メルセデス・ベンツがBMWの2.0リッター直列4気筒ガソリンターボ「B48」を導入する――そんな噂は、最新の公式発言により否定されました。
本稿では、報道の経緯と事実関係を整理し、メルセデスが自社の新世代モジュラーエンジン「FAME(Family of Modular Engines)」で規制対応と電動化をどう進めるのかを解説します。
- 公式否定で噂終結:メルセデスがBMW B48エンジン導入を明確に否定。報道は現時点で誤報と結論づけられます。
- FAMEエンジンを主力化:4気筒からV12まで対応する新モジュラーFAMEで、規制対応と電動化を両立します。
- 規制とコストの背景:Euro7規制や電動化投資が噂拡大の土壌となり、提携が合理的と見られた理由を解説します。
何が報じられていたのか(B48導入の噂の全体像)

2025年8月、欧州発の報道を起点に「メルセデスがBMWのB48を供給受けする」「導入開始は2027年」「対象はCLA/GLA/GLBなど横置き系の小型車や、CクラスやEクラスのプラグインハイブリッド(PHEV)まで拡大する可能性がある」といった観測が拡散しました。
背景には、開発コストの圧縮、量産規模の確保、そしてEuro7など環境規制への適合を効率化したい思惑があると解説されました。
これらは自動車メディアや掲示板、SNSで大きく取り上げられ、両社の“歴史的提携”といった刺激的な見出しも目立ちました。
噂の根拠として挙げられたポイント
第一に、B48はBMWおよびMINIの広範な車種で実績があり、排出ガス規制やハイブリッド化に適した拡張性を持つと評価されている点。
第二に、メルセデス側の小排気量エンジン更新やPHEV強化のタイミングと合致するという点。
第三に、米欧中それぞれの規制や関税環境を踏まえ、エンジンの国際生産体制を柔軟に設計できる可能性がある、という点でした。
こうした“合理性”が、噂の信ぴょう性を押し上げたのです。
しかし9月になると状況は一変します。IAAミュンヘンでメルセデスのCTOマルクス・シェーファー氏が「事実ではない」と明確に否定。
自社開発の新モジュラー群「FAME」で4気筒からV8、V12までをカバーし、EU7/China7/米国規制に適合させる方針を強調しました。
これにより、B48供給の観測は公式に退けられた形です。
メルセデスの公式否定:CTOが語った真実
2025年9月、ドイツ・ミュンヘンで開かれたIAAモビリティにて、メルセデス・ベンツの最高技術責任者(CTO)マルクス・シェーファー氏が決定的な発言を行いました。
シェーファー氏は
「BMWからのエンジン供給に関する話は事実ではない。次世代エンジンはすべて自社開発による」
とコメント。
これにより、B48エンジン導入の噂は公式に否定されました。
シェーファー氏はさらに、今後の内燃機関戦略として新モジュラーエンジン群「FAME(Family of Modular Engines)」を全面展開する方針を改めて強調しました。
明確化されたFAMEエンジン戦略
FAMEは4気筒からV8、V12までの幅広い排気量を同一設計思想でカバーするモジュラーエンジンです。
メルセデスはこの開発でハイブリッド化や最新の排出ガス規制への対応を最初から組み込み、欧州のEuro7、中国のChina7、米国のTier3規制に適合させる予定です。
これにより既存ラインアップのエンジンを段階的に刷新し、環境性能とコスト効率の両立を目指します。
提携の可能性を断った理由
シェーファー氏は具体的な数値には触れなかったものの、「自社で技術を持つことが長期的に有利」と言及。
開発投資の一部を電動化・ソフトウェア領域に集中する一方で、エンジンの基本技術は保持する方針を示しました。
エンジン供給を他社に頼れば短期的なコスト削減は可能ですが、将来の競争力やブランド独自性を失うリスクがあると判断したものとみられます。
この明確な公式否定は、長らく取り沙汰されてきた「メルセデスがBMWのB48を搭載する」という観測を事実上終結させるものとなりました。
FAMEエンジンの技術と特徴
メルセデスが開発中のFAMEエンジンは、「Family of Modular Engines」の名の通り、部品や設計思想を共通化しながら複数の排気量・燃料方式に対応する新世代モジュラーエンジンです。
2027年以降に量産される次期CクラスやEクラス、Sクラスをはじめ、SUVやAMG高性能モデルにまで幅広く採用される予定とされています。
環境規制対応と電動化の柔軟性
FAMEは開発段階からEuro7、China7、米国Tier3といった世界主要地域の排出ガス規制を視野に入れて設計されています。
4気筒からV8、V12まで同一モジュールで対応できることにより、生産ラインの効率化や開発コスト削減に寄与します。
