BMW E36世代の3シリーズには、実は「4ドアセダンのオープンモデル」が存在しました。
ドイツの老舗コーチビルダーBaur(バウアー)が手掛けた“トップカブリオレ(TC4)”は、4ドアの実用性とオープンエアの爽快感を同居させた希少な一台です。
なぜセダンでオープンなのか、どのような構造で剛性や安全性を確保したのか。
この記事では、その背景と仕組み、魅力を私の視点でわかりやすく解説します。
E36ファンはもちろん、希少BMWに関心のある方にも役立つ情報を丁寧にまとめました。
E36とBaur(バウアー)の関係
BaurがBMWと築いた長い協業の歴史
出典:pinterest.comより
バウアー(Baur)は、1920年代から続くドイツの老舗コーチビルダーで、長年にわたりBMWと協業してきた企業です。
とくにE30世代の「トップカブリオレ(TC)」では、BMW純正の安全基準を満たしながらオープンモデルを製作し、その品質の高さからメーカー公認の特装車として扱われていました。
溶接補強や安全ロールバーの設計もBMW本体と連携して行われ、いわば“公式チューナー”のような存在だったのです。
E36世代で誕生した4ドア・トップカブリオレ
E36 3シリーズの時代に入り、Baurは再び新しい挑戦を行いました。
それが4ドアの「トップカブリオレ(TC4)」です。
一般的な2ドアカブリオレとは異なり、セダンをベースにBピラーとロールバーを残した独自構造を採用。
ねじり剛性を確保しながら、4人乗りとしての実用性も保ち、開放感と利便性を両立させました。
E36の直線的で端正なボディラインに、バウアーの手仕事が加わることで、実用車でありながら特別感のある存在に仕上がっています。
“限定生産”に込められたクラフトマンシップ
当時のヨーロッパでは安全規制の強化が進み、オープン化は難易度の高い改造でした。
バウアーはそれでもBMWの品質基準を守るため、量産工場ではなく自社の工房で少量生産を行いました。
この“限定的な工房生産”こそが、バウアーらしいクラフトマンシップの象徴です。
結果としてE36バウアー・トップカブリオレは生産台数こそ少ないものの、BMWとBaurの技術的協業が生み出した希少なモデルとして、今なお高く評価されています。
4ドア・オープンという独創的発想
なぜBaurはセダンをオープン化したのか
バウアー・トップカブリオレ(TC4)が特異なのは、あえて4ドアセダンをベースにしたことです。
当時、BMWはすでにE36カブリオレを2ドアとして販売しており、オープンモデルとしては十分にラインナップが整っていました。
にもかかわらずバウアーが「4ドアのオープン」に挑戦した背景には、日常使いと開放感を両立させたいという発想があったのです。
家族を乗せたまま屋根を開ける――そんな使い方を提案した数少ないBMWでした。
ヨーロッパ市場が求めた“セダン+オープン”の融合
当時の欧州では、スポーティな走りと実用性を両立する車への需要が高まっていました。
バウアーはその流れを受けて、通勤にも使えるオープンカーという新しい価値を提示します。
フルオープンではなく後席の居住性や荷室を保った設計は、まさに「大人のためのオープンカー」でした。
E36の堅牢なプラットフォームを活かし、趣味性と機能性を融合させた点こそ、Baur TC4が今なお注目される理由の一つです。
バウアー・トップカブリオレ(TC4)なら一家に車は1台
私も以前4ドアオープンカーという車が無いか調べたことがあります。
私は現在BMW X4 G02(4ドア)とBMW Z4 G29(オープン)の2台+軽自動車を所有しています。
軽自動車は嫁さんの車なので良いのですが、私はどうしてもオープンカーに乗りたいが、4ドアの車も公私ともに必要なため、車を私個人で2台所有しています。
もし現在もバウアー・トップカブリオレ(TC4)がBMW 3シリーズ G20に設定されていれば、かなり購入の可能性が高くなったと思います。
4シリーズカブリオレ G23なら420iの設定があるので手頃なのですが、やはり4シーターでも2ドアだと利便性が悪くなるので、断念した経緯もあります。
4ドアオープンカーは現在も一定のニーズはあると思います。
Baur TopCabriolet(TC4)の構造と仕組み
Bピラーを残した安全設計
Baur TC4の最大の特徴は、Bピラーとロールバーを残した独自のオープン構造にあります。
一般的なカブリオレは屋根全体を取り払うためボディ剛性が低下しますが、TC4ではBピラーをフレームの一部として残すことで高いねじり剛性を確保しています。
この構造により、安全性を犠牲にせずに開放感を得るという、バウアーならではの設計思想が実現されました。
取り外し式ルーフとリアセクションの工夫
