2025年春、MINIの人気オープンモデル「ミニクーパーS コンバーチブル」に最新型となるF67が登場しました。
上質なデザインと軽快な走りを両立させたこのモデルは、街乗りにも長距離ドライブにも最適な存在として多くのファンに支持されています。
今回のF67では、外観は旧型F57の特徴を継承しつつも、エンジン性能の向上や最新のデジタルインターフェースの導入、運転支援機能の強化など、内側からの大幅な進化が注目ポイントです。
本記事では実際に試乗した視点から、F67とF57の違いを丁寧に比較し、買い替えを検討している方やMINIに初めて興味を持った方に向けて、その魅力をわかりやすく解説していきます。
- デザインはF57を継承しつつ洗練:見た目は大きく変わらないが、細部がモダンにアップデート。
- パワーアップしたがMTは廃止:201馬力に進化。ただしマニュアルとパドルは非搭載。
- 室内はデジタル重視に刷新:円形OLED画面や新素材で未来感あるインテリアに。
デザインの違い―F67はなぜ“あえて変えなかった”のか?

伝統を継承しつつ、フロント周りにさりげない進化
MINIといえば、どこか懐かしさを感じさせる丸みを帯びた独特のフォルムが印象的です。
新型F67でも、このブランドらしい外観はしっかりと受け継がれています。
F57と並べて見比べても、一見しただけでは大きな変化は感じられないかもしれません。
しかし、この“変わらなさ”には実は明確な理由があるのです。
まずフロント部分では、ヘッドライトの内部構造がアップデートされ、よりシャープで現代的なLEDサインが採用されています。
また、グリル周りもわずかにシンプル化され、洗練された印象に仕上がっています。
それでもF67が大胆な変化を避けたのは、「MINIらしさ」を失わないことを重視しているからです。
リアは構造上の制限で旧型デザインを維持

一方リアに目を向けると、F67は先に登場した新型ハッチバックモデルと異なり、従来の縦型テールランプを継続しています。
これはデザイン的なこだわりというより、コンバーチブルという構造上の制約が背景にあります。
折りたたみ式ルーフの収納スペースを確保するため、新しい三角形状のテールライトを物理的に組み込むことが難しかったのです。
見た目は控えめ、でもMINIらしさは健在
つまり、F67のデザインは“守りの一手”ではあるものの、それは単なる妥協ではありません。
過去の魅力を大切にしつつ、細部に現代的な感覚を加えることで、MINIらしいバランス感を保っています。
さらに、ボディカラーやホイールデザインにも新たなバリエーションが加わり、見た目に新鮮さを与えています。
目新しさは控えめでも、街中での存在感は健在。
F57オーナーにとっても「乗り換えたい」と思わせるだけの外観の魅力はしっかり残っています。
このように、F67のデザインは大胆な進化ではなく、“MINIらしさの再確認”ともいえる方向性でまとめられています。
変化よりも個性を大切にするブランド哲学が感じられるポイントです。
走りの進化―エンジン性能はアップ、でもマニュアルは?
201馬力へと進化した2.0Lターボエンジン
新型F67でまず注目したいのは、2.0リッター直列4気筒ターボエンジンの強化です。
従来のF57では192馬力だったのに対し、F67では201馬力へと引き上げられました。
トルクは引き続き同等のレベルを維持しながらも、よりリニアな加速感が得られます。
カタログ上の0-100km/h加速は6.7秒となっており、従来型と比べて若干速くなっていますが、実際の街乗りではその数字以上に力強さを感じさせます。
このパワーアップにより、高速道路での追い越しや山道での登坂でも余裕のある走りが可能に。
エンジン音も適度に演出されており、ドライバーの感覚にしっかりと応える味付けがなされています。
7速DCTに統一された変速機構
トランスミッションは7速デュアルクラッチ(DCT)に一本化され、変速はスムーズかつ素早く、低速域でもギクシャク感のない操作感が印象的です。
特に市街地では、発進から加速までのレスポンスがよく、ストレスを感じることはほとんどありません。
DCTはパドル操作でもスポーティなシフトが楽しめるはず…ですが、ここに意外な落とし穴があります。
マニュアル廃止とパドルシフト非搭載のショック

F57まで用意されていた6速マニュアルトランスミッションは、F67ではついに廃止されました。
特にアメリカ市場では、MINIの「ゴーカートフィーリング」を純粋に味わいたい層にとって、マニュアルの選択肢がなくなったのは大きな痛手です。