また48Vマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッド(PHEV)、将来的には水素燃料対応まで視野に入れた柔軟な設計が特徴です。
数値で見る性能の進化
現行メルセデスのM254型2.0L直列4気筒と比較して、FAMEの同等排気量エンジンは熱効率を最大5%向上させる計画が報じられています。
出力やトルクの増加と同時に、CO2排出量を10%以上削減することが目標とされ、環境性能と走行性能の両立を狙います。
EVシフト時代の位置づけ
EV化が加速する中でも、地域や車種によっては内燃機関の需要が残ると予想されます。
FAMEはこの現実的な需要に応えつつ、電動化とのハイブリッド構成を柔軟に組み合わせることで、メルセデスのグローバルなパワートレイン戦略の要となることが期待されています。
このようにFAMEエンジンは、単なる内燃機関の刷新ではなく、電動化時代における持続可能なパワートレイン供給網を築く中核技術として開発が進められています。
なぜB48導入の噂が広まったのか
メルセデスがBMWのB48エンジンを採用するという報道は、単なる憶測ではなく一定の“理由”があると受け止められていました。
第一に、欧州で強化される排出ガス規制の存在です。
2025年以降に段階導入されるEuro7規制は、従来よりも厳しいCO2および窒素酸化物削減を求め、内燃機関車の開発コストを押し上げています。
このため他社とエンジンを共有すれば、開発費や量産コストを大幅に削減できると考えられました。
電動化投資とコスト圧力
メルセデスは電動化への巨額投資を進めています。
バッテリー工場や新世代EVプラットフォームの開発費は膨大で、内燃機関の新開発費を圧縮したい思惑があるのではないかと推測されました。
BMWのB48はMINIや自社モデルで実績があり、PHEVやマイルドハイブリッド対応など柔軟性が高いため、短期的なコスト削減手段として現実味を帯びて見えたのです。
過去の提携実績
さらに両社は燃料電池や自動運転分野で共同開発を行った実績があります。
これが「次はエンジン供給でも協力するのでは」という見方を広げ、B48導入説の信ぴょう性を高めました。
こうした背景が重なり、世界中でニュースが拡散していったのです。
まとめ:B48エンジン導入報道は事実ではなかった
メルセデスがBMW製B48エンジンを採用するという一連の報道は、最終的にメルセデス自らが公式に否定したことで、現時点では誤報だったと結論づけられます。
確かに、電動化投資やEuro7規制などの外部要因が「提携もあり得る」と推測させた背景は存在しました。
しかし、ミュンヘンのIAAでCTOマルクス・シェーファー氏が「そのような事実はない」と明言したことで、噂は事実ではないことが明確になりました。
一方で、自動車業界は環境規制やEVシフトによる急速な変化が続きます。
長期的に見れば技術提携やパワートレインの共有が再び話題になる可能性は否定できません。
しかし少なくとも現行の計画においては、B48エンジンがメルセデス車に搭載される見通しはなく、独自開発のFAMEエンジンが今後の主力になると考えられます。
今回の報道騒動は、電動化過渡期における情報の不確実さと、ブランド独自性を守るメルセデスの姿勢を改めて示す結果となりました。
Reference:autoblog.com
よくある質問(FAQ)
Q1. メルセデスはBMWのB48エンジンを将来使う可能性はありますか?
現時点でメルセデスはB48エンジンを採用する計画を否定しています。将来の環境規制や市場動向で再協議の可能性はゼロではありませんが、公式には「自社開発エンジンを優先」と明言しています。
Q2. FAMEエンジンとは何ですか?
FAME(Family of Modular Engines)はメルセデスが開発中の新世代モジュラーエンジンです。4気筒からV12まで共通設計で、Euro7など世界各地の排出規制に対応しながらハイブリッドや水素燃料まで見据えています。
Q3. なぜB48導入の噂が広まったのですか?
Euro7規制への対応や電動化投資によるコスト圧力、過去の技術提携実績が背景にありました。これらが「合理的な選択肢」と見られ、メディアやSNSを通じて広く拡散しました。
Q4. B48エンジンの特徴は何ですか?
B48はBMWが開発した2.0リッター直列4気筒ガソリンターボです。高効率と信頼性に定評があり、PHEVやマイルドハイブリッドにも対応可能で、排出規制の厳しい市場でも幅広く採用されています。
Q5. メルセデスのエンジン戦略は今後どうなりますか?
FAMEエンジンを軸に2030年代前半まで内燃機関の需要に応えつつ、電動化への移行を加速する二面戦略を取る見込みです。これにより多様な市場に柔軟に対応する計画です。
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