ここ数年、日米ではアイドリングストップ(信号待ちなどでエンジンを自動停止し、発進で再始動する機能)を「最初から付けない」新車が少しずつ増えています。
一方で欧州では、同じ機能がまだ幅広く残っています。
ポイントは、機能そのものの優劣というより、各地域の規制の設計と、メーカーが燃費・CO₂を下げるための手段の選び方が違うことです。
この記事では、普及した理由から現在の減少理由、欧州で残る制度的背景までを整理します。
❗️記事3行まとめ
✓日米はクレジット終了とコスト最適化でアイドリングストップ車が減少
✓欧州はメーカー平均CO₂規制と罰金で数%の燃費差が経営に直結
✓効果は都市部の停止時間で伸び、高速中心では改善幅が小さい
アイドリングストップが普及した背景
燃費・排出ガスを「低コストで数%」改善できた
アイドリングストップが広がった最大の理由は、渋滞や信号待ちが多い市街地で、アイドリングによる燃料消費と排出ガスを減らせるからです。
停止中に燃料を使わないため、走行条件によっては燃費が数%改善します。
エンジンや車体を大きく変えなくても効果が出るため、メーカーにとっては導入しやすい省燃費策でした。
米国では「クレジット」により採用が後押しされた
米国では、メーカーが燃費・温室効果ガス規制への適合を示す際に、特定の省燃費装備を評価する仕組み(いわゆるオフサイクルのクレジット)が用意されてきました。
アイドリングストップは、その対象になりやすい代表例で、結果として新車への搭載が一気に一般化しました。
技術的な仕組みと実際の効果
仕組みは単純だが、周辺部品は強化されている
アイドリングストップ自体の動きはシンプルです。
車両が停止条件を満たすとエンジンを止め、ブレーキ解除やアクセル操作で再始動します。
ただし頻繁に再始動するため、スターターモーターやリングギア、バッテリー(AGM/EFBなど)は強化され、充電制御も専用のロジックになります。
アイドリング中でも電装品を動かす必要があるので、発電・蓄電のマネジメントが要です。
効果は走行環境依存で、都市部ほど効く
信号待ちが多いほど、停止時間も増えるため効果が出ます。
逆に高速道路中心の使い方では、停止時間が少ないので改善幅は小さくなります。
この「効く場面が限られる」点が、各地域の制度や市場事情と組み合わさると、採用の濃淡として表れます。
日米で減少が進む理由
米国はクレジット終了で「付ける理由」が薄くなった
米国では2026年2月に、アイドリングストップに結び付いていたオフサイクルのクレジットが終了する方針が示されました。
重要なのは、機能が禁止されたわけではなく、メーカーが「規制対応の得点」として計上しにくくなる点です。
得点がなくなると、部品コストと開発・適合の手間をかけてまで標準装備にする合理性が下がります。
結果として、新車での搭載は減りやすくなります。
日本は「ユーザー評価」とコスト最適化が効く
日本でも、停止→再始動の違和感やエアコン作動との相性、毎回OFFにしたくなる操作感などから、好みが分かれやすい装備です。
メーカーは限られたコスト枠の中で、先進安全装備や電動化要素へ優先投資しがちです。
アイドリングストップは、効く場面が限定されるうえ、周辺部品の強化が必要なため、車種やグレードによっては「省く」判断が出やすくなります。
欧州で残り続ける制度的理由
メーカー平均CO₂規制と罰金が、数%の差を重くする
欧州では、メーカーが販売する新車全体(フリート平均)のCO₂排出量に目標があり、未達だと「超過排出プレミアム(罰金)」が発生します。
目安として、目標を1g/km超過すると、登録台数1台あたり95ユーロが課される仕組みです。
販売台数が多いメーカーほど影響が大きく、数%の改善でも積み上げれば大きな差になります。
アイドリングストップは、都市部走行で効きやすい以上、欧州の規制設計と相性が良い装備として残りやすいのです。
Euro 7は主に大気汚染物質の規制で、CO₂は別枠で動く
欧州では排出ガス規制(Euro 7)が注目されますが、ここで中心となるのは窒素酸化物や粒子状物質などの大気汚染物質、そしてブレーキ粉じんやタイヤ摩耗、バッテリー耐久といった要素です。
CO₂は別の枠組み(メーカー平均CO₂規制)で管理されるため、燃費を数%でも下げる装備は、引き続き意味を持ちます。
今後の方向性
「停止機能の有無」より、電動化の度合いで位置づけが変わる
今後は、48Vマイルドハイブリッドやフルハイブリッド、そしてBEVの比率が上がるほど、停止・再始動はより自然になり、制御も統合されていきます。
逆に、純粋な内燃機関(ICE)でアイドリングストップだけを足す形は、コスト対効果の説明が難しくなります。
米国のようにクレジットがなくなる市場では、標準装備からオプション化、あるいは非搭載へ移行する車種が増える可能性が高いです。
まとめ:日米で減るアイドリングストップ車が欧州で残る理由
アイドリングストップは、低コストで燃費・排出を数%改善できるため普及しました。
日米では、米国のクレジット終了と、日本でのコスト最適化・ユーザー評価が重なり、搭載が減りやすい環境になっています。
一方で欧州は、メーカー平均CO₂規制と罰金により、数%の差が経営インパクトになり得ます。
この制度設計の違いが、同じ装備でも「減る地域」と「残る地域」を分けています。
Reference:motor1.com
追記
BMWのアイドリングストップを解除する方法
BMWなどの輸入車ではアイドリングストップ機能が依然として搭載されつづけると予想されます。
しかし、実用的な部分では有用性を感じることができず、また操作面や感情的な部分ではアイドリングストップは不要と考えるユーザーは多いと思います。
私のその1人ですので、BMWを購入する際には毎回アイドリングストップをコーディングを行うことで無効化しています。
なお、BMWのコーディングはディーラーでは施工できません。BMWなどを得意とする整備工場や専門ショップなどでの施工が必要です。
DIYが得意な人は、コーディングを行う機器も販売されています。ただし、トラブルになった場合は自己責任となりますのでご注意ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. アイドリングストップはなぜ日米で減っているのですか
米国では、燃費・排出ガス対策として評価されてきたアイドリングストップ関連のクレジットが2026年2月に終了する方針が示され、メーカー側が標準装備にする合理性が下がりました。日本でも、装備コストとユーザー評価のバランスから、車種やグレードによって非搭載の選択が増えています。
Q2. 欧州でアイドリングストップが残りやすい理由は何ですか
欧州はメーカー平均CO₂規制と罰金制度があり、燃費を数%でも下げる工夫が販売戦略と直結します。都市部走行で効きやすいアイドリングストップは、こうした制度設計と相性がよく、残りやすい条件があります。
Q3. アイドリングストップの燃費改善はどのくらい期待できますか
燃費改善は走行環境に依存します。信号待ちや渋滞が多い都市部では停止時間が増えるため効果が出やすく、高速道路中心では停止時間が少ない分、改善幅は小さくなります。
Q4. アイドリングストップは故障やバッテリー寿命に影響しますか
頻繁な再始動に対応するため、スターターやバッテリー(AGM/EFBなど)は強化設計が前提です。ただし短距離走行が多いなど充電条件が厳しい使い方では、バッテリー管理が重要になります。
Q5. 今後はアイドリングストップが完全になくなるのでしょうか
機能が禁止されたわけではなく、市場や規制、パワートレインの電動化の進み方で採用状況が変わります。48Vマイルドハイブリッドなど制御が統合される方向では、停止・再始動はより自然に組み込まれる一方、純ICEでの単独採用はコスト対効果の説明が難しくなります。





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