く張り出したスポイラーが配置され、視覚的にもスポーティさを強調しています。
また、BMW伝統の「ホフマイスターキンク」は、従来のデザインよりも簡素で直線的な処理が施されており、より洗練された印象を与えます。スピードトップでは、このCピラーの処理がプロファイル全体の美しさを引き締める役割を果たしています。
足回りには、スカイトップとは異なる専用の14本スポークホイールが装備されています。このホイールはタービン状のデザインを避け、よりオープンで軽快な印象をもたらすために設計されました。
さらに特徴的なのが、ボンネットからルーフ、そしてリアエンドへと一本の線のように続く「スパイン(脊柱)」の構造です。このラインは、車体全体を一貫して貫く造形テーマであり、視覚的な統一感とダイナミズムを生み出しています。
Q4. 内装の魅力と細部のこだわりは?
スピードトップのインテリアは、外装と完璧に調和するラグジュアリーな世界観で構成されています。特に目を引くのが、インテリア全体に用いられた「サンドウン・マルーン」と「ムーンストーン・ホワイト」の2色構成のナッパレザーです。シート、ダッシュボード、ドアパネルに至るまで丁寧に仕立てられており、色彩のコントラストが上質さを際立たせています。
細部のディテールにも一切の妥協はなく、ブローグ加工(革靴で見られる伝統的な穴飾り)による装飾が各所に施されています。これにより、工芸品のような美しさとBMWらしい精密さが同居し、内装全体に温かみとクラフト感を加えています。
また、インテリアのあちこちにはファセットカットのクリスタルパーツが用いられており、光の反射とともに優雅な雰囲気を演出します。ヘッドレストやシフト周りにも使われており、光源と連動したアンビエントライトによって幻想的な空間を創出しています。
特筆すべきは、イタリアの老舗レザーブランド「Schedoni(スケドーニ)」とのコラボレーションです。座席後方のラゲッジスペースには、専用設計された2つのハンドバッグが革ベルトで固定されており、同ブランドによる週末用バッグもトランクに収められます。これらのバッグは、車体カラーと完全に一致した専用仕様となっており、オーナーの美意識を満たす特別な演出です。
荷室には、照明付きの2層構造が採用されており、上段を取り外すことで大容量スペースに変化。実用性とデザイン性の両立が徹底されています。
Q5. スペックとパフォーマンスはどうなっている?
スピードトップのベースは、BMWのフラッグシップスポーツである「M8コンペティション」です。そのため、搭載されるエンジンはBMW現行ラインアップで最強となる4.4リッターV型8気筒ツインターボを採用。最高出力は617馬力以上とされており、圧倒的な加速力と高速域での安定性を実現します。
駆動方式はインテリジェントAWD(xDrive)で、路面状況に応じて前後トルク配分を瞬時に制御。加えて、アクティブサスペンションや電子制御式のシャシー技術も盛り込まれており、ニュルブルクリンクでの走行テストも実施されています。これにより、単なるラグジュアリーカーではなく、真の走行性能を兼ね備えた「グランドツアラー」として仕上げられています。
価格は正式発表されていませんが、Skytopが約5000万円前後と見られているため、Speedtopもそれに近い、またはそれ以上になると予想されます。
Q6. Skytopとの違いは?

スピードトップとSkytopは、いずれもBMW 8シリーズをベースとし、フロント部分のデザインやパワートレインは共通しています。両モデルともに4.4リッターV8エンジンを搭載し、プレミアムかつ高性能なグランドツアラーとして開発されています。
しかし、最大の違いは後部構造とルーフ形状にあります。Skytopは取り外し可能なルーフを持つロードスタースタイルで、オープンエアドライブを楽しめる設計となっています。一方、Speedtopは固定ルーフにリアハッチを備えた2ドアのシューティングブレークで、よりツーリング志向かつ実用性の高い構造が特徴です。
Skytopがスタイルと感性に重きを置いた「走る彫刻」だとすれば、Speedtopはその芸術性を保ちつつ、日常性と旅の快適さを両立させた「機能を持つ芸術品」とも言える存在です。
Q7. 日本での販売は?購入できるの?
スピードトップは、残念ながら現時点では日本国内での正式販売は予定されていません。BMWはこのモデルを、主に欧州市場のコレクターや富裕層をターゲットにした限定販売としており、販売台数はわずか70台のみです。
購入希望者は、BMW本社の「ラグジュアリープログラム」専任チームを通じて、個別に問い合わせ・契約を行う形式となっています。選ばれた顧客のみが招待される形で、一般販売は実施されません。
このため、日本国内での新車購入は極めて困難ですが、今後ヨーロッパからの逆輸入や、中古市場での流通が発生する可能性もあります。その希少性と完成度の高さから、将来的にはクラシックカー市場での高評価が期待される一台です。
まとめ
BMWスピードトップは、現代の自動車が持ちうる芸術性と実用性を極限まで高めた「走る芸術品」と言える存在です。デザイン、スペック、クラフトマンシップのすべてにおいて徹底されたこだわりが貫かれており、まさにBMWの美意識と技術の結晶といえます。
その希少性と完成度は、単なる限定車を超えたプレミアムな価値を宿しており、自動車文化の中でも特別な地位を築くことになるでしょう。Speedtopは、BMWがこれからのラグジュアリーをどう定義し、提案していくのかを示す象徴的なモデルです。
Reference:bimmertoday.de
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