ルーフは二分割構造で、前半部分は手動で取り外し、後部は折りたたみ式のソフトトップがトランク後方に格納されます。
開閉に電動機構を使わないことで軽量化と信頼性を確保し、長期使用にも耐えうる設計でした。
さらに、トランク容量の減少を最小限に抑え、実用性を維持した点も特徴です。
この構造は後のランドーレット型(後部屋根のみ開閉する)デザインにも通じるものであり、セダンの骨格を活かしたバウアーらしい工夫といえるでしょう。
生産台数と希少性
世界でわずか311台前後という希少存在
Baur TopCabriolet(TC4)は、E36 3シリーズの中でも特に希少なモデルとして知られています。
正式な記録は残されていませんが、総生産台数はおよそ311台前後と推定されており、同世代のBMWの中では極めて少数です。
通常の生産ラインではなく、バウアー社の工房で職人が手作業で改造を施していたため、一台ごとに細部の仕上げが異なるのも特徴です。
この少なさゆえに中古市場で見かけることはほとんどなく、状態の良い個体はコレクターズアイテムとして扱われています。
E36のなかでもバウアー仕様は特別な存在であり、価格以上に「手に入らない希少車」として評価されています。
希少であることが、そのまま価値そのものになっているモデルです。
Baur TC4の走行感と所有価値
E36の素性を活かした自然なドライビングフィール
私はE36 3シリーズを所有していたため操縦特性をよく知っていますが、Baur TC4もその基本的な走りの質感をしっかりと受け継いでいます。
Bピラーを残す構造のおかげで剛性感が高く、通常のカブリオレに比べてボディのねじれを感じにくいのが特徴です。
屋根を開けても安定感があり、E36らしい直進性やコーナリングのバランスが保たれています。
オープン特有の開放感とクラシックな味わい
走行中に感じる風の流れは穏やかで、完全なフルオープンでは得られない“安心感のある開放感”があります。
Baur TC4はその独自のスタイルから、現代のオープンカーとは異なるクラシックな魅力を感じさせてくれます。
エンジン音や風の音が直接届く一方で、E36の直列6気筒エンジンは滑らかで快適です。
所有する喜びという点でも、Baur TC4は特別です。
量産車にはないストーリーと希少性があり、所有者の満足度は非常に高いと感じます。
走らせても楽しく、眺めても美しい――そんな「使えるクラシック」としての価値が、このモデルにはあるのです。
まとめ:E36バウアー・トップカブリオレが残した価値
Baur TopCabriolet(TC4)は、単なるE36の派生モデルではなく、BMWとBaurが長年築いてきた協業の集大成だと私は思います。
4ドアでありながらオープンエアの楽しさを味わえるという発想は、他のどのメーカーにも見られない独創的なものでした。
今の時代に同じコンセプトで新車が出る可能性はほぼありません。
だからこそ、Baur TC4はBMWの歴史の中でも“異端にして名作”として輝きを放ち続けています。
クラシックカー市場では、希少性とオリジナリティが重視される今、このモデルの価値はさらに高まっていくはずです。
E36世代を象徴する一台として、これからも語り継がれる存在になるでしょう。
Reference:drive2.ru
よくある質問(FAQ)
Q1. バウアー・トップカブリオレ(Baur TC4)とは何ですか?
BMW E36 3シリーズのセダンをベースに、コーチビルダーのBaurが手掛けた4ドアのセミオープンモデルです。Bピラーとロールバーを残し、実用性と開放感を両立した希少車です。
Q2. 生産台数はどのくらいですか?
正確な公式記録は限られますが、総生産は約311台前後といわれます。工房生産に近い少量製作のため流通は極めて少なく、コレクターズアイテムとして扱われています。
Q3. 剛性や安全面はどう確保されていますか?
Bピラーと固定式ロールバーを残す構造により、ねじり剛性を確保しています。完全なフルオープンではなく、いわば“ランドーレット的”発想で開放感と安全性のバランスを取っています。
Q4. 維持や整備で気をつける点はありますか?
基本メカはE36共通で整備しやすい一方、ルーフ機構やウェザーストリップなど専用部位は入手性が課題です。状態の良い個体を選び、専門知識のある工場と連携するのがおすすめです。
Q5. 中古で購入する際のチェックポイントは?
ルーフの開閉状態・幌生地・シール類の劣化、雨漏り痕、補強部の変形や錆、内装のきしみを重点確認します。履歴(製作記録・メンテ記録)と実車試乗で風の巻き込みや異音も確認しましょう。









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