BMWがカナダ市場のためだけに用意した特別な一台「540i xDrive Legacy Edition」が話題を集めています。
近年のモデル名から徐々に消えつつある「i」の文字をあえて冠し、その名称にブランドとしてのこだわりや過去へのリスペクトが込められたこのモデル。
限定151台、直列6気筒ターボエンジン、Mスポーツ装備、そしてBMW Individualによる特別カラー——まさにBMWファンにとって見逃せない仕様が凝縮された車です。
本記事では、その背景、性能、装備、そしてなぜ今このタイミングで「540i」というネーミングが選ばれたのかを深く掘り下げていきます。
記事のポイント
- 限定151台の特別仕様:カナダのみで販売される希少な特別仕様車です。
- 「i」が語る伝統と哲学:モデル名に残された「i」に歴史的意味があります。
- 往年カラーを現代復刻:Maldives Blue IIなど特別色も話題です。
540i xDrive Legacy Editionとは?カナダ市場だけに与えられた特別な1台
BMW 540i xDrive Legacy Editionは、2025年にBMWカナダが発表したカナダ市場限定の特別モデルです。
生産台数はわずか151台のみ。
2025年6月18日から受注が開始され、納車は同年の第4四半期に予定されています。
このモデルの最大の特徴は、カナダではこれまで設定がなかった540iグレードを、Legacy Editionとして導入した点にあります。
これまでカナダの5シリーズでは、四気筒エンジンを搭載する530i、またはプラグインハイブリッドの550eといった選択肢しかなく、米国市場で提供されていた540i(直列6気筒モデル)は未展開でした。
BMWはそのギャップを埋めるかのように、今回の特別仕様車で「真の直6スポーツセダン」を提示したのです。
しかも、通常のグレード展開ではなく、あえて特別仕様の限定モデルとして市場投入することで、その希少性と話題性を高めています。
スペック解説:直列6気筒×マイルドハイブリッドの純粋なパフォーマンス
パワーユニットと加速性能
540i Legacy Editionには、BMWの名機と名高い「B58型」3.0リットル直列6気筒ターボエンジンが搭載されています。
最高出力は375馬力、最大トルクは398 lb-ft(約540Nm)を発揮。
これに48Vのマイルドハイブリッドシステムが組み合わされ、パワーデリバリーのスムーズさと効率性を両立しています。
トランスミッションは8速ステップトロニック(AT)で、0-100km/h加速はわずか4.7秒と、ミドルサイズセダンとしては非常に優れた動力性能を誇ります。
xDriveによる安定性と走行性能
BMW独自の四輪駆動システム「xDrive」が標準装備されており、雪道や雨天などの悪路でも高い安定性を発揮します。
リア寄りの駆動配分により、スポーティな走行フィールも実現しているのが特徴です。
これは単なるセダンではなく、“走る歓び”を追求したBMWの哲学を体現した一台と言えるでしょう。
マイルドハイブリッドのメリット
48Vマイルドハイブリッドにより、アイドリングストップからの再始動や加速時の補助がスムーズになり、燃費や環境性能にも配慮されています。
従来の540iよりも滑らかで静かなドライビング体験を提供しており、都市部での運転にも適しています。
特別装備とカラー:Maldives Blue IIとBMW Individualの世界
540i Legacy Editionは、その特別感を強調するために専用色「Maldives Blue II Metallic」を採用しています。
このカラーは1990年代のE34型5シリーズで使われた初代マルディブブルーにインスパイアされた復刻色で、深みのある青緑の輝きがクラシカルかつ洗練された印象を与えます。
単なる派手さではなく、歴史を継承する落ち着いた特別感が特徴です。
さらに、BMW Individualプログラムによって
- オックスフォードグリーン(Oxford Green)
- セパンブロンズ(Sepang Bronze)
- グリージョ・テレスト(Grigio Telesto)
などの特別カラーも無償で選択可能となっており、購入者は自分好みの一台を仕立てることができます。
装備面ではM Sport Proパッケージを標準搭載し、ブラック仕上げのトリムやイルミネーション付きグリル、21インチホイールを装備。
Bowers & Wilkinsの18スピーカーやベンチレーション付きフロントシートも装備されており、快適性も抜群です。
なぜ「i」なのか?BMWがこの記号に込めたブランドの記憶
“i”が語る、過去と現代の狭間
BMWの車名における「i」は、かつては燃料噴射方式を意味する“injection”の略として使われていました。
325iや540iなどはその代表で、インジェクション技術をアピールする役割を担っていたのです。
しかし、現代ではインジェクションが標準技術となったため、BMWは「i」を徐々に名称から排除し、「530」や「550e」、電動モデルの「i5」などへ移行しつつあります。
