G87型BMW M2の「トラックパッケージ」がニュルブルクリンクで再び目撃され、前回まで不明だった装備のディテールがいくつも確認できました。
今回の続報では、フロントの大型スプリッター、アルミ製ステーで支える巨大リアウイング、カーボン仕上げのエキゾーストフィニッシャー、そして公道走行可能なサーキット向けタイヤ「ピレリP Zero Trofeo RS」などが実車で捉えられています。
さらに、カーボンシェルのフロントシートや、完全なリアシート撤去ではない軽量化処理、赤いブレーキキャリパーとドリルドローター、M2 CS由来と見られる鍛造ホイールなど、走行性能を支える具体的な手当てが見えてきました。
発売に向けた最終段階の熟成が進んでいる印象です。
- ニュルで判明の新装備:大型スプリッターや巨大リアウイング、カーボン仕上げ排気で空力と質感を強化。
- 公道対応のトラック志向:P Zero Trofeo RS採用で公道適法かつサーキット即戦力の足まわりを実現。
- 駆動系の選択肢拡大:ZF製6速MTと8速ATに対応。楽しさと速さの両立という選択が可能。
外観の進化:巨大リアウイングとスプリッターで走行安定性を強化
空力パーツの狙い:スプリッター+大型ウイングの組み合わせ
新たに確認されたフロントの大型スプリッターは、高速域で前輪荷重を安定させる狙いがあると考えられます。
リアはトランクリッドに直付けされた巨大ウイングをアルミ製の二本ステーで支持。
これにより後輪側の路面追従性を高め、ブレーキング時の姿勢安定にも寄与する可能性があります。
いずれも量産を想定した造形と固定方法で、単なるテスト用の仮設パーツではなく、市販キットとしての完成度を感じさせます。
吸排気フィニッシュと仕上げ:カーボンエキゾースト+アルミステー
エキゾーストのテールエンドはカーボン仕上げのフィニッシャーが観察され、サプライヤーとしてアクラポビッチ関与の可能性が指摘されています(写真からはフルシステム化までは断定できません)。
リアウイングのアルミステーは強度と軽量性のバランスに優れ、見た目のレーシーさだけでなく、実機能に直結する選択です。
サーキット適性の高い公道タイヤ:ピレリ P Zero Trofeo RS
装着タイヤはストリートリーガルながらサーキット性能を最優先した「P Zero Trofeo RS」。
極端な左右非対称トレッドと低い扁平比が特徴で、ドライ路面でのターンインと制動の応答性を高めます。
同タイヤはポルシェ911 GT3 RS(992型)やタイカン・ターボGT、ルシードAirサファイア、フォード・マスタング・ダークホースなど、高性能モデルでも採用実績があります。
M2においてもラップタイム短縮に効く“量産車のまま持ち込める武器”となるはずです。
内装の軽量化:カーボンシートとリアシート処理の工夫
カーボンシェルフロントシートの採用
今回のプロトタイプでは、標準仕様のシートとは異なり、カーボンシェル構造のフロントシートが導入されています。
これにより剛性を保ちながらも大幅な軽量化が実現し、ハードな横Gがかかるサーキット走行でもドライバーをしっかり支える性能が期待できます。
通常のスポーツシートに比べてホールド性が高く、Mモデルの走りをさらに引き上げる要素といえるでしょう。
リアシートの扱いと軽量化方針
後席は完全な撤去ではなく、最低限の構造を残した軽量化が確認されました。
これにより2シーター化による日常ユースの制限を避けつつ、重量増を最小限に抑える設計が採用されています。
これは「公道走行可能なトラック仕様」というコンセプトに合致しており、実用性とパフォーマンスのバランスを重視したBMWらしいアプローチです。
シートベルトは3点式を継続
テスト車両では、モータースポーツで一般的な4点式や6点式ハーネスではなく、標準の3点式シートベルトが装着されていました。
これは量産市販化を前提とした段階であることを示し、法規適合性を確保しながらも、将来的にはオプション設定で追加の安全装備が用意される可能性もあります。
安全性と市販化の両立が図られていることが今回の注目ポイントです。
足回りの強化:M2 CS由来の鍛造ホイールと赤キャリパーブレーキ
M2 CS由来とみられる鍛造ホイール
プロトタイプが装着していたホイールは、M2 CSで採用されていた鍛造アルミホイールと酷似しています。
鍛造ならではの高剛性と軽量性により、加減速や旋回時の応答性を向上させる狙いがあります。
鍛造化によるバネ下重量の削減は乗り心地の改善にもつながり、公道とサーキットの両立を目指すこのモデルに適した選択といえます。
ブレーキシステムの特徴
ブレーキには鮮やかな赤色のキャリパーが採用され、ローターは冷却効率を考慮したドリルド仕様。
市販モデルではMコンパウンドもしくはMカーボンセラミックの可能性があり、いずれにしてもサーキットでの高温環境下で安定した制動力を発揮することを意図していると考えられます。
