BMWのスポーツセダンの象徴とも言える「M3」の完全電動化が近づいている。
BMW M3 ZA0は2028年の発売に向けて開発が進められており、プロトタイプ車両が過酷なテストコースとして知られるドイツ・ニュルブルクリンクで初めての試験走行を行った。
このニュースは、自動車ファンや専門メディアの間で瞬く間に話題となり、「Mの走り」がどのようにEVで再現されるのかに注目が集まっている。
ニュルブルクリンクは、世界中の自動車メーカーが性能評価を行う場所であり、ここで走行するということは、量産に向けた本格的な開発段階へ移行している証拠でもある。
この記事では、EV版M3「ZA0」の概要から、BMWが挑むEVスポーツカーの可能性、さらにテスト走行で見えてきた車両の特長や背景まで、わかりやすく解説していく。
- BMW M3がEV化、2028年に登場:初の電動Mモデル「BMW M3 ZA0」が2028年に発売予定。
- ニュルブルクリンクで本格テスト走行:EVながらも“Mらしい走り”を追求し、実走テストを実施。
- デュアルモーターAWDと600km超の航続距離:高性能と長距離走行を両立する次世代スポーツEV。
EV版BMW M3 ZA0とは何か?

BMW M3は、1985年に初代モデルが登場して以来、高性能スポーツセダンの代名詞として世界中で支持を集めてきたモデルだ。
サーキットでも街中でも楽しめる走行性能、洗練されたデザイン、そしてBMWらしい後輪駆動のフィーリングが魅力だった。
そのM3が、2028年に「EV」として誕生する。
それが開発コード「ZA0」で知られる新型BMW M3だ。
従来のガソリンエンジンモデルとは異なり、完全電動化されるこのM3は、BMWが掲げる次世代EV戦略の中核を担う車両となる予定だ。
車体はEV専用プラットフォーム「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」を採用予定で、駆動方式は高出力モーターによるAWD(全輪駆動)と予想されている。
モーターは前後に1基ずつ、合計2モーター構成の可能性が高く、瞬時に最大トルクを発揮する特性を活かした俊敏な加速が期待されている。
また、BMW M GmbHは、このEV M3 ZA0においても「ドライビング・プレジャー」を最優先しており、従来の内燃機関モデル同様に、ドライバーと車の一体感を感じられる走りを実現すべく、専用のサスペンションチューニングや電子制御の調整が進められているという。
開発背景とMシリーズの変革


BMWがEV版M3の開発に本格的に着手した背景には、世界的な排出ガス規制の強化と、スポーツカー市場の価値観の変化がある。
欧州では2035年に内燃機関車の販売が原則禁止される流れにあり、どのメーカーも電動化への舵を切らざるを得ない状況だ。
そうした中で、BMWは「Neue Klasse」という次世代EV専用アーキテクチャを立ち上げ、効率的で高性能なEVの開発を加速させている。
M3 ZA0もこのNeue Klasseを基盤とし、単なる電動化ではなく、“Mらしさ”を体現するための技術革新が施されている。
特に注目すべきは、シャシー設計や重心バランスの見直しだ。
EVはどうしてもバッテリー重量が増える傾向にあるが、BMWは軽量素材の活用や新しいモジュール構成によって、スポーツカーに求められる鋭いハンドリングと安定性を両立させようとしている。
また、M3 ZA0には新世代のソフトウェア・プラットフォームも搭載される見込みで、ドライビングモードやトルク配分、減速エネルギー回収(回生ブレーキ)などの制御がリアルタイムにカスタマイズできる仕様になると予測される。
これにより、街乗りからサーキット走行まで、幅広いシーンでMらしい走りが楽しめるEVスポーツカーが誕生する可能性が高い。
テスト走行の舞台「ニュルブルクリンク」の意味
BMW M3 ZA0がテスト走行を行ったのは、ドイツ・ラインラント=プファルツ州に位置する「ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ」。
全長約20.8km、170以上のコーナーを有し、高低差は約300mに達するという、世界で最も過酷なサーキットの一つだ。
このコースは、車両のシャシー剛性、足回り、冷却性能、ブレーキ性能、そして駆動制御に至るまで、すべての要素が試される。
