欧州がガソリンエンジン100%禁止を撤回したい理由欧州連合(EU)は、2035年から新車のガソリンエンジンやディーゼルエンジンを完全に禁止し、すべての新車をゼロCO2排出車にするという計画を採用しました。

この政策は、気候変動への対応として重要視されており、自動車業界に対しても大きな変革を求めています。

しかし、この目標に対し、BMWをはじめとするいくつかの自動車メーカーが再考を求めています。

特に、BMWのCEOであるオリバー・ジプセ氏は、技術的な柔軟性を保つ必要があると強く主張しており、欧州が2035年のガソリンエンジン禁止計画を撤回すべきだと訴えています。

この記事では、欧州がガソリンエンジン禁止の再考を求める背景と理由を詳しく見ていきます。

この記事のポイント

1. 技術的多様性の必要性
BMWをはじめとする自動車メーカーは、バッテリー電気自動車(BEV)だけでなく、e-fuelsや水素燃料など他の技術も採用すべきだと主張

2. 中国バッテリー依存の懸念
2035年までに完全EV化を進めると、欧州自動車業界が中国のバッテリー供給に過度に依存するリスクが高まるという懸念

3. 自動車業界の競争力維持
ガソリンエンジン禁止が欧州自動車メーカーに不利な影響を与えかねない

ガソリンエンジン禁止計画の背景

EUは、2035年からガソリンエンジンやディーゼルエンジンの新車販売を完全に禁止し、ゼロCO2排出車(バッテリー電気自動車や燃料電池車)のみを許可するという目標を掲げています。

また、2030年までにCO2排出量を2021年比で55%削減することも目指しています。

これにより、欧州全体の自動車市場が持続可能な形にシフトし、気候変動対策に貢献できると期待されています。

しかし、この計画に対しては、BMWやフォルクスワーゲン(VW)、ルノーといった主要な自動車メーカーから反対の声が上がっています。

これらの企業は、ゼロCO2排出車に100%依存することが、技術的および経済的な面で課題を抱えていると指摘しています。

BMWの立場:技術的多様性の必要性

BMWのオリバー・ジプセCEOは、2035年のガソリンエンジン禁止を撤回し、技術的に柔軟なアプローチをとるべきだと強調しています。

彼が提案する「技術的多様性」とは、バッテリー電気自動車(BEV)だけでなく、e-fuels(合成燃料)やバイオ燃料、さらには水素燃料電池車などの技術も取り入れるべきだというものです。

これにより、CO2排出を抑えつつ、自動車業界の競争力を維持できると考えています。

ジプセ氏は、特にEUが2035年に「100%バッテリー電気自動車(BEV)」を目標とすることに懸念を示しており、それが欧州の自動車メーカーを中国のバッテリー供給に過度に依存させるリスクがあると指摘しています。

中国へのバッテリー依存の懸念

欧州がガソリンエンジン100%禁止を撤回したい理由(引用元:provej.jpより)

現在、電気自動車(EV)のバッテリー供給は、主に中国に依存しています。

中国はリチウムイオンバッテリーの主要な生産国であり、欧州の自動車メーカーにとって欠かせない存在です。

しかし、これに過度に依存することは、供給チェーンのリスクや価格変動の影響を受けやすくなるという課題を引き起こしています。

ジプセ氏が主張するように、2035年に100%電気自動車へ移行することは、欧州自動車業界が中国のバッテリー供給に依存し続ける結果を招く可能性があります。

そのため、技術的な多様性を保つことで、このリスクを軽減し、欧州独自の競争力を維持する必要があるとしています。

他の自動車メーカーや国々の声

BMWだけでなく、フォルクスワーゲン(VW)やルノーといった他の自動車メーカーも同様の懸念を表明しています。

これらの企業は、EV販売が予想ほど伸びておらず、2035年までに完全にガソリンエンジン車を禁止することが現実的ではないと考えています。

さらに、イタリア政府やフランスの自動車業界も、2035年のゼロCO2排出目標に対して再検討を求める声を上げています。

特に、2026年に予定されている政策のレビューが注目されています。

これにより、現実的な目標と自動車業界の競争力を両立させるための議論が行われる見通しです。

CO2削減目標と現実のギャップ

EUは、2030年までにCO2排出量を2021年比で55%削減することを目指していますが、この目標と現実にはギャップが存在します。

特に、EVの販売が期待通りに進んでいないことが問題です。

消費者が電気自動車を購入する際、充電インフラの整備不足や高額な価格がネックとなっています。

その結果、多くの自動車メーカーは、CO2削減目標を達成できないリスクを抱えており、規定通りに進まなかった場合、厳しい罰金が科せられる可能性があります。

これが、自動車メーカーにとって大きなプレッシャーとなっています。

気候変動と産業のバランス

一方で、気候変動対策の重要性はますます高まっています。

世界的な温暖化を防ぐためには、CO2排出量の削減が不可欠です。

しかし、産業界の競争力を維持するためには、急激な変化は避けるべきだという意見もあります。

特に、自動車業界は欧州の経済に大きく貢献しているため、この業界を急激に変革させることが経済に与える影響も無視できません。

そのため、BMWをはじめとする自動車メーカーは、気候変動対策と産業の競争力をバランスよく保つために、2035年のガソリンエンジン禁止を再考するよう求めています。

表の事情:環境対策・裏の事情:トヨタのHV車の撲滅

2035年に向けたガソリンエンジン禁止計画は、気候変動対策の一環として重要な目標ですが、現実的な課題も多く存在しています。

電気自動車への完全な移行が技術的および経済的に困難であるため、BMWのオリバー・ジプセCEOが提唱するように、技術的多様性を保ちながら進めることが求められています。

e-fuelsや水素燃料電池といった他の技術も取り入れることで、欧州自動車業界は中国への依存を減らし、競争力を維持しつつ、持続可能な未来に向けた道筋を築くことができるでしょう。

政策の柔軟な対応が求められる今、欧州は技術に依存しない多様なアプローチを採用するべきです。

今回の欧州の2035年から新車のガソリンエンジンやディーゼルエンジンを完全に禁止の理由は、表向きは環境問題となっていますが、実際にはトヨタ自動車を筆頭とするハイブリッド車に欧州が太刀打ちできないためです。

そのため一時的にディーゼルエンジンの普及を目指しましたが、フォルクワーゲンショックの影響で立ち消えになり、その代替案が2035年からのEVしか新車販売しない、という取り決めです。

要するに、欧州の自動車メーカーに有利になるようにルールを変えたわけですが、思ったように物事が進まないが今更ルールを変更するとは言い出せない。

そこで、BMWなどの欧州自動車メーカーからガソリンエンジンの延命を言わせることで、既成事実化することで2035年問題をあやふやにしたいと考えていると思われます。

よって、当面はいろんな種類の自動車が混在し取捨選別される時代になるのではないでしょうか?

Reference:timeslive.co.za