自動車業界は今、電動化の波に大きく揺れています。
欧州を中心に厳格な排ガス規制が進み、多くのメーカーがEV(電気自動車)への移行を加速させています。
そんな中、BMW M社は「可能な限り内燃機関(ICE)を継続する」と公言しています。
しかし、2027年に施行されるEURO 7規制は、ガソリンエンジンの存続をさらに難しくするでしょう。
この状況の中、次期BMW M3 G84はどのような進化を遂げるのでしょうか?
最近の情報では、BMWがS58エンジンをハイブリッド化し、M3 G84に搭載する可能性が高まっています。
本記事では、その根拠となる3つの理由について詳しく解説していきます。
理由①:EURO 7規制に対応するため
2027年に施行されるEURO 7規制は、内燃機関(ICE)を搭載する車両にとって非常に厳しいものとなります。
この規制では、従来のEURO 6よりもさらに厳格な排ガス基準や耐用年数が求められます。
特に、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の排出制限が強化され、エンジン単体での適合が困難になる可能性が高いのです。
現在のBMW M3(G80)に搭載されているS58エンジンは、EURO 6基準に準拠しています。
しかし、EURO 7基準をクリアするには、さらなる排出ガスの低減技術が必要です。
例えば、高性能な触媒コンバーターや微粒子フィルターの追加が考えられますが、それだけでは十分ではない可能性があります。
そこで、BMWはマイルドハイブリッド技術を導入することで、S58エンジンの延命を図るのではないかと予想されています。
マイルドハイブリッドの仕組みとEURO 7適合のメリット
マイルドハイブリッドとは、小型の電動モーターと48V電源を組み合わせ、エンジンを補助する技術です。
これは、プラグインハイブリッド(PHEV)のように外部充電を必要とせず、主に以下の3つの役割を果たします。
- エネルギー回生システムによる効率向上
- アイドリングストップ時のスムーズな再始動
- 低回転時のトルク補助による燃費改善
このマイルドハイブリッド技術をS58エンジンに組み込めば、燃費と排ガス性能が向上し、EURO 7基準を満たす可能性が高まるでしょう。
すでにBMWは、B58(3.0L直6エンジン)やS68(4.4L V8エンジン)にマイルドハイブリッドを採用しており、S58にも同様の技術を適用する可能性は非常に高いと考えられます。
BMWがM3 G84でS58エンジンを継続するには、この技術が不可欠でしょう。
理由②:M5のハイブリッド化とM3のハイブリッド技術の違い
BMW M社は電動化を進める中で、新型M5(G90)にプラグインハイブリッド(PHEV)を採用しました。
M5はS68型4.4L V8ツインターボエンジンに電動モーターを組み合わせたシステムを搭載し、排出ガスを削減しながら圧倒的なパフォーマンスを実現しています。
特に、PHEVによる電動ブースト機能は、大型セダンであるM5にとって重要なポイントです。
しかし、M3(G84)がPHEVを採用する可能性は低いと考えられます。
その最大の理由は、車両重量の増加です。
PHEVには大容量のバッテリーが必要となり、その結果として車両が重くなります。
M5はラグジュアリーセダンとしての性格も兼ね備えているため、多少の重量増加は許容されますが、M3は軽快なハンドリングを重視するモデルです。
そのため、PHEV化による重量増加は、M3のスポーツ性を損なうリスクが高いのです。
M3 G84にはPHEVの代わりにマイルドハイブリッドが採用される可能性
M3 G84では、PHEVの代わりにマイルドハイブリッド技術が採用される可能性が高まっています。
これは、PHEVのような大容量バッテリーを必要とせず、軽量性を維持しながら排ガス削減や燃費向上に貢献するシステムです。
BMWはすでにB58(3.0L直6ターボ)やS68(4.4L V8)にマイルドハイブリッドを導入しており、S58エンジンにも適用する可能性が高いと考えられます。
M5はPHEV化されましたが、M3は運動性能を重視し、より軽量なマイルドハイブリッドで進化する可能性が高いのです。
ダイナミックな走行性能を維持しつつ、排出ガスの低減と燃費改善を実現できるでしょう。
理由③:開発コストと供給側の事情
BMWがS58エンジンをハイブリッド化する理由の一つは、エンジン開発と供給コストの最適化にあります。
高性能エンジンを開発・生産するには膨大なコストがかかるため、一つのエンジンを複数のモデルに展開することでコスト削減を図る戦略が取られています。
BMW M社の幹部も、「ある特定のモデル専用にエンジンを開発するのは非現実的」と発言しており、少量生産のエンジンではコストが高騰しすぎるため、できる限り多くの車種で共通のエンジンを使用する方針を取っていることがわかります。
ハイブリッドS58はM2やX3 M、X4 Mにも展開される可能性
現在、S58エンジンはM3(G80)やM4(G82)のほか、M2(G87)、X3 M(F97)、X4 M(F98)にも搭載されています。
EURO 7規制の導入後も、これらのモデルを存続させるには、エンジンの環境性能向上が不可欠です。
M3 G84にハイブリッドS58を搭載することが決まれば、M2やX3 M、X4 Mなどにも同じ技術を適用する可能性が極めて高いでしょう。
そうすることで、BMWは開発コストを抑えながら、規制に適合したパフォーマンスモデルを複数展開できるのです。
BMWの電動化戦略とガソリンエンジンの未来
BMWはすでに電動M3(ZA0)の開発を進めており、今後はEVの比率を高める方針です。
しかし、同時に内燃機関(ICE)を可能な限り継続する戦略も明言しています。
そのため、S58のハイブリッド化は、ICEを延命させながらパフォーマンスを維持する現実的な解決策となるのです。
BMW M3 G84のハイブリッド化は不可避か?
BMW M3 G84がハイブリッド化する理由として、EURO 7規制への対応、BMW M社の戦略、開発コストの最適化の3点が挙げられます。
特に、排出ガス規制の強化により、ガソリンエンジン単体での存続は困難となり、マイルドハイブリッド技術を取り入れる可能性が極めて高いでしょう。
また、BMWは電動化を推進しつつも、ICEモデルの存続を重視しており、S58エンジンのハイブリッド版を他のMモデルにも展開することで、コストと供給面のバランスを取ると考えられます。
結論として、M3 G84のハイブリッド化はほぼ確実な未来と言えるでしょう。
しかし、BMWがどのような技術でMモデルの走りを進化させるのか、その発表を待ちたいところです。
Reference:bmwblog.com
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