長年にわたり、BMWのチューニングメーカーとして独自の地位を築いてきたアルピナ。
しかし、2025年をもって独自の車両開発・製造を終了し、BMWグループに完全統合されることが決定している。
そんなアルピナの「最後の進化形」として登場したのが、B3 GT と B4 GT だ。
この2台は、BMW M3 / M4と同じS58型エンジンを搭載しながらも、アルピナらしい快適性と高性能を両立したモデルとなっている。
本記事では、B3 GT / B4 GTのスペックや特徴を詳しく解説し、BMW Mモデルとの違いを比較しながら、その魅力を深掘りしていく。
B3 GT / B4 GTの概要と進化ポイント
アルピナ最後の独自モデルとしての位置づけ
2025年をもって独自の車両開発・製造を終了するアルピナにとって、B3 GT / B4 GTは現体制で生産される最後の高性能モデルとなる。
BMW M3 / M4をベースにしながらも、アルピナ独自のチューニングを施し、快適性とパフォーマンスを両立した仕上がりとなっている。
基本スペック
B3 GTとB4 GTは、BMW M3 / M4と同じS58型 3.0L 直列6気筒ツインターボエンジンを搭載し、さらなるパワーアップが施されている。
- 最高出力:529PS(389kW)/ 6250~6500rpm
- 最大トルク:730Nm(74.4kg・m)/ 2500~4500rpm
- 0-100km/h加速:B3 GT 3.4秒 / B4 GT 3.5秒
- 最高速度:B3 GT 308km/h / B4 GT 305km/h
トランスミッションは、BMW Mモデルと同様のZF製8速AT(8HP76)を採用し、アルピナ独自のスムーズなシフトプログラムが組み込まれている。
B3 / B4からの主な変更点
B3 GT / B4 GTでは、従来のB3 / B4からさらなるチューニングが加えられ、パフォーマンスとハンドリングが向上している。
エンジン出力向上(495PS → 529PS)
- ターボブースト圧の最適化
- エンジンマッピングの改良
シャシー強化
- バルクヘッド補強(ドームバルクヘッドレインフォースメント) をB3 GTにも採用
- リアダンパー取り付けの改良 により、よりダイレクトな応答性を実現
- スタビライザー調整(B3 GT:リア細め / B4 GT:フロント細め)
「GT」専用デザイン
- フロントスポイラーに専用カナードを追加
- ボディやエンブレムに、専用色 「オロ・テクニコ」 を採用
- 専用デザインのホイール・デコライン を設定
これらの改良により、B3 GT / B4 GTはアルピナの集大成ともいえる一台に仕上がっている。
BMW Mとの違いを徹底比較

BMW MモデルとアルピナB3 GT / B4 GTは、どちらも高性能なスポーツセダン&クーペだが、そのキャラクターは大きく異なる。
ここでは、エンジンチューニング、トランスミッション、サスペンション、デザイン、価格といったポイントから違いを詳しく比較する。
エンジンチューニングの違い
B3 GT / B4 GTは、BMW M3 / M4と同じS58型 3.0L 直列6気筒ツインターボエンジンを搭載しているが、アルピナは独自のチューニングを施している。
モデル | 最高出力 | 最大トルク |
---|---|---|
BMW M3 / M4 | 510PS(375kW)/ 6250rpm | 650Nm(66.3kg・m)/ 2750-5500rpm |
アルピナ B3 GT / B4 GT | 529PS(389kW)/ 6250-6500rpm | 730Nm(74.4kg・m)/ 2500-4500rpm |
アルピナは扱いやすさを重視したチューニング
- 最大トルクがMモデルより80Nmも増加しており、低回転域から力強い加速を実現。
- ターボブースト圧とエンジンマッピングを最適化し、日常的な走行でも扱いやすいフィーリングに。
- 高回転まで回して楽しむM3/M4に対し、アルピナは低中速域でも力強さを発揮する設定になっている。
トランスミッションの違い
トランスミッションのセッティングも、BMW Mモデルとアルピナでは大きく異なる。
モデル | トランスミッション |
---|---|
BMW M3 / M4 | 8速AT(Mステップトロニック) or 6速MT |
アルピナ B3 GT / B4 GT | ZF製8速AT(8HP76) |
アルピナのZF製8速ATは、よりスムーズな変速を重視
- BMW M3 / M4のトランスミッションは、サーキットでのダイレクトなシフトチェンジを意識したチューニング。
- 一方、B3 GT / B4 GTは、AT特有の滑らかなシフトフィールを残しつつ、スポーティな加速を実現している。
- GT(グランドツーリング)らしい長距離クルーズ性能に最適化されている。
サスペンションの違い
BMW Mモデルとアルピナは、サスペンションのチューニングでも方向性が異なる。
モデル | サスペンション特性 |
---|---|
BMW M3 / M4 | 硬派なスポーツ仕様(サーキット向け) |
アルピナ B3 GT / B4 GT | 快適性と安定性を両立したGT仕様 |
M3 / M4は「硬派なスポーツセッティング」
- 高速域での安定性やコーナリング性能を重視し、硬めのサスペンション設定。
- 特に、トラック走行に最適なダンパー調整が施されている。
B3 GT / B4 GTは「快適性と走行安定性を両立」
- リアダンパーの改良やスタビライザーのセッティング変更により、快適な乗り心地を維持しつつ、高速域でも安定した走りを実現。