現在でも米国市場では「540i」が販売されていますが、BMWのグローバルなネーミング戦略において、“i”の文字は徐々に使われなくなってきており、今後消えていく方向にあります。
そうした中で、あえてこの名称をカナダ市場向けに新たに導入したことに、BMWのこだわりが感じられます。
540iというネーミングは、現代のBMWラインアップでは非常に希少であり、まさに“絶滅危惧種”とも言える存在になっています。そうした中で、あえてこの名称を冠したことに、BMWの意図が感じられます。
あえて残したBMWの意志
今回のLegacy Editionに「540i」という名称を復活させたのは、単なる懐古ではありません。
直列6気筒エンジンを搭載し、“ガソリンBMWらしさ”を最大限に表現するこのモデルに、「i」をつけることで、伝統と技術の融合を示していると考えられます。
今後、電動化が進む中でこのようなモデルはさらに希少になるため、BMWは意図的にこの名称を選んだのでしょう。
「i」は単なる記号ではなく、BMWファンへの敬意と、かつてのドライバーズカーとしての哲学の象徴でもあります。
この一文字には、かつてのBMWを愛した人々へのメッセージが込められているのです。
カナダ限定モデル戦略:BMWがなぜ“だけ”を選ぶのか
BMWがカナダ市場向けに専用モデルを投入するのは今回が初めてではありません。
たとえば、2024年には「X5 Edition 25 Jahre」が同様にカナダでのみ発売されました。
また、メルセデスがC43ワゴンをカナダ限定で販売していたり、BMW i4 eDrive35が米国未展開ながらカナダで販売されていたりと、カナダ市場は独自性を持っています。
これは、カナダのユーザーが求める装備や価格帯が米国とはやや異なるためであり、限定パッケージが好まれる傾向があることも一因です。
540i Legacy Editionも、こうした“選ばれた市場”への限定投下という戦略の一環であり、151台という少量生産がその希少価値と話題性を高めているのです。
レガシーという名称の意味:過去から現在への橋渡し
「Legacy(レガシー)」という言葉には、“受け継がれる遺産”や“過去からの伝統”といった意味があります。
BMWがこのモデルにあえてこの名称を与えたのは、単に過去を懐かしむためではなく、現代におけるBMWらしさを改めて確認し、継承するというメッセージが込められていると読み取れます。
実際、この540i Legacy Editionは、直列6気筒ガソリンエンジン、クラシックな特別色、そしてシンプルで走行性能に重点を置いた装備構成という、往年のBMWを思わせる仕様となっています。
電動化や複雑な制御が進む中で、“本来のBMW”の魅力をあらためて表現する、いわば“原点回帰”の一台とも言えるでしょう。
価格と市場ポジション:540iが生む絶妙な隙間戦略
540i Legacy Editionの正確な価格は発表されていませんが、装備内容とカナダ市場のグレード構成から考えると、カナダドルで90,000ドル前後になると見込まれます。
これは、530i(約77,000ドル)と550e(約95,000ドル)の中間にあたり、まさに“ちょうどいい”パフォーマンスと価格帯のモデルです。
また、装備が非常に充実しているため、実際には550eに匹敵する高級感と走行性能を持ちつつ、プラグイン充電や重量的負担がないという点も魅力です。
走りを重視するユーザーにとっては、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
まとめ:540i Legacy EditionはBMWからのラストメッセージかもしれない
カナダ市場だけに向けて151台限定で投入された540i Legacy Editionは、過去のBMWを知るファン、そして“走る歓び”を求めるドライバーにとって、特別な意味を持つモデルです。
「i」という一文字に託された伝統、走り、哲学は、これからの電動時代に向かうBMWが、最後に届ける純粋なメッセージかもしれません。
この一台には、単なる性能や装備以上の、BMWというブランドが持つアイデンティティの再確認という意味が込められています。
限られた市場と台数だからこそ、その存在感はより大きく、価値あるものとして記憶に残ることでしょう。
Reference:carbuzz.com
よくある質問(FAQ)
Q1. 540i xDrive Legacy Editionは日本で購入できますか?
いいえ、本モデルはカナダ市場専用で、日本国内では正規販売されていません。
Q2. 「i」はなぜ最近のBMWから消えているのですか?
燃料噴射が標準化され、ネーミングの簡素化が進んでいるためです。
Q3. Maldives Blue IIの元になった色は何ですか?
1990年代のE34型5シリーズに採用された初代マルディブブルーです。
Q4. Legacy Editionは何台限定ですか?
カナダ市場限定で、わずか151台のみの生産となっています。
Q5. 540iと550eの違いは何ですか?
540iは純ガソリンエンジン、550eはプラグインハイブリッドです。
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