BMW M6グランクーペ(F06)は「ラグジュアリーな4ドアM」という少し特殊な立ち位置のため、いま改めて語られる機会は多くありません。
ただ、北米には“別物”と言っていい仕様が存在します。
6速マニュアル(6MT)仕様です。
しかも集計では、M6グランクーペのMT車は生産わずか103台とされています。
では、なぜBMWはオートマ全盛期に3ペダルを用意し、しかも北米だけで販売したのでしょうか。
❗️記事3行まとめ
✓BMW M6グランクーペF06に6速MTが存在
✓北米限定になった理由は需要とコストの差
✓米国中古車市場でも6速MTは数えるほど希少
BMW M6グランクーペ F06とは?
F06型のBMW M6グランクーペは、6シリーズ・グランクーペをベースにBMW Mが仕立てた高性能4ドアモデルです。
エンジンは4.4L V8ツインターボ(S63系)で、当時のフラッグシップ級の加速と高速域の余裕を両立していました。
見た目はクーペライクでも、実際には大人4人で長距離をこなせるGT的な性格が強く、「速いけれど快適」まで含めて完成させたのがM6グランクーペの魅力です。
一般的には7速DCT(M DCT)がセットで語られることが多く、3ペダルの印象は薄いモデルだと思います。
BMW M6グランクーペ 6速仕様の詳細
結論から言うと、M6グランクーペには公式に6速マニュアルが用意されていました。
2013年の北米BMWのプレスリリースでは、2014年型のM6(クーペ/カブリオレ/グランクーペ)に対して「optional 6-speed manual transmission(オプションの6速マニュアル)」が設定されると明記されています。
さらに同リリースは、6速MTが追加費用なしで選べたこと、そしてBMW M GmbHのエンジニアが約2年をかけて開発したことも説明しています。
内容が面白いのは“ただ付けました”で終わらない点です。
リリースによれば、この6速MTにはダウンシフト時に回転数を自動で合わせる制御(EFFICIENT/SPORTでは自動、SPORT+では解除)が含まれ、ドライバーの関与度をモードで変えられる設計になっています。
MTに「扱いやすさ」と「自分で合わせる楽しさ」を両立させようとした作り込みが読み取れます。
なぜ北米のみでM6グランクーペ 6速仕様が販売されたのか?
「需要があるのは米国、欧州ではほとんど求められない」──BMW M開発責任者の説明
なぜ、M6グランクーペの6速マニュアルは北米だけで成立したのでしょうか。
この点については、BMW側の説明を整理すると比較的はっきりしてきます。
当時BMW Mの開発責任者を務めていたアルバート・ビアマン氏は、マニュアルトランスミッションの設定について
「開発や認証にコストがかかる一方で、選ばれる割合(テイクレート)は決して高くない」
という現実を語っています。
つまり、すべての市場で用意すると、ビジネスとして成り立ちにくい装備だったということです。
一方で、M5やM6といったMのフラッグシップモデルについて、ビアマン氏は
「多くの国ではすでにマニュアルを求める声がほとんどなくなっている」
とも説明しています。
その中で例外だったのが米国市場でした。
米国では当時でも一定数のマニュアル志向の顧客が存在し、実際に採用比率は15〜20%程度で推移していたとされています。
M5セダン F10から流用された6速MT
実は、M6グランクーペと同じ時期に販売されていた BMW M5 にも、北米向けには6速マニュアルが用意されていました。
ビアマン氏が語る「米国ではまだマニュアルの需要がある」という説明は、M6グランクーペ単体の話ではなく、当時のM5を含めたMフラッグシップ全体の販売構成とも一致しています。
逆に言えば、欧州を含む他の地域では、その水準にまったく届いていなかったということです。BMW側が「欲しがる人がほとんどいない」と表現するほど、地域による需要差は明確でした。
こうした事情を踏まえると、M6グランクーペの6速マニュアルが北米限定になった理由はシンプルです。
マニュアルを成立させるだけの需要が実際に存在し、なおかつ追加コストを正当化できる市場が、北米しかなかったという点に集約できます。
BMW M6グランクーペ 6速仕様の希少性
BMW M6グランクーペの6速マニュアル仕様は、生産台数が少ないだけでなく、米国の中古車市場においても極端に出現頻度が低いモデルです。
実際、Cars.comやAutotrader、CarGurusなど主要な米国中古車サイトを横断的に見ると、M6グランクーペの掲載台数はおおむね30〜50台前後確認できますが、そのほぼすべてが7速DCT仕様です。
その中で「Manual」や「6-speed」と明記された個体は、常時掲載されているわけではなく、例外的にオークションサイトなどに姿を現す程度にとどまります。
今回取り上げている2015年式の6速マニュアル車も、その希少な例のひとつで、Cars & Bidsにて最低落札価格なしで出品され、41,250ドル(約619万円、1ドル=150円換算)で落札されました。
数十台単位で流通するDCT車の中に、数えられるほどしか存在しない6速仕様が紛れている。
この状況こそが、M6グランクーペ6速マニュアルの希少性を端的に示しています。
日本でM6グランクーペ 6速仕様の中古車価格予想
日本のM6グランクーペの価格は高値安定
今回紹介した6速MT仕様のM6グランクーペが希少性の高いモデルであることはわかりました。
仮にこの希少性の高いM6グランクーペが日本にも存在した場合は、どのぐらいのプレミア価格が付くのでしょうか?
