2026年10月、BMWは7シリーズ(G70)をベースとする「BMW Concept 7 Protection」を発表しました。通常の高級セダンとほぼ変わらない外観ながら、拳銃による攻撃から乗員を守る防護車両です。BMWには約半世紀に及ぶ装甲車開発の歴史があり、政府機関や軍による調達実績もあります。それなのに、今回あえて従来より防護レベルを抑えたモデルを提案したのはなぜでしょうか。過去の車両と実際の採用例を振り返りながら、新たな顧客層を狙うBMWの事業戦略を整理します。
- ✅️BMW装甲車は1978年から開発、政府・軍に調達実績
- ✅️Concept 7 Protectionは拳銃弾対策に重点
- ✅️BMWは個人・企業向け市場を開拓、発売日と価格は未定
BMWの装甲車事業は1978年から|733i High Securityに始まる歴史
出典:press.bmwgroup.com/united-kingdom「733i High Security」より
BMWの防護車両事業が始まったのは1978年です。初代7シリーズ(E23)をベースに「733i High Security」を開発しました。完成車を外部の業者が改造するのではなく、BMWが車体構造や防護装備を一体で設計する方式を採用したことが特徴です。
その後も7シリーズの世代交代に合わせてHigh Securityを展開。1997年には5シリーズ、2000年には330i Securityへ対象を広げ、2004年には初の防護SUVとなるX5 Securityを投入しました。
現在も7シリーズ ProtectionやX5 Protection VR6が用意されています。BMWの装甲車は単発の特別仕様ではなく、セダンからSUVまで継続的に改良されてきた専門事業なのです。
BMWの装甲車はどこで採用されている?政府機関への調達実績
オーストラリアでは首相の公用車に採用
2014年、オーストラリア政府は防護仕様のBMW 760Liを9台導入しました。G20首脳会議で来訪する要人の輸送などに使われ、その後は7シリーズ High Securityが首相の公用車として運用されています。政府要人の移動に必要な防弾・防爆性能を備えた事例です。
米国務省と米陸軍にも調達契約
2026年には米国務省がBMW北米法人と、7シリーズやX5、X7の防護車両に関する契約を締結しました。契約上限は2億3,200万ドルですが、これは購入確定額ではありません。
さらに米陸軍も、ドイツ・ヴィースバーデン向けの重装甲セダン6台の調達を進め、約406万ドルの契約をBMW北米法人に発注しています。軍用戦闘車ではなく、人員の安全な移動に使う車両です。
BMW Concept 7 Protection(G70)の防弾性能と専用装備
Concept 7 Protectionは、M760e xDriveの技術をベースにしたプラグインハイブリッド車です。3.0L直列6気筒エンジンとモーターを組み合わせ、システム最高出力は450kW(612PS)、最大トルクは800Nmに達します。
防護性能は新しい「BayB」規格に対応し、9×19mm弾や.44マグナム弾など、代表的な拳銃弾への対策を重視しています。厚い防弾ガラスに加え、ドアやルーフ、後部隔壁に防弾鋼板と繊維強化複合材を配置。外観から防護車両だと分かりにくい設計です。
車外と窓を開けずに会話できるインターホンや、音と光で周囲に知らせる襲撃警報も備えます。重量増に合わせて足回りやブレーキを調整し、後席には折りたたみテーブルや保冷ボックスを用意。防護と7シリーズらしい快適性の両立を図っています。
7シリーズ ProtectionとX5 Protection VR6との防護性能の違い
出典:press.bmwgroup.com/united-kingdom「BMW X5 Protection VR6」より
従来の7シリーズ Protection(G70)は「VR9」に準拠し、さらに高い「VPAM 10」への対応も選択できます。X5 Protection VR6は「VR6」に準拠し、ライフル弾などを想定した防護車両です。
一方、Concept 7 Protectionが想定するのは主に拳銃による攻撃です。爆発物への防護は対象とせず、必要な場合は上位のProtectionモデルが担います。BayBとVR6、VR9は規格が異なるため、単純な数値比較はできません。
