スープラとZ4という2台の兄弟車が、約10年にわたる共同開発の歴史に幕を下ろしました。
トヨタはGRスープラの次期型を完全に自社で開発すると発表し、BMWとの提携を解消しました。
一方のBMWは、Z4の後継開発について明確な方向性を示していません。
スポーツカー市場が縮小する中で、両社は今後どう動くのでしょうか。
本記事では、スープラの新たな進化とZ4の存続問題について詳しく解説します。
- スープラは完全内製へ:トヨタは次期GRスープラを自社開発し、BMWとの提携を解消しました。
- ハイブリッドで400馬力級:新型スープラは2.0Lターボと電動モーターを組み合わせて高出力を維持。
- Z4は存続の岐路に立つ:BMW Z4は後継モデルの計画が不透明で、生産終了の可能性もあります。
スープラとZ4の“兄弟関係”はなぜ生まれたのか
2019年に登場したトヨタのGRスープラ(A90型)は、BMW Z4(G29型)と多くのコンポーネントを共有しています。
両車は共通のプラットフォームをベースに、オーストリアのマグナ・シュタイア社で並行して生産されました。
スープラにはBMW製の3.0リットル直列6気筒ターボエンジン(B58型)が搭載され、Z4 M40iにも同じパワートレインが採用されていました。
この共同開発は、スポーツカーの開発・生産コストを分担するという目的で始まりました。
2シーターのピュアスポーツカー市場は販売台数が限られるため、1社単独では採算が取りづらいのが現実です。
トヨタは長年スープラの復活を模索しており、BMWにとってもZシリーズの存続にはコスト面での工夫が不可欠でした。
この戦略は一定の成果を上げました。
GRスープラは北米や日本市場で人気を集め、BMW Z4に比べて販売台数が上回る国もありました。
一方で、両社のクルマ作りに対する価値観の違いが次第に顕在化し、2025年には次期型スープラの「完全内製化」が決定され、関係は終焉を迎えることになります。
トヨタが選んだ「独自開発」という決断
なぜBMWとの提携を終了したのか
トヨタが次期GRスープラを独自に開発する方針を打ち出した背景には、いくつかの理由があります。
まず一つは、BMWとの協業によって実現した現行モデルに対し、トヨタ社内やユーザーの一部から「BMW色が強い」という声があったことです。
エンジンやインフォテインメントシステムなど、多くの主要パーツがBMW製であるため、トヨタらしさに欠けるという印象を与えていました。
また、ガズーレーシングを中心とするトヨタのモータースポーツ部門が、スポーツモデルの技術開発力を強化してきたことも大きな要因です。
GRヤリスやGRカローラの成功によって、トヨタは「スポーツカーを自前で作れる」という自信を得たといえるでしょう。
欧州の排出ガス規制の強化や、今後の電動化への対応を見据えたとき、外部依存ではなく社内で柔軟に対応できる体制を整える必要があると判断された可能性もあります。
次期スープラはトヨタ製2.0Lハイブリッドに
次期GRスープラには、トヨタが独自に開発する2.0リットル直列4気筒ターボエンジンに電動モーターを組み合わせたハイブリッドパワートレインが搭載されると報じられています。
最高出力は約400馬力とされており、現行の3.0L直6ターボエンジン(B58型)と同等のパフォーマンスが維持される見込みです。
ただし、ハイブリッド車にマニュアルトランスミッションを組み合わせるのは技術的に難しく、トランスミッションの選択肢は今後の発表を待つ必要があります。
一方で、他社製エンジンを採用する案も検討されており、マツダの3.3リットル直列6気筒ターボ(e-Skyactiv G)を流用する可能性も噂されました。
しかし、マツダ製エンジンはサイズや重量の面で課題があり、スープラの軽量・低重心なパッケージには適さないとの報道もあります。
そのため、トヨタは最終的に自社製ユニットに絞ったと見られています。
ハイブリッドながら400馬力級の出力を実現することができれば、新型スープラは次世代のスポーツカー像を象徴するモデルになるかもしれません。
ただし、スープラに4気筒エンジンを搭載したモデルをTOPモデルとすることは、これまで6気筒エンジンをTOPモデルとしてきた伝統に反することになり、ファンからの失望の声が大きくなることが予想されます。
4気筒ハイブリッド、マツダ製エンジンと現在報じられているエンジンのチョイスは、あまり現実的ではないのではないでしょうか?
