BMWは過去数年間、初代M1を復活させるべくハイブリッドスーパーカーの開発を進めていました。
特に「BMW i16」と呼ばれる新モデルは、伝説のM1にインスパイアされ、BMW i8をベースに開発されていたものです。
しかし、COVID-19パンデミックの影響と社内のリソース競合により、この計画は2020年に中止されました。
代わりにBMWは高級SUVである「XM G09」を市場投入する決断を下しました。
スーパーカー開発からSUVへと舵を切った背景には、世界の自動車市場で高級SUVが成長していることが大きな要因となっています。
本記事では、BMW M1の復活計画、開発中止の経緯、XM G09がなぜ優先されたのかを詳しく解説します。
- BMW M1の復活計画が中止:BMWは初代M1の後継モデルとして「i16」を開発していましたが、COVID-19の影響やリソースの問題で計画を断念
- XM G09を優先した理由:高級SUV市場の需要拡大を背景に、BMWは収益性の高い「XM」を選択し、スーパーカーの開発を後回しへ
- BMW XMの特徴:XMはV8エンジンと電動モーターを搭載したプラグインハイブリッドSUVで、653馬力の高性能と先進的なデザインが魅力
BMW M1の歴史:伝説的な初代M1とは?
BMW M1は1978年に登場したBMW初のスーパーカーであり、BMW M社(当時のBMWモータースポーツ部門)が手掛けた名車です。
この車は当時のモータースポーツ規格「グループ4」ホモロゲーション取得を目的に開発されました。
デザインはイタリアのデザイン会社「イタルデザイン」の巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロが担当し、その未来的なデザインは高い評価を受けました。
M1には直列6気筒3.5リッターエンジンが搭載され、最高出力は277馬力を発揮。
当時のスーパーカーとしては非常に高い性能を誇りました。
さらにBMW M1は、モータースポーツにおいても活躍し、「プロカーシリーズ」では多くのトップドライバーたちがこの車で競い合いました。
初代M1は1978年から1981年まで約450台が生産され、その希少性から現在でも高い人気を誇ります。
BMWのスポーツカー史において象徴的な存在であるM1は、同社の「Mモデル」のルーツとして語り継がれています。
BMW i16プロジェクト:M1の後継車の開発
BMWは2010年代、次世代スーパーカーとして「BMW i16」の開発に着手しました。
このモデルはBMW i8を基盤にしつつ、初代M1へのオマージュとしてデザインされました。
i8は3気筒エンジンを搭載するプラグインハイブリッドスポーツカーでしたが、BMW i16ではより強力な4気筒エンジンを組み合わせ、総出力560馬力を目指していました。
BMW i16は、2022年の発売を予定しており、デザイン面やボディ設計もほぼ完成していたと言われています。
特に外観デザインは洗練され、未来的でありながらクラシックなM1の面影を残すものだったとされています。
しかし、COVID-19パンデミックが自動車業界に大きな影響を与えたこと、そして開発資源を新型SUV「XM G09」に集中させる必要があったことから、BMW i16は開発中止に追い込まれました。
当初の計画では、BMW i16はハイブリッドスポーツカーとして、ポルシェ911やアウディR8といったライバル車と競合することが期待されていました。
しかし、BMWはこの分野よりも高級SUV市場での収益性を重視したため、i16は幻のモデルとなってしまいました。
BMW M1復活が「95%完成」していた事実
BMW i16は、当時のBMWパフォーマンス部門で95%まで開発が進んでいました。
具体的には、外装デザインやボディ設計はすでに完成し、プラグインハイブリッドシステムの調整段階に入っていたと報じられています。
開発過程ではBMW i8のカーボンファイバー構造を継承しつつ、新型4気筒エンジンと電動モーターを統合することで、出力アップと環境性能の両立を目指していました。
しかし、COVID-19によるサプライチェーンの混乱や市場環境の変化が、プロジェクトの中断を余儀なくしました。
加えて、BMW内部で新型XMの開発が同時進行しており、限られたリソースの中でどちらを優先するかという判断を迫られました。
結果としてBMWは、収益性が見込める高級SUV「XM」を選択したのです。
BMW XM G09へのリソース集中:SUV市場の重要性
BMWがスーパーカーのi16ではなく、XM G09を優先した理由には高級SUV市場の成長があります。
近年、自動車市場では高級SUVが需要を伸ばしており、ポルシェのカイエンやランボルギーニのウルスといったモデルが好調な販売を記録しています。
特に富裕層をターゲットとする高級SUVは、スポーツカーよりも実用性が高く、収益性も優れているとされています。
BMW XM G09は2022年に発表された同社初の「Mモデル専用SUV」です。
パワートレインには4.4リッターV8ツインターボエンジンと電動モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムを搭載し、総出力は653馬力を発揮します。
また、エクステリアは大胆かつ独自性のあるデザインで、BMWの新しいラグジュアリーSUVとして位置づけられています。
BMWはXM G09を通じて新たな顧客層を取り込み、競争の激しい高級SUV市場で存在感を示すことに成功しました。
結果的に、i16プロジェクトは中止されましたが、XMの投入はビジネス面での賢明な判断だったと言えるでしょう。
BMW XM G09:仕様と特徴
BMW XM G09はBMW M社が開発した初のPHEV(プラグインハイブリッド)SUVです。
その心臓部には、4.4リッターV8ツインターボエンジンと電動モーターが組み合わされ、最高出力653馬力、最大トルク800Nmを発揮します。
さらに、電動走行モードでは約80kmの航続距離を確保し、日常使いにも適した性能を備えています。
外観デザインは、BMWの新しいデザイン言語を採用し、大胆なキドニーグリルやシャープなLEDヘッドライトが印象的です。
内装には高品質な素材が使用され、最新のインフォテインメントシステムや先進的なドライバーアシスタンス機能も搭載されています。
なぜBMWはスーパーカー市場を諦めたのか?
BMWがスーパーカー市場を後回しにした背景には、環境規制の強化や市場の変化があります。
電動化が加速する中、内燃エンジンを搭載した高性能スーパーカーは開発コストや収益面でのリスクが高まっています。
さらに、BMWは持続可能なモビリティの実現を目指し、電動SUVやEVモデルの開発に注力しているため、i16のようなハイブリッドスーパーカーは優先順位が低くなったのです。
BMW M1の今後:復活の可能性はあるか?
BMW M1の復活を望む声は根強く、BMW内部でも次世代スーパーカーの構想は絶えず検討されています。
将来的には、完全電動のM1後継モデルが登場する可能性もありますが、現時点では具体的な計画は明らかになっていません。
BMWがM1後継車であるi16を中止し、XM G09を優先したのは市場の需要と収益性を考慮した戦略的な判断でした。
高級SUV市場の拡大に伴い、BMW XMはブランドの新たな柱となりつつあります。
しかし、M1復活への期待は今後も続き、BMWの次なる一手に注目が集まっています。
Reference:thedrive.com