つまり今回のコンセプトは、最高性能を競う新型装甲車ではありません。既存の高防護モデルとは異なる危険度と利用場面に対応するための選択肢です。
BMWが低防護モデルを追加する理由|新たな顧客層と市場ニーズ
装甲車というと国家元首や外交官向けを想像しますが、BMWが今回想定しているのは個人、企業、組織を含む幅広い顧客です。移動中の襲撃や治安が不安定な地域での移動など、危険の種類に応じて必要な装備は変わります。
高い防護性能には車体の重量増や専用部品が伴います。すべての顧客がライフル弾や爆発物への対策を必要とするわけではありません。拳銃への対応に絞り、通常の7シリーズに近い外観と乗り心地を維持することが、今回の製品上の狙いです。
ただし、防護車両の需要台数やConcept 7 Protectionの販売価格は公表されていません。市場規模だけで事業の成功を判断できる段階ではなく、どの顧客層が実際に購入するかが重要になります。
Concept 7 Protectionの市場戦略|欧州展開と装甲車事業の今後
防護レベル別に顧客を広げる方針
BMWはConcept 7 Protectionを、既存の7シリーズ ProtectionやX5 Protection VR6の下に位置付けています。防護性能を一律に高めるのではなく、危険度に応じた製品を揃えることで、これまで上位モデルを必要としなかった顧客にも対応する方針です。
欧州展開と市販化の見通し
最初の対象として示されているのは欧州の一部市場。ただし、2026年10月時点ではコンセプト車であり、販売開始日、価格、日本導入の予定はいずれも発表されていません。
1978年からの開発実績と、政府機関への納入・調達という実績はBMWの強みです。しかし、今回のConcept 7 Protectionが企業や組織向けであることを考えると欧州よりも南米や中東アジアなどの治安が悪い地域にこそ需要があると考えます。先進国のビジネスマン等がそれらの国で拉致され身代金を要求する事件が多発しています。そのような地域のハイクラスのビジネスマンが今回のターゲットになるでしょう。
Reference:press.bmwgroup.com / bmw.com.sg
よくある質問(FAQ)
Q1. BMW Concept 7 Protection(G70)とはどのような車ですか?
2026年10月に発表された、BMW 7シリーズ(G70)をベースとする防護車両のコンセプトモデルです。M760e xDriveの技術を採用し、通常の7シリーズに近い外観や快適性を維持しながら、拳銃による攻撃から乗員を守ることを目的としています。
Q2. Concept 7 Protectionはどの程度の防弾性能を備えていますか?
BayB規格に対応し、9mm弾や.44マグナム弾などの拳銃弾への防護を重視しています。既存の7シリーズ Protectionが備えるVR9レベルの防護とは用途が異なり、ライフル弾や爆発物への対策を必要とする場合は上位モデルが選択肢となります。
Q3. BMWは以前から装甲車を製造しているのですか?
BMWは1978年の733i High Securityから防護車両の開発を続けています。その後、7シリーズに加えて3シリーズ、5シリーズ、X5にも展開しました。現在も7シリーズ ProtectionやX5 Protection VR6など、BMWが開発・製造する防護車両を提供しています。
Q4. BMWの装甲車は実際に政府や軍で使用されていますか?
オーストラリアでは防護仕様の7シリーズが首相の公用車として使用されてきました。また、米国務省による防護車両の調達契約や、米陸軍による重装甲セダンの発注実績もあります。軍による調達も、主に人員の安全な移動を目的としています。
Q5. Concept 7 Protectionの発売時期や価格は決まっていますか?
2026年10月時点ではコンセプトモデルであり、正式な発売日や販売価格、日本導入予定は発表されていません。BMWは欧州の一部市場を初期の対象として想定しています。従来の高防護モデルを必要としない個人や企業など、新たな顧客層への展開を目指しています。





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