新型BMW iX3(NA5)が中国・上海の市街地でテスト走行している様子が目撃されました。
次世代EV基盤「Neue Klasse」を採用し、航続距離は最大900km級、800Vの急速充電にも対応見込みです。
さらに、生産は欧州と中国の二拠点で行われる計画です。
本記事では最新情報を整理し、中国でのテストの意図と、ドイツと中国で生産する戦略的な理由をわかりやすく解説します。
- 900km級×800V充電:航続900km級と800V急速充電で長距離と時短充電を両立。
- 二拠点生産の狙い:ドイツ×中国でコスト・関税・調達を最適化し供給安定化。
- Neue Klasseの核心:新世代基盤と先進ADASで走り・安全・UIの総合性能を強化。
新型BMW iX3 NA5とは?

新型iX3 NA5は、BMWの次世代電動化戦略を象徴するミッドサイズSUVです。
従来型のiX3(G08)は中国で販売が伸び悩み、2025年1〜7月累計は8,475台にとどまった一方、ガソリンのX3は39,571台を販売しました。
新型はこの状況の巻き返しを狙い、設計から大きく見直されています。
また、サイズは従来型より拡大しつつX5よりは小さいレンジに収まる見込みで、X3(全長4,734mm)とX5(全長4,935mm)の中間帯に位置づけられます。
市街地走行での運動性能と実用性の両立が狙いです。
中国でテスト走行する理由
中国市場で勝つための「現地最適」検証
目撃情報は、ドイツナンバーの試験車が上海のダウンタウンを走るという異例のシーンでした。
郊外のテストコースではなく実交通の厳しい環境で空力や乗り心地、回生ブレーキの制御を詰め、渋滞や頻繁な車線変更など中国特有の交通事情に合わせ込む狙いがあります。
さらに、充電設備の規格や分布、都市部での実効エネルギー効率も実地で検証できます。
BMWにとって中国は最大の市場であり、ここで通用する仕様を作り込むことがグローバルでも競争力につながります。
強力なローカル競合の存在
中国では新興勢のEV攻勢が加速しており、たとえばXiaomiの新型「YU7」は発表直後に1時間で289,000件のオーダーを集め、航続830km、最高出力最大508kW(681PS)とアピールが強力です。
価格帯も25.35万〜32.99万元と攻めており、コスト・性能・スピード感の三拍子で輸入ブランドを脅かしています。
BMWが市街地テストを重ねるのは、こうしたローカル競合の実力を肌で把握し、商品力と価格競争力の最適点を探るためでもあります。
新型iX3 NA5のスペックと特徴
航続距離と充電性能

新型iX3の最大の注目点は航続距離と充電性能です。
トップグレードの「iX3 50 xDrive」では、WLTP基準で約800km、CLTC基準では900km、EPA基準でも約640kmを実現するとされています。
この数値は既存のBMW EVを大きく上回り、テスラや中国新興EVと同等以上の実力です。
また、800Vアーキテクチャを採用し、最大400kWの高出力充電に対応します。
これにより、わずか10分間で約350km分の電力を補充でき、長距離ドライブにおける不安を大きく軽減します。
デザインとサイズ感
外観デザインも従来から刷新されます。
低いベルトラインとワイドに張り出したリアフェンダーはスポーティさと力強さを演出し、空力を意識したリトラクタブル式ドアハンドルや五本スポークのエアロホイールが採用されました。
リヤはスリムなテールライトとルーフスポイラーで軽快感を出しています。
ボディサイズは従来のiX3(全長4,734mm、全幅1,891mm)よりも拡大し、X5(全長4,935mm、全幅2,004mm)よりはコンパクトに収まる見込みです。
このバランスにより、都会での取り回しやすさと広い室内空間を両立します。
内装と先進技術