制動力強化はタイヤ性能の引き出しにも直結し、パッケージ全体の完成度を高めています。
軽量化と冷却性能の両立
ドリルドローターは制動時の熱を効率的に逃がすことでフェードを防ぎ、安定したペダルフィールを実現します。
加えてホイールデザインも冷却性能を考慮した形状で、長時間のサーキット走行に耐える仕様です。
BMWは過去のMモデルでもこうした足回りの徹底した作り込みを行ってきており、今回も例外ではありません。
耐久性と実用性のバランスを取った足回りは、公道とサーキットの双方で安心して走れる基盤となります。
パワートレインの注目点:ZF製6速MTと8速ATの両対応
6速マニュアルと8速オートマチックの選択肢
BMW M2 G87 トラックパッケージは、ZF製の6速マニュアルトランスミッションと8速オートマチックの両方に対応することが確認されています。
愛好家にとってマニュアルは操作の楽しみを重視する一方で、ラップタイムを追求するサーキットユーザーにはオートマチックの方が有利とされています。
実際、8速ATは変速速度に優れ、トルク制御の緻密さから加速性能において優位性を発揮します。
マニュアル仕様におけるトルク制限
ZFの6速マニュアルは公称600Nmのトルク耐性がありますが、BMWは量産モデルでは550Nmに制限していることが知られています。
この制約はトランスミッションの寿命や信頼性を考慮した「安全マージン」であると同時に、メーカーが意図的にパフォーマンスを調整するいわゆる“サンドバギング”とも言われます。
実際のエンジンは公称値以上の出力を秘めているケースが多く、サーキットでの実走行性能は数値以上と予想されます。
エンジンの可能性と市販化への布石
トラックパッケージ専用にエンジン自体が大幅に変更される情報はありませんが、冷却系や補機類に最適化が加えられている可能性があります。
市販化される際には、標準M2比で高回転域のレスポンスや耐熱性に優れたセッティングとなることが期待されます。
パワートレイン面では“ドライバビリティと耐久性のバランス”をどう仕上げるかが焦点です。
まとめ:M2 トラックパッケージはM2 CSを超える存在になるか

今回ニュルブルクリンクで確認されたBMW M2 G87 トラックパッケージは、フロントスプリッターや巨大リアウイング、カーボンエキゾーストフィニッシャー、ピレリP Zero Trofeo RSタイヤなど、従来の市販M2にはなかった装備を多数搭載していました。
さらにカーボンシェルのフロントシートや軽量化を図ったリアシート、赤キャリパーとドリルドローター、M2 CS譲りの鍛造ホイールなど、走行性能を徹底的に磨き上げる姿勢が鮮明です。
特に注目されるのは「公道走行可能なサーキット仕様」というコンセプトです。
単なるワンメイクレース用ではなく、ナンバー取得可能な市販車として開発されている点がM2 CSとの差別化につながります。
ピレリのサーキット指向タイヤを標準で備えることは、ユーザーがそのままサーキットに持ち込める利便性を意味し、既存のMモデルよりも一歩踏み込んだ存在といえるでしょう。
発売時期は2026年前後と見込まれ、価格はM2 CSを超える設定になる可能性があります。
しかし、単に「高価な限定車」という枠を超え、Mモデルの将来像を示す象徴的なモデルとなることが期待されます。
M2 CSが「コンパクトスポーツの最終進化形」と評されたのに対し、M2 トラックパッケージは「次世代のMらしさ」を体現する一台になるでしょう。
Reference:autoevolution.com
2026年式BMW M2 公道仕様トラックパッケージ // スパイフォト
よくある質問(FAQ)
Q1. トラックパッケージの発売時期はいつ頃ですか?
正式発表前ですが、現地報道や表記から2026年前後の投入が見込まれます。開発車両はニュルブルクリンクで実走評価が続いており、市販仕様の最終調整段階にあると見られます。
Q2. 6速MTと8速AT、どちらがサーキットで速いですか?
一般にラップタイムを優先するなら8速ATが有利です。変速速度とトラクション制御の最適化により加速で優位に立ちます。一方で6速MTは操作の楽しさと一体感が魅力です。
Q3. 標準タイヤは何になりますか?公道走行は可能ですか?
スパイショットではピレリ P Zero Trofeo RSの装着が確認されています。公道走行可能なトラック志向タイヤで、サーキットでも高いグリップを発揮します。
Q4. ブレーキはカーボンセラミックですか?
現時点では赤キャリパーとドリルドローターが確認されるのみで、MコンパウンドかMカーボンセラミックかは未確定です。いずれもサーキットの高温域に配慮した仕様です。
Q5. 内装の変更点は?リアシートは撤去されますか?
カーボンシェルのフロントシートが確認されています。リアは完全撤去ではなく簡易軽量化に留められ、シートベルトは現状3点式のままです。公道適合との両立を意図した設計です。








コメント