- 長距離移動でも疲れにくいチューニングが施されている。
エクステリアの違い
デザイン面でも、BMW MモデルとアルピナB3 GT / B4 GTは明確に違う。
モデル | デザインの特徴 |
---|---|
BMW M3 / M4 | 攻撃的なエアロ、スポーティなスタイル |
アルピナ B3 GT / B4 GT | クラシック&エレガントなGTデザイン |
BMW M3 / M4はアグレッシブなデザイン
- 大きなキドニーグリル、派手なエアロパーツが特徴。
- スポーティなイメージを強調し、サーキット走行を意識した外観。
アルピナ B3 GT / B4 GTはクラシック&エレガントなスタイル
- 専用のカナード付きフロントスポイラーで空力性能を向上。
- 「オロ・テクニコ」専用カラーのホイール&デコラインを採用し、上品な仕上がりに。
- Mモデルのような派手さはないが、高級感のあるGTらしいデザインになっている。
価格比較
最後に、価格面でも両者を比較してみよう。
モデル | 価格(日本市場) |
---|---|
BMW M3 / M4 | 約1400万円~ |
アルピナ B3 GT | 1650万円~ |
アルピナ B4 GT | 1710万円~ |
- BMW M3 / M4と比較すると、B3 GT / B4 GTは250万円以上高価になる。
- しかし、快適性・ラグジュアリー性・希少価値の高さを考慮すると、アルピナの価格設定にも納得できる。
- また、B3 GT / B4 GTはアルピナ最後のモデルとして、コレクターズアイテムとなる可能性が高い。
BMW M3 / M4とアルピナB3 GT / B4 GTは、エンジンやトランスミッションこそ共通しているが、走行性能・快適性・デザイン・価格の面で大きく異なるキャラクターを持つ。
- BMW M3 / M4は、サーキット志向の攻撃的なスポーツカー。
- アルピナ B3 GT / B4 GTは、GT(グランドツーリング)志向の快適な高性能モデル。
アルピナの独自開発が終焉を迎える今、この「最後のアルピナ」はBMW Mモデルとは一線を画す特別な存在となるだろう。
B3 GT / B4 GTの走りの魅力
アルピナマジックの特性
アルピナB3 GT / B4 GTは、快適性と高性能を両立したGTカーだ。
BMW M3 / M4のようなサーキット向けの走りではなく、上質で安定感のある乗り味が特徴となっている。
- 高速安定性と乗り心地の両立
高速域での直進安定性が高く、300km/h近い巡航速度にも対応。サスペンションは適度に硬めながら、長距離移動でも疲れにくい設定となっている。 - バネ下の軽さ → しなやかで接地感の高い走り
軽量ホイールとサスペンションの調整により、タイヤがしっかりと路面を捉える。段差を超えても跳ねず、スムーズな走りを実現。 - ワインディングでも安定感抜群
コーナリング時の安定感が高く、適度なロールを残しつつ接地感を確保。山道でも落ち着いた走りが可能だ。 - ステアリングの反応 → Mよりマイルドだが正確
Mモデルよりクイックではないが、正確で自然なフィーリング。軽く手を添えるだけで安定し、ワインディングでは狙ったラインをトレースできる。
アルピナの電子制御チューン
B3 GT / B4 GTは、電子制御の最適化により、快適なGT性能を実現している。
- 10人のエンジニアが1年かけて開発
エンジン、トランスミッション、サスペンションの制御を細かく調整し、GTカーらしい乗り味を完成させた。 - Mモデルとは違う「快適なGTチューン」
Mモデルがサーキット志向なのに対し、B3 GT / B4 GTは公道での扱いやすさを重視。低速からスムーズな加速が可能で、高速でも安定感を発揮する。
アルピナB3 GT / B4 GTは、スポーツ性能と快適性を高次元で両立。
長距離移動でも疲れにくく、ワインディングや高速走行ではスポーティな走りを楽しめる。
この絶妙なバランスこそ、アルピナの「最後のGTカー」の魅力だ。
アルピナの未来とB3 GT / B4 GTの価値

2026年以降、アルピナはBMWの一部に
2026年からアルピナはBMWグループの一部となり、独立したブランドとしての開発・製造は終了する。
これにより、BMWのモデルをベースに独自のチューニングを施す従来のスタイルはなくなり、「バッジエンジニアリング化」が進む可能性がある。
今後のアルピナ車が、現在のような「BMWとは異なる個性」を持ち続けるかどうかは不透明だ。
アルピナファンにとっての最後のチャンス
B3 GT / B4 GTは、アルピナが独立したメーカーとして生み出す最後のモデルであり、BMW Mモデルとは異なる独自の魅力が詰まっている。
- 専用チューニングによる快適で上質な乗り味
- GTカーとしての性能を突き詰めた完成度
- クラシックなデザインと希少価値の高さ
これらの特徴により、コレクターズアイテムとしての価値も高まることが予想される。
今後、アルピナブランドの方向性が変わることを考えると、B3 GT / B4 GTは「本物のアルピナ」を味わえる最後のモデルになるかもしれない。
まとめ:アルピナB3 GT / B4 GT「究極のGTカー」
アルピナB3 GT / B4 GTは、BMW Mモデルとは異なる「究極のGTカー」として、快適性とスポーツ性能を両立した仕上がりとなっている。
2026年以降、アルピナの未来は不透明であり、独自開発モデルは事実上終了するため、B3 GT / B4 GTはアルピナらしさを存分に味わえる最後のモデルとなる可能性が高い。
希少価値の高い特別な一台を求めるなら、今が手に入れるラストチャンスかもしれない。
Reference:autocar.jp
コメント