BMW Z4は今後どうなる?明確な計画なき「空白」
Z4が置かれた厳しい市場環境
BMW Z4はG29型として2018年に登場し、スープラと並行してマグナ・シュタイア社で生産されてきました。
しかし、Z4の販売は決して順風満帆とは言えず、特に北米市場ではスープラに後れを取る結果となりました。
近年はSUV人気の高まりや、2シーター・オープンカー市場の縮小が続いており、Z4のようなモデルはコスト面での不利が目立ちます。
また、Z4はBMW本社ではなく外部委託で生産されているため、同社にとってはコントロールが難しく、利益率の確保も課題となっています。
さらに、オープンモデルとしてのZ4は、Mスポーツ系やiシリーズと比べると企業戦略上の優先度が低く、次期型に向けた投資判断がなかなか下りない状況にあります。
次期型Z4は2030年以降?BMWの沈黙

当初2025年10月で生産終了と見られていたZ4は、現在では2026年3月までの延命が決定されています。
しかし、BMWは次期型Z4の存在について公式には言及しておらず、社内からも明確な開発計画は示されていないとされています。
仮に開発が進行していたとしても、新型車の登場には少なくとも3〜4年が必要となるため、次世代Z4が市販化されるのは早くても2029〜2030年と見込まれます。
Zシリーズ消滅の可能性とその代替路線
現在のBMW ZシリーズはZ4を最後に終了する可能性があるとも言われています。
Z4は数少ない後輪駆動・オープンカーとして貴重な存在ですが、時代の流れはより実用性の高い電動SUVやクロスオーバーへとシフトしています。
今後Zシリーズが続くとすれば、BEV(バッテリー式電気自動車)スポーツモデルとしての再構築が必要になるでしょう。
一方で、BMW社内には「Z4の名前を残しつつ、新しい方向性で展開する」という構想もあるようです。
既存のCLARプラットフォームを活用して延命する案や、将来的に電動スポーツカーとしてZシリーズを復活させるという選択肢も考えられています。
ただし、どの方向性に進むにせよ、明確なパートナー不在の現状では具体化には時間を要すると考えられます。
例えば、アメリカでの6速ミッション車を設定したことで販売が好調に推移していることを考えると、全く2シーター、FR、マニュアル車が需要がないということではありません。
ひとつの可能性としては、G29型Z4の生産を継続すること。
これまでも大きなLCIは行われていないため、今後も小さな改良のみを続けてG29型を延命させる選択肢は本当にないのでしょうか?
別れゆくスープラとZ4、それぞれの未来
スープラとZ4は、異なるメーカーによって開発されながらも共通の技術を持ち、スポーツカーとしての魅力をそれぞれのブランドで発揮してきました。
しかし、両車の道は2025年を境に大きく分かれることになります。
トヨタは独自のハイブリッドパワートレインを軸に、次期スープラを「完全自社製」のスポーツカーとして再構築しようとしています。
一方のBMWは、Z4の将来について明確な方向性を示しておらず、Zシリーズそのものの終焉すら視野に入ってきました。
この分岐は、自動車業界全体が直面している構造転換を象徴しています。
電動化や環境規制、販売台数の制約など、従来のピュアスポーツカーが直面する課題は多岐にわたります。
トヨタは自社の技術力を活かして次の一手を打ち出す決断をしましたが、BMWはZ4という低ボリューム車に対して大きなリソースを投じることに慎重です。
次世代スープラが新しい時代のスポーツカーとして注目を集める中、Z4の今後の動向にも目が離せません。
かつての兄弟車がそれぞれの道を歩み始めた今、その未来がどのような形で交差するかは、まだ誰にもわかりません。
未来は誰にも予想ができません。
初代GRスープラがBMWのオープンカーであるZ4と共同開発することも誰も予想していませんでした。
であれば、二代目のGRスープラの兄弟車としてトヨタ製の2シーターオープンカーが誕生してもおかしくはありません。
Reference:motorillustrated.com
よくある質問(FAQ)
Q1. 次期GRスープラの発売時期はいつ頃ですか?
2027年モデルとして登場する見込みですが、正式な発売日はトヨタからの発表を待つ必要があります。
Q2. 次期スープラはどのようなエンジンになりますか?
トヨタ独自の2.0リットル直列4気筒ターボ+ハイブリッドの組み合わせが採用されると報じられています。
Q3. マニュアルトランスミッションは引き続き選べますか?
ハイブリッド車との組み合わせは技術的に難しく、現時点では未定ですが非搭載の可能性が高いと見られています。
Q4. BMW Z4の次期型は開発されるのですか?
公式な発表はなく、開発が行われていたとしても発売は早くて2029〜2030年以降と予想されています。
Q5. スープラとZ4の提携が終了した理由は何ですか?
ブランド間の開発思想の違いや、トヨタが自社開発能力を高めたことが主な理由とされています。
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