室内では「パノラマビジョン」と呼ばれる新しいインフォテインメントシステムが導入され、フロントウインドウ下部全体に情報を投影します。
速度やナビ情報が直感的に確認できるほか、従来型のHUDも備わり二重の情報提供が可能です。
また、AIを用いた最新ADASが搭載され、ドライバーがサイドミラーに視線を送るだけで車線変更を開始できる先進機能も採用予定です。
さらに、中国企業Momentaと共同開発した自動運転技術により、高速道路や市街地を含む「ポイントtoポイント」の支援走行が可能になると報じられています。
ドイツと中国で生産される理由
欧州市場を担うドイツ・ハンガリー工場
新型iX3はまずドイツ近郊のハンガリー・デブレツェン工場で量産が始まります。
この工場はNeue Klasse世代のEV専用工場として設計されており、欧州市場を中心に供給します。
EU圏内生産により輸送コストや関税を抑制し、現地の環境規制にも即応できる点が強みです。
BMWはすでにi3セダン NA0をドイツで生産する計画を明らかにしており、ドイツ本国と東欧を中核に欧州全体の供給網を最適化しています。
中国生産でシェア奪還を狙う
一方で中国でも現地生産が計画されています。
中国はBMWにとって最大市場であり、EVシェア拡大は最重要課題です。
従来型iX3は現地で販売不振に苦しんでおり、輸入コストや価格競争力不足が課題でした。
そのため新型は合弁工場での現地生産に切り替え、コスト削減と現地消費者の需要に即した商品供給を狙います。
特に中国では補助金や関税政策が国内メーカー優遇に傾いているため、現地生産化は事実上の必須条件となります。
二拠点生産の戦略的意義
ドイツと中国の二拠点体制は、欧州市場と中国市場それぞれに適した供給と価格設定を可能にします。
加えて、半導体やバッテリー供給網のリスク分散にもつながり、グローバル戦略としての安定性を高めます。
BMWはこの体制を通じて、欧州では高級EVブランドとしての地位を守りつつ、中国では急成長するNEV(新エネルギー車(EV・PHEV・FCEVの総称))市場で存在感を取り戻す狙いです。
競合との比較
テスラ モデルYとの比較

新型BMW iX3の直接的なライバルは、世界で最も売れているEVのひとつであるテスラ モデルYです。
モデルYはEPA基準で最大約530kmの航続距離を実現しており、価格も日本円換算で600万円前後から購入可能です。
対して新型iX3はEPAで640km、WLTPで800kmを想定しており、航続性能では一歩リードする可能性があります。
またBMWはインテリア品質や走行安定性に強みがあり、走りの質や高級感を求める層を取り込める点で差別化が可能です。
中国新興EVメーカーとの戦い
中国市場では、XiaomiやBYDなどローカルメーカーの存在感が急速に拡大しています。
特にXiaomiの新型YU7は発表直後に1時間で289,000台もの受注を獲得し、航続距離は830km、最大出力は508kW(681馬力)とBMWを凌駕する性能を誇ります。
価格帯も25万〜33万元(約350万〜460万円)と輸入高級EVの半分程度であり、圧倒的なコストパフォーマンスで人気を集めています。
この競合状況の中でBMWが生き残るには、ブランド価値を武器にしつつ、現地生産によるコスト削減とアフターサービス体制の強化が欠かせません。
単なる性能比較ではなく、「プレミアムEV」という付加価値をどれだけ訴求できるかが勝負の分かれ目となるでしょう。
まとめ:新型BMW iX3 NA5は成功できるか
新型BMW iX3 NA5は、BMWの次世代EV戦略を象徴するミッドサイズSUVです。
最大900kmに迫る航続距離、800Vの超急速充電、最新のパノラマディスプレイやAI活用のADASなど、技術面では世界トップクラスの水準に到達しています。
また、サイズやデザインの刷新により、都市での実用性と高級感を両立した一台になると期待されています。
一方で最大市場である中国では、XiaomiやBYDといった新興EVメーカーが圧倒的な販売力を発揮しており、競争は激しさを増しています。
そのため、ドイツと中国の二拠点生産体制は、コスト削減や現地対応力を高めるための必然的な選択といえます。
欧州では高級ブランドの地位を守り、中国では現地化戦略でシェアを奪還する。
この二正面作戦が成功すれば、iX3 NA5はBMWにとって電動化時代の柱となるでしょう。
Reference:carnewschina.com
よくある質問(FAQ)
Q1. 新型BMW iX3の「NA5型」とは何ですか?
NA5は次世代iX3を指す呼称です。従来型(G08)から全面刷新され、BMWの新世代EV基盤「Neue Klasse(ノイエクラッセ)」を採用するミッドサイズSUVとして位置づけられます。
Q2. 航続距離や充電性能はどの程度ですか?
航続は800km級(WLTP想定)と見られ、長距離移動を強く意識しています。充電は800Vアーキテクチャを採用予定で、高出力の急速充電に対応し、短時間で大きく走行可能距離を回復できるのが特徴です。
Q3. どこで生産されますか? 二拠点生産の狙いは?
欧州向けを中心にハンガリー(デブレツェン)で、さらに中国でも現地生産が見込まれます。関税や物流コストの抑制、需要変動への即応、部材調達の安定化などが二拠点生産の主な狙いです。
Q4. 内装や先進運転支援はどう進化しますか?
フロントウインドウ下部に情報を展開するパノラマ表示コンセプトや、高度な運転支援(ADAS)の採用が予想されます。視認性や操作性の向上とともに、都市部・長距離双方での運転負荷軽減が期待されます。
Q5. 発売時期や価格は決まっていますか?
正式な発売時期や価格は未公表です。段階的な地域投入が想定され、装備・仕様の続報に合わせて価格レンジも明らかになる見込みです。最新情報が公開され次第、内容を更新します。
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