この記事を書いている2026年1月下旬のカーセンサーには、M6グランクーペが10台掲載されています。
その車両本体価格の平均値は約500万円と販売から10年以上経過している車両としては、思ったよりも高い価格を維持しているように感じます。
2024年式M3セダン ファイナルエディション

今回限定のMT車としてM3セダン ファイナルエディション G80と同年式のAT車の価格を比較して、それをM6グランクーペに当てはめたいと思います。
2026年1月下旬に掲載されているファイナルエディションの台数は8台で平均価格は1,177万円です。
同じ年式のM3セダン G80のAT車は掲載台数3台で平均価格は1,166万円でした。
プレミアム価格差はたった1%しか発生していないことになります。
限定150台の車が8台もカーセンサーに掲載されていたことが、このプレミアム価格差の引く際になっているのでしょうか?
6速MT仕様のM6グランクーペのプレミア価格
現在の通常のM6グランクーペの中古車価格の平均は500万円。
M3セダンファイナルエディションのプレミア価格差は1%。
この結果、6速MT仕様のM6グランクーペが存在した場合の販売価格は501万円。
日本ではハイクラスの価格帯で新車販売されていたM6グランクーペでは、6速MTというのはプレミアムにならない、という仮説が成り立ってしまいました。
比較したM3セダンファイナルエディションも思った以上にプレミアムがつかない価格で販売されていることを考えると、日本では趣味性が高いこの価格帯の6速MTはマニア向けとして売りにくい車種になっているのかもしれません。
BMW Mの開発責任者を務めていたアルバート・ビアマン氏が、北米でしか需要がないと言った言葉は真実だということが実証されました。
まとめ:M6グランクーペ 6速MTは北米しか売れない
アメリカで需要があると言われたM6グランクーペの6速MT仕様ですが、現在も中古車としての人気も高く、まだまだ人気の高い1台であることはわかりました。
日本では仮にM6グランクーペに6速MT仕様が存在したとしても新車の段階でほぼ売れない仕様となっていたのは確実です。
また、日本における1,000万円を超える高級車では、M3と言えどもMT車にはプレミアム価格はつかないこともわかりました。
しかし、M3ファイナルエディションも150台しか新車は存在しないため、カーセンサーに8台掲載されているとは言え、たった8台とも言うこともできます。
希少性の高く販売台数が少ない車種がカーセンサーに掲載されるのは稀です。
そんな場合は中古車のプロに探してもらうなど探す努力が必要になるかもしれません。
Reference:jalopnik.com
よくある質問(FAQ)
Q1. BMW M6グランクーペ(F06)に6速マニュアルは本当に存在しますか?
はい。北米向けの2014年モデルイヤー情報など、BMWの公式発表で6速マニュアル設定が明記されています。
Q2. 6速マニュアルはどの市場で販売されたのですか?
基本的に北米市場向けです。日本や欧州では一般的にDCT(7速)中心で、6速マニュアルは流通が極めて限定的です。
Q3. 6速マニュアルが北米のみになった理由は何ですか?
当時のBMW M開発責任者の発言からは、需要が見込める市場に限定しないと開発・設定コストを回収しにくい、という背景が読み取れます。
Q4. 6速マニュアル仕様は中古車市場でも希少ですか?
はい。米国の主要中古車サイトではM6グランクーペ自体は一定数掲載される一方、6速マニュアル表記の個体は例外的で、オークション等で稀に確認される程度です。
Q5. 今回紹介したCars & Bidsの個体はいくらで落札されましたか?
2015年式の6速マニュアル車がNo Reserveで取引成立し、落札価格は41,250ドル(約619万円、1ドル=150円換算)でした。









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