市販化を前提とした車両のテストとしては最適な環境であり、各メーカーが新型モデルを鍛え上げるために訪れる「聖地」とも言える。
今回M3 ZA0がニュルブルクリンクで初の走行テストを実施したという事実は、このEVモデルが「単なる移動手段」ではなく、本格的なスポーツカーとしてのポテンシャルを追求している証拠だ。
実際、目撃された車両はフルカモフラージュを施されていたが、走行シーンでは大きなロールや制動時の姿勢変化も少なく、車両制御の完成度が一定レベルに達していることがうかがえた。
さらに、バッテリー冷却やモーター発熱の対応力もこのテストの大きなテーマだ。
長時間かつ高負荷な条件下での連続走行は、EVにとって最も厳しい状況の一つであり、M3 ZA0がこれをクリアすることは、今後の市販モデルにおける信頼性と耐久性の裏付けになる。
外観の進化:空力と“Mらしさ”の融合
プロトタイプとして目撃されたM3 ZA0の外観は、カモフラージュで覆われているとはいえ、そのデザインの方向性を感じ取ることができる。
まず目を引くのは、低く構えたフロントノーズとワイドなフェンダーアーチ。
従来のM3にも通じる筋肉質なシルエットがEVでも踏襲されている。
フロントバンパーには大型のエアインテークが確認され、これはブレーキ冷却や空気の流れをコントロールするためのものと見られる。
電動車であっても、Mモデルには高負荷走行時の冷却性能が求められるため、冷却機構をあえて積極的にデザインへ組み込んでいる可能性がある。
ヘッドライトは薄型化され、最新世代のLEDもしくはレーザーライトを採用する可能性が高い。
リア側では、短く絞り込まれたテールエンドに特徴があり、空力効率を考慮したルーフラインやディフューザー形状なども見受けられた。
リアバンパー下部にエキゾーストパイプが存在しないことは、完全EVモデルであることの象徴的なポイントでもある。
また、ホイールサイズはおそらく20インチ以上と見られ、低扁平の高性能タイヤが装着されていた。
ブレーキキャリパーには大型化されたM専用ブレーキが装備されており、制動力にも十分な配慮がなされている。
全体として、M3 ZA0はEV化によるデザインの変化を取り入れつつも、「Mモデルらしさ」を失わない強い個性を感じさせるスタイルに仕上がっている。
空力性能と走行性能を両立させるべく、計算されたプロポーションが印象的だ。
パワートレインとNeue Klasseの技術解説
BMW M3 ZA0の基盤となる「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」は、BMWが2025年以降のEV展開において最重要視している次世代電動プラットフォームである。
このプラットフォームは、軽量化・高剛性・柔軟なレイアウト設計を特徴とし、EVならではの機能性とパフォーマンスを最大限に引き出す構造が採用されている。
M3 ZA0では、前後にそれぞれ高出力モーターを搭載したデュアルモーター構成が有力視されている。
これにより、BMW独自の「xDrive」技術を応用した電動AWD(全輪駆動)が実現可能となり、路面状況やドライビングモードに応じた柔軟なトルク配分が可能になる。
パワー出力についての正式発表はまだないが、M3コンペティション(現行モデル)の最高出力510psを大きく上回る、600ps以上の設定も視野に入っているという。
0-100km/h加速は3秒前後が期待され、EVならではの即時トルクがもたらす加速性能が、Mモデルの新しい武器となるだろう。
また、Neue Klasseでは次世代バッテリーパックが搭載される見込みで、エネルギー密度を30%以上向上させた新型セル構造を採用。
航続距離は一充電あたり600km超えが目標とされており、高性能と長距離実用性の両立が図られている。
800Vの急速充電にも対応予定で、わずか数十分で大幅な充電が可能になる設計だ。
その他、熱マネジメント、回生ブレーキ、アクティブサウンド演出なども含め、ドライバーの感性に響く走りを電動で実現するための多角的な技術が注がれている。
EVスポーツカーとしての性能と課題
EV化されたBMW M3 ZA0に求められるのは、単なる高出力だけではない。
Mシリーズの根幹にある「ダイナミックで官能的な走り」をいかにEVで再現するかが、最大のテーマである。