さらにショックだったのは、パドルシフトがF67の「ジョンクーパーワークス(JCW)」以外のモデルに装備されていない点です。
せっかくのDCTを手元で操作できないことに不満を抱くユーザーも少なくないでしょう。
シフトレバーでのマニュアル操作は可能ですが、走りの楽しさに直結する部分だけに、装備の省略は物足りなさを感じさせます。
運転フィーリング―F57と何が違う?乗り比べで感じたこと
シャシー剛性がもたらす安心感ある走り
F67では、車体構造の見直しによりシャシー剛性が高められています。
特にオープンモデルは構造上ねじれが生じやすいため、剛性強化は重要なポイントです。
実際に試乗してみると、F57と比べて段差を越えるときやカーブでのボディのよじれ感が減少し、車全体がどっしりと安定している印象を受けました。
路面からの振動も適度に吸収され、長距離運転でも疲れにくい乗り味に仕上がっています。
トレッド幅の拡大とステアリングの精度向上
F67は前後ともにトレッド幅が拡大されており、それが走行安定性の向上につながっています。
ステアリング操作に対する応答も良くなっており、特にワインディングロードでは狙ったラインにスッと乗せられる感覚が増しました。
F57よりも車との一体感が感じられ、MINIらしい“キビキビした走り”がより洗練されたかたちで楽しめます。
また、ステアリングの重さも適切で、高速域ではしっかり感があり、低速域では軽快な操作感を維持。
街中でも取り回しやすく、女性ドライバーにも扱いやすいセッティングとなっています。
サスペンションの改良による快適性の向上
足まわりも見直されており、F67では乗り心地が一段と向上しています。
特に路面の凹凸を通過した際の振動が柔らかく処理されており、F57に比べてよりフラットな乗り心地に。
硬さを感じやすかった先代モデルよりも、日常使いでの快適性が高まっている点は大きな進化と言えるでしょう。
総じてF67は、F57で感じられたMINIらしい楽しさをしっかり継承しつつ、細かな改良によってより洗練されたドライビングフィールを実現しています。
変化は控えめながらも、運転して初めてわかる違いが確かにあります。
インテリアとテクノロジー―アナログからデジタルへ
センターに浮かぶ円形OLEDモニターの存在感
新型F67のインテリアで最も目を引くのは、ダッシュボード中央に配置された円形のOLEDディスプレイです。
9.5インチの高精細なこのスクリーンは、従来の物理メーターを一掃し、スピードやナビ、メディア操作などの情報を集約。視認性と応答性に優れ、昼夜を問わず非常に見やすいのが特徴です。
インターフェースはタッチ操作が中心となり、スマートフォン感覚で直感的に扱える一方で、従来のボタン式操作に慣れていたユーザーにとってはやや戸惑う部分もあります。
未来的でクリーンな印象は強いものの、走行中の操作には少し慣れが必要です。
Vescin素材が生むサステナブルな質感
シートやパネルの表面には、MINIが新たに採用した合成素材「Vescin(ヴェスキン)」が使われています。
レザー調の質感を持ちながら動物由来ではなく、環境負荷を抑えた素材として注目されています。
触り心地はしっとりしており、質感にも優れているため、従来のレザーと比較しても大きな違和感はありません。
また、夏場の直射日光下でも熱を吸収しにくく、コンバーチブルにとっては実用的な利点もあります。
一方で、本革にこだわるユーザーにとっては、好みが分かれる素材でもあります。
物理スイッチ減少でシンプル化された操作系
F67では、インテリアのスイッチ類が大幅に削減されました。
エアコン操作や各種ドライブモードの切り替えなども、基本的にタッチパネル上で行う設計になっています。
見た目は非常にミニマルで洗練されていますが、操作の一部が画面に集約されたことで、走行中の使い勝手にはやや課題が残る部分も。
また、ナビゲーションシステムは車両と統合されており、EVモデルではバッテリー残量や充電ステーションの案内機能なども搭載されています。
ルート案内の正確性は高く、拡張現実(AR)による矢印表示も選べる点は、スマホナビにはない魅力といえるでしょう。
F57からの乗り換えを考える場合、このインテリアの「デジタル化」が大きな違いとして感じられるはずです。
未来志向の装備とユーザー体験の刷新は、MINIが次の時代に向けて大きく舵を切った証でもあります。
まとめ:F57からF67へ、買い替える価値はある?
走行性能・快適性を重視するならF67は「買い」
新型F67は、見た目の変化こそ控えめなものの、走行性能の向上や乗り心地の改善など、日常的な使い勝手の面で着実な進化を遂げています。
特にシャシー剛性やトレッド幅の拡大によって、コーナリング中の安定性や直進時の安心感が高まり、走行中の疲労感も軽減されました。
また、2.0Lターボエンジンのパワーアップにより、余裕ある加速が楽しめるようになった点も見逃せません。
F57に比べて「より自然でなめらかな走り」を求めるユーザーにとっては、F67は確実に満足度の高い選択となるでしょう。
内装の近代化に価値を感じる人に向いている
F67では、インテリアのデジタル化と質感向上も大きなポイントです。
円形OLEDモニターやVescin素材など、従来のMINIとは一線を画すモダンな室内空間が広がっています。
スマートな操作系やARナビのような最新機能に魅力を感じる人にとっては、F67は非常に魅力的です。
一方で、物理ボタンの減少やマニュアル車の廃止など、「操作する楽しさ」を求めていた層にはやや物足りなさを感じるかもしれません。
F57オーナーへのアドバイス:今の満足度次第で判断を
すでにF57に乗っている方にとって、F67への乗り換えは「明確な違いがあるものの、大きな変革ではない」というのが正直な印象です。
特に外観デザインに関しては大きな変更がないため、見た目の新鮮さを求めている場合は物足りなさを感じるかもしれません。
ただし、運転感覚や内装の快適性は確実に進化しており、日々のドライブで得られる満足度は確実に高まっています。
「今のF57に不満はないが、さらに快適に走りたい」「よりスマートなインテリアを楽しみたい」と感じている方には、F67は魅力的なステップアップとなるでしょう。
Reference:motoringfile.com
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