BMWの高性能SUV「X5 M」に、次世代モデルとしてV8エンジン搭載車とEV(電気自動車)モデルの両方が登場するという情報が自動車業界で話題になっています。開発コード「G95」と「ZA系」によって、それぞれ異なるパワートレインが与えられ、異なる個性を持ちながらも同じ「X5 M」の名称が与えられる可能性が高まっています。
本記事では、BMWの電動化戦略「Power of Choice」に基づいた2つのX5 Mの姿を中心に、スペック・発売時期・技術的な背景・生産拠点などを詳しく解説していきます。今後登場が見込まれるこの2つのモデルは、単なるフルモデルチェンジにとどまらず、BMW Mブランドの未来を象徴する存在となりそうです。
- V8とEV、2つのX5 Mが同時に登場予定:次期X5 MはV8モデル(G95)とEVモデル(ZA系)の2本立てで展開され、「Power of Choice」戦略を反映します。
- G95型は最新S68エンジン+マイルドハイブリッド:4.4L V8「S68型」と48Vマイルドハイブリッドを搭載し、性能と環境対応を両立します。
- EVモデルはCLAR採用でM初の700馬力級SUVに:CLARプラットフォーム採用のEV版X5 Mは、Mブランド初のフル電動ハイパフォーマンスSUVになる見通しです。
次期BMW X5 Mとは?V8&EVの2本立て体制
BMWの「Power of Choice」戦略とは?
BMWは近年、「Power of Choice(選択の力)」という戦略のもと、ガソリン車、プラグインハイブリッド(PHEV)、完全電気自動車(EV)を同一モデル内で選べるように展開しています。これにより、各市場のインフラ環境や顧客の嗜好に合わせて柔軟に対応することが可能となり、特にプレミアムSUV市場では重要な戦略です。
次期BMW X5 Mもこの戦略の一環として、高性能V8モデルとEVモデルの両方を用意することで、伝統的なMファンと環境志向の新規顧客の双方を取り込もうとしています。
G95型:伝統を継承するV8+マイルドハイブリッド
「G95」は、次期BMW X5 MのV8モデルに付与された開発コードです。搭載されるエンジンは、現行X5 Mでも使用されている4.4リッターV型8気筒ツインターボ「S68型」。このエンジンは2022年に登場し、今後もBMWのハイパフォーマンス系に広く使用されていく予定です。
注目すべきは、このV8モデルがプラグインハイブリッドではなく、48Vのマイルドハイブリッドを採用するという点です。XMで採用されていたPHEVよりも軽量・高効率なパッケージで、スポーツ性能を維持しつつ環境性能にも配慮した構成になります。
ZA系:出力700馬力超えの完全電動X5 M
一方、EVモデルは「ZA7」や「ZA9」などと噂される開発コードが割り当てられる見込みです。BMWは近年、EV専用モデルに「ZA」系のコードを採用しており、この流れをX5 Mの電動モデルにも拡大する方針とみられます。
出力は700馬力を超えるとされ、従来のX5 Mの最高出力(617馬力)を上回るパフォーマンスが期待されています。これにより、従来のガソリン車ファンに劣らぬ高揚感と加速性能を、EVならではのスムーズな走りで提供することが可能となります。
X5 Mという名称が両モデルに与えられる理由
これら2つのパワートレインを持つモデルは、それぞれ独自の開発コード(G95、ZA◯)を持ちながらも、両方とも「X5 M」という車名を名乗る可能性が高いです。これは「パフォーマンスレベルが同等」であること、またBMW Mのブランド価値を共通して担う存在であることが理由とされています。
つまり、「Mモデル=ガソリン」という常識は、次期X5 Mから大きく変わる可能性があり、BMW Mの電動化の象徴的な転換点となるでしょう。
V8モデル「G95」の技術仕様と特徴
S68エンジンの改良と特徴
G95型BMW X5 Mに搭載される予定のエンジンは、BMWの最新世代V型8気筒ツインターボ「S68型」です。このエンジンは2022年に登場し、既に現行のX5 MやX5 M60i、さらには7シリーズの一部モデルにも採用されている信頼性の高いユニットです。4.4リッターの排気量を持ち、48Vマイルドハイブリッドシステムと統合されているのが最大の特徴です。
現行X5 Mとの違いと進化点
現行X5 MもS68型を搭載していますが、次期G95型ではさらにチューニングが施され、より高効率で環境性能に優れると見られています。また、プラグインハイブリッドではなくマイルドハイブリッドとすることで、バッテリーパックの重量を抑えつつ、走行性能を最大限に引き出す設計になっています。
予想される出力・トルク・駆動方式
現行X5 Mのコンペティションモデルでは617馬力(約460kW)を発揮しており、G95型でもこれを下回ることはないと予想されます。むしろ小幅な出力向上がなされ、630〜650馬力程度になる可能性も考えられます。トルクも800Nm前後に達する見込みで、駆動方式は引き続きxDrive(4WD)が採用されるでしょう。
欧州市場での販売は可能か?
注目すべきは、このV8モデルが欧州市場で販売されるかどうかです。欧州では排出ガス規制(Euro 7など)が年々厳格化しており、すでにV8エンジンは7シリーズからもほぼ撤退しています。しかし、G95では48Vマイルドハイブリッド技術の採用により、ある程度の規制対応が可能とされています。
とはいえ、長期的にはEVモデルへの移行が前提であり、V8モデルの欧州販売は「限定的」または「終了時期を定めた一時的展開」になる可能性も否定できません。
EVモデル「ZA系」の正体と性能予測
開発コード「ZA7」「ZA9」の可能性
次期X5 Mの電動モデルには、BMWが近年導入している「ZA系」コードが適用されると予想されています。具体的には「ZA7」または「ZA9」が該当する可能性が高く、これはBMWの電動SUV専用の内部開発コードであることが、近年のiX3やiXシリーズの流れからも裏付けられています。
700馬力超えのハイパフォーマンスEV
このEV版X5 Mでは、従来のV8モデル(617馬力)を超える700馬力以上の最高出力が予測されています。BMWが掲げる「M Performance」ラインの中でも、史上最強クラスのスペックを持つSUVとして登場する可能性があり、トルク特性や加速性能では内燃機関モデルを凌駕することも想定されます。
CLARプラットフォームとの関係性
注目すべき点として、このEVモデルは「Neue Klasse」ではなく、現行世代と同じCLARプラットフォームをベースとする点があります。これは、従来の車体構造を活用しつつ、EVパワートレインを高度に統合する設計思想に基づいており、生産効率と開発コストの最適化が目的とされています。
BMW Mの未来を担うフル電動モデル
BMW Mとしては、これが初のフルスケールなM EV SUVとなる見込みです。従来、MブランドではEV化に慎重な姿勢をとっていましたが、環境対応とパフォーマンスの両立を図るため、このモデルが重要な転換点になることは間違いありません。
なお、次期iX3のMバージョンが先に登場する可能性もありますが、それを超える本格的なフラッグシップとして「X5 M EV」は今後のMブランドにおいて象徴的な存在となるでしょう。
生産計画と発売スケジュール
G65型との関係と展開スケジュール

次期BMW X5シリーズのベースモデルに該当するのがG65型です。このモデルは2026年8月から生産開始が予定されており、これをベースにX5 M(G95)およびEVモデル(ZA系)が派生する形となります。つまり、G65の登場がすべての起点となり、G95やZA系の投入はその1〜2年後を見込むのが妥当です。
G95とZA系の生産時期の違い
G95型X5 M(V8モデル)は、2027年末から2028年初頭にかけて生産が開始されると予想されています。一方、EVモデルであるZA系のX5 Mは、それと同時期かやや遅れて投入される見通しです。これにより、BMWはV8とEVを段階的に市場へ導入し、顧客の反応やインフラ状況を見極めながら展開を進める戦略を採用しています。
スパータンバーグ工場でのEV戦略
両モデルの生産拠点は、アメリカ・サウスカロライナ州のスパータンバーグ工場です。BMWはここを北米におけるSUVおよびEV生産の中核拠点と位置づけており、2030年までに6つのEVモデルをこの工場で生産する計画を発表しています。次期X6(G66)やX7(G67)のEV版もここで生産される予定で、X5 M EVも同様の流れに乗ると考えられます。
Neue Klasseとの違いは何か
BMWは「Neue Klasse」と呼ばれる新世代EV専用プラットフォームを開発していますが、X5 M EV(ZA系)はこのプラットフォームではなく、従来のCLARアーキテクチャを引き続き採用する見込みです。これにより、既存ラインの活用と開発コストの抑制が可能となります。
将来的にはNeue Klasseベースの大型SUVも登場する可能性がありますが、現段階ではX5 MのEVモデルはCLAR世代の集大成として、先行して市場に投入される形になるでしょう。
次期X5 Mのマーケット展開と今後の注目点
グローバル市場への展開可能性
次期X5 Mは、BMWのグローバル戦略において重要な役割を担うモデルです。特に需要が高いのは北米市場と中国市場であり、これらの地域では高出力SUVへのニーズが依然として旺盛です。加えて、BMWの生産拠点であるスパータンバーグ工場が北米に位置していることからも、まずはアメリカ市場を中心に展開されると見られます。
欧州市場については、環境規制の厳格化によりV8モデルの導入には制限がある可能性がありますが、EV版のX5 Mについては積極的な導入が期待されます。
V8モデルの生き残りとEVシフトの狭間
BMWは、Mブランドにおいても電動化を推進しつつありますが、依然としてV8の走りを愛する顧客層は世界的に存在しています。そのため、完全なEVシフトではなく、当面はV8とEVの両立による選択肢の提供が続く見込みです。
EV版X5 MはMブランドの象徴となるか?
出力700馬力超と予想されるX5 M EVは、BMW Mの新しい象徴となる可能性を秘めています。環境性能と動力性能を両立させたこのモデルが、市場でどのように評価されるかは、今後のMブランドの方向性を左右する重要な要素となるでしょう。
結論:次期BMW X5 MはMブランドの未来を象徴する存在に
次期BMW X5 Mは、内燃機関と電動化の両立を象徴するプレミアムSUVとして、2027年以降のBMW Mブランドを牽引する存在になると考えられます。V8エンジンを搭載したG95型は従来のMファンを満足させる走行性能を維持しながら、環境対応にも配慮したマイルドハイブリッドを採用します。
一方、700馬力超を誇るEVモデルは、電動Mモデルの新たなフラッグシップとして、BMWの未来を形作る重要なモデルとなるでしょう。2つの異なるパワートレインが「X5 M」の名のもとに並び立つことで、幅広い市場ニーズに対応しながら、Mの名にふさわしい性能と革新性を提供する、注目の1台となりそうです。
Reference:zero2turbo.com
よくある質問(FAQ)
Q1. BMW X5 Mの次期モデルはいつ発売されますか?
次期BMW X5 MのV8モデル(G95)は2027年末から2028年初頭にかけての生産開始が予想されています。EVモデル(ZA系)も同時期、またはそれ以降に市場投入される見込みです。
Q2. V8エンジンはどのような仕様になりますか?
4.4リッターV型8気筒ツインターボ「S68型」が搭載され、48Vマイルドハイブリッドシステムと組み合わせられます。出力は617馬力以上、最大で630〜650馬力になると予想されています。
Q3. EVモデルはどのくらいの性能が期待されますか?
EVモデルは最大出力700馬力以上を誇るとされ、BMW Mとして初の本格的な高性能SUV EVになる見通しです。加速性能やトルク応答性ではV8モデルを凌駕する可能性があります。
Q4. G95とZA系の違いは何ですか?
G95はV8エンジン搭載の内燃機関モデル、ZA系はフル電動のEVモデルです。どちらも「X5 M」という名称を共有する可能性が高く、共通してCLARプラットフォームを採用しています。
Q5. 日本市場でも発売される予定はありますか?
現時点では明言されていませんが、現行X5 Mの実績と市場需要を考慮すれば、日本市場への導入の可能性は高いと考えられます。特にEVモデルは都市部でのニーズが高まっているため、期待されています。
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