電動モーターの利点は、瞬時に最大トルクを発揮できる点だが、その一方で音や振動による“感覚的な演出”が弱くなるという課題がある。
そこでBMWは、車内外のスピーカーから人工的にエンジン風サウンドを演出する「IconicSounds Electric」を採用予定で、ドライバーが音からも加速感やパワー感を感じられるように工夫している。
もうひとつの重要ポイントは「重量」だ。
EVは大容量バッテリーを搭載するため車重が増加し、旋回性能や制動距離に影響を及ぼすリスクがある。
これに対し、BMWはカーボン素材の積極的な使用や車両重心の低下を図る設計で、Mらしい軽快なハンドリングを保とうとしている。
シャシーは専用設計され、前後重量配分は50:50に近い理想的なバランスを追求。
さらに、電子制御式ダンパーや可変ステアリング、トルクベクタリング機能を備えることで、ドライバーの入力にリニアに応答する精密なドライビングフィールが目指されている。
ただし、まだ完全な量産仕様ではなく、今回のプロトタイプはその“走りの方向性”を試す段階にある。
EV特有の静かさと快適性を持ちながら、Mモデルの過激さと官能性をいかに融合させるか——BMWにとっては過去にない挑戦であり、その完成度が今後の評価を大きく左右するだろう。
発売時期・価格予想と今後の展望
BMW M3 ZA0は、現時点で「2028年発売予定」と報じられているが、具体的な発売月や市場別の展開スケジュールは未定だ。
テスト車両がすでにニュルブルクリンクで公道レベルに近い走行を行っていることから、2026〜2027年中にはティーザーやプロトタイプの公開、各国でのデビューイベントが行われる可能性が高い。
価格帯については、現行M3コンペティション(約1,300万円〜)を上回ると予想されており、EV専用アーキテクチャ、新世代バッテリー、AWDデュアルモーターの搭載などから考えても、1,500万〜1,800万円前後に設定される可能性がある。
競合するであろうポルシェ・タイカン、アウディRS e-tron GT、テスラ・モデルSプラッドなどと並ぶ価格帯での展開が想定される。
また、BMWは2025年からNeue Klasseを用いたEVを本格的に量産化する計画を進めており、M3 ZA0はそのフラッグシップ的存在になる。
将来的にはM4 EVやX系MモデルEVなど、スポーツEVのラインアップ拡充にもつながっていく可能性がある。
今後の情報開示やメディア向け試乗、スペック公開なども含め、2025年以降の展開に要注目だ。
まとめ:伝統と革新をつなぐM3 ZA0の意義
BMW M3 ZA0は、電動化という時代の流れの中でも、Mモデルとしての本質を守りながら未来へと進む象徴的な一台だ。
これまでのM3が築いてきた「走りの歓び」や「官能性」、そしてサーキット走行に耐える性能は、ただEVになったからといって捨てられるべきものではない。
BMWはその価値を理解し、電動アーキテクチャを用いながらも、しっかりと“走り”を研ぎ澄ましている印象を受ける。
ニュルブルクリンクでの走行テストという事実は、その決意の表れであり、M3 ZA0が単なる電動スポーツカーではなく、「M」を冠するにふさわしい存在であることを証明しようとしている。
発売まであと数年。その間にも進化する技術と共に、M3 ZA0がどこまで完成度を高めてくるのか。
今後のBMWの電動化戦略の中心を担うこの1台から、目が離せない。
Reference:carscoops.com
よくある質問(FAQ)
-
Q1. BMW M3 ZA0はいつ発売される予定ですか?
- A. 現時点では2028年の発売が予定されていますが、正確な時期は未発表です。
-
Q2. M3 ZA0はどのような駆動方式ですか?
A. 前後にモーターを搭載した電動AWD(全輪駆動)が採用されると見られています。
-
Q3. 航続距離はどのくらいになる予定ですか?
A. 約600km以上の航続距離が期待されており、急速充電にも対応予定です。
-
Q4. 価格帯はどの程度になりそうですか?
A. 日本市場では1,500万〜1,800万円程度の価格が予想されています。
-
Q5. M3 ZA0と他のEVスポーツカーの違いは?
A. Mモデルならではの“走りの哲学”が活かされており、ドライバー重視のチューニングが